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悪習は断ち切るべき?
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「あの人たちはね、暇なのよ」
いつの間に来たのかテーブルの上の茶菓子に手を伸ばしつつ、ニールネルは呆れたような呟きを漏らす。
「興味があるのは美容とお父様と装飾品のことだけ。だからお父様が訪れなければ退屈なのよ。そんなだから暇を持て余して龍之介をいじめるんだわ」
「ニル」
「行儀が悪いぞ」
「いいじゃない、お父様のお部屋じゃないと、ろくに御飯も食べられないのよ?」
「毒味係がいるだろう」
「死んだわ。とても可哀想だった」
可愛い子だったのに、とニールネルはクッキーを齧りながら残念そうに呟く。
「お父様は愛されてるわね」
「嫌味か」
「事実だもの」
「なあ、純粋に疑問なんだけど…」
自分の産んだ子供でも、成人したら夫を殺すかもしれないから成人するまでに殺すなんて、凄い矛盾した行動じゃない?と龍之介は訴える。
「だったら初めから産まなきゃいいじゃんか」
「子作りは王族の義務だからな。拒否は出来んぞ」
「それに王が不慮の事故で亡くなったりなんかしたら、後継がいないと困るでしょう?だから常に子供は2、3人いないといけないのよ」
「じゃあ、なんでニルに毒なんて…」
「今子供は6人いるし、私が現状いちばん年上だもの。まあ標的になりやすいのよね」
「子供より夫が大事なのかよ」
「そうじゃない妃もいたと思うわ、過去には。けれど、今後宮にいる女たちは全員お父様にぞっこんだもの。いつかお父様を殺すかもしれない子を育てるなんて、きっと恐ろしくてたまらないのよ」
「じゃ、じゃあ、王位を継がないって宣言すれば、命を狙われることもないんじゃ…」
「それはダメよ。私がそれを言っちゃったらロジーが標的になってしまうもの」
「ロジアンは次代の王になる気満々だからな」
「そうよ、お父様を殺して龍之介をお嫁さんにするんですって?聞いたわよ、ロマンチックよねえ」
「ロマンチックの意味履き違えてねえ…?」
正気か?と思う。だが重要なのはそこではない。
「王の交代って、どうしても殺さないと駄目なのか?闘うにしても、命まで取らなくても…」
「そういう仕来りだからな」
「や、破ろうぜ!そんな悪習!今はスピネルが王様なんだし、なんとか出来るんじゃ…」
「なあに?龍之介、心配してくれてるの?」
「当たり前だろ!?ニルのこともロジアンのことも、双子たちのことだって同じくらい心配だっつーの!!」
「じゃあこのままずっとこの国にいてよ。それで、あの役に立たないお母様たちを追い出しましょう?」
「えっ」
なんか今とんでもないことを言われた気がする。
思わず反射的にスピネルの方を見ると、なんだかニヤリと微笑まれてしまった。なに、その顔。
いつの間に来たのかテーブルの上の茶菓子に手を伸ばしつつ、ニールネルは呆れたような呟きを漏らす。
「興味があるのは美容とお父様と装飾品のことだけ。だからお父様が訪れなければ退屈なのよ。そんなだから暇を持て余して龍之介をいじめるんだわ」
「ニル」
「行儀が悪いぞ」
「いいじゃない、お父様のお部屋じゃないと、ろくに御飯も食べられないのよ?」
「毒味係がいるだろう」
「死んだわ。とても可哀想だった」
可愛い子だったのに、とニールネルはクッキーを齧りながら残念そうに呟く。
「お父様は愛されてるわね」
「嫌味か」
「事実だもの」
「なあ、純粋に疑問なんだけど…」
自分の産んだ子供でも、成人したら夫を殺すかもしれないから成人するまでに殺すなんて、凄い矛盾した行動じゃない?と龍之介は訴える。
「だったら初めから産まなきゃいいじゃんか」
「子作りは王族の義務だからな。拒否は出来んぞ」
「それに王が不慮の事故で亡くなったりなんかしたら、後継がいないと困るでしょう?だから常に子供は2、3人いないといけないのよ」
「じゃあ、なんでニルに毒なんて…」
「今子供は6人いるし、私が現状いちばん年上だもの。まあ標的になりやすいのよね」
「子供より夫が大事なのかよ」
「そうじゃない妃もいたと思うわ、過去には。けれど、今後宮にいる女たちは全員お父様にぞっこんだもの。いつかお父様を殺すかもしれない子を育てるなんて、きっと恐ろしくてたまらないのよ」
「じゃ、じゃあ、王位を継がないって宣言すれば、命を狙われることもないんじゃ…」
「それはダメよ。私がそれを言っちゃったらロジーが標的になってしまうもの」
「ロジアンは次代の王になる気満々だからな」
「そうよ、お父様を殺して龍之介をお嫁さんにするんですって?聞いたわよ、ロマンチックよねえ」
「ロマンチックの意味履き違えてねえ…?」
正気か?と思う。だが重要なのはそこではない。
「王の交代って、どうしても殺さないと駄目なのか?闘うにしても、命まで取らなくても…」
「そういう仕来りだからな」
「や、破ろうぜ!そんな悪習!今はスピネルが王様なんだし、なんとか出来るんじゃ…」
「なあに?龍之介、心配してくれてるの?」
「当たり前だろ!?ニルのこともロジアンのことも、双子たちのことだって同じくらい心配だっつーの!!」
「じゃあこのままずっとこの国にいてよ。それで、あの役に立たないお母様たちを追い出しましょう?」
「えっ」
なんか今とんでもないことを言われた気がする。
思わず反射的にスピネルの方を見ると、なんだかニヤリと微笑まれてしまった。なに、その顔。
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