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愛してるから
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「いまいちよくわからないんだけど……子供を狙うのは何でだ?全員ちゃんと育てて全員が認められれば、それぞれの王妃たちだって嬉しいだろ?不老の力だって手に入るんだし」
「そこは難しいところなのですが……そもそも子供を成人まで育てるのは国の為にはなりますが、王の為にはならないのです」
「……殺される可能性があるから?」
「そうですね。成人し王の資格を得た子供たちは、その瞬間から陛下の命を狙う刺客にもなり得ます。中には純粋に陛下を支える意志を見せる子らもいますが、そういう者ばかりではないのが現実ですし、そうやって常に強者が王として君臨するのが獣人国の慣わしでもあります」
「…………じゃ、子供を殺すのは不老の力がどうこうって理由より、むしろ…」
「陛下を愛しているが故に子供を殺す、そういう王妃様や側近、現王権を継続させたい勢力による拉致監禁が絶えないのが現実ですね。けれど王は世継ぎを残すことも義務のうちですので、子作りを止めることも出来ない。陛下はそれでも子供を守る為に尽力しておりますが、陛下が賢王であればあるほど子供の存在を忌む者が出てきてしまう」
これが今のこの国の現状ですねと、狼くんは言った。
「スピネル、良い王様なんだな」
「そうですね、自分も今の治世が好きです」
「……その下克上システム、撤廃できないのかなぁ…」
そうしたら、全部解決しそうな話なのに、と龍之介は思う。まあそんな簡単なものではないのだろうけれど、聞いているとなんだかやり切れない気分になる話であった。
(スピネルだって、子供が死ぬのは嫌なはずだし)
でなければあんなに可愛がらないだろう。スピネルは充分子供に愛情を持っているように見える。それなのに、自分のせいで子供が殺されてしまうなんて、あんまりだ。
(……なにか、出来ないかな…)
あの可愛らしい双子たちや、ニールネルの顔が脳裏を過ぎる。自分は所詮仮初の王妃だけれど、出来ることがあるなら何でもしたい。一度でも関わり合った人たちが死んだり殺されたりするのは、やはりどうしても耐えられない。
(なんて、人のこと心配してる場合かよって、感じだけど…)
狼くんが優しく頭を撫でるものだから、次第にうとうとと船を漕ぎはじめる。もう少し起きていたいのに、狼くんの体温と心地よい心音が龍之介の意識を徐々に奪っていく。
(レイノルドやダームウェルは、大丈夫なのかな…)
その時、不意に、不安に襲われた。
それは今思えば、虫の知らせという奴だったのかもしれない。
「そこは難しいところなのですが……そもそも子供を成人まで育てるのは国の為にはなりますが、王の為にはならないのです」
「……殺される可能性があるから?」
「そうですね。成人し王の資格を得た子供たちは、その瞬間から陛下の命を狙う刺客にもなり得ます。中には純粋に陛下を支える意志を見せる子らもいますが、そういう者ばかりではないのが現実ですし、そうやって常に強者が王として君臨するのが獣人国の慣わしでもあります」
「…………じゃ、子供を殺すのは不老の力がどうこうって理由より、むしろ…」
「陛下を愛しているが故に子供を殺す、そういう王妃様や側近、現王権を継続させたい勢力による拉致監禁が絶えないのが現実ですね。けれど王は世継ぎを残すことも義務のうちですので、子作りを止めることも出来ない。陛下はそれでも子供を守る為に尽力しておりますが、陛下が賢王であればあるほど子供の存在を忌む者が出てきてしまう」
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そうしたら、全部解決しそうな話なのに、と龍之介は思う。まあそんな簡単なものではないのだろうけれど、聞いているとなんだかやり切れない気分になる話であった。
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狼くんが優しく頭を撫でるものだから、次第にうとうとと船を漕ぎはじめる。もう少し起きていたいのに、狼くんの体温と心地よい心音が龍之介の意識を徐々に奪っていく。
(レイノルドやダームウェルは、大丈夫なのかな…)
その時、不意に、不安に襲われた。
それは今思えば、虫の知らせという奴だったのかもしれない。
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