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「え、マジで何もしてねえの?」
「う…まぁ、実は…」
なんとなく流れで二回戦目を終え、再び事後の気怠い空気の中。話題は自然と護衛騎士となった狼くんについてとなっていた。
「マジで鬼畜」
「いや、だってさぁ」
「生殺しもいいとこだな。折角努力して変化も身につけたんだ。国にいる間に抱かせてやってもバチは当たらんだろ」
「それが仮にも夫の言う台詞かよ…」
「言っただろ、護衛騎士とヤるのは浮気に入らない。むしろヤラせないことの方が侮辱にあたるんだぜ?」
「な、なんでそうなるん??」
「つべこべ言わずに抱かせてやれ。ちょうど明日から俺は留守にする。その間エドの奴にしっかり満足させてもらうんだな」
「いや、でも、さ…」
なんか恥ずかしくって…と龍之介は頬を赤らめる。それを見て、スピネルが激しく顔を歪ませた。
「お前…その顔レイノルドの前でするなよ。血を見るぞ」
「え?」
「そういや人間は好きな相手には中々体を許さないのが美徳なんだっけか?面倒臭い生き物だな…」
「いや、いやいや、別にそういうわけじゃ…」
「さっきの顔で、お前がエドの奴に少なからず好意があるのはわかった。俺個人としては護衛騎士とイチャつくくらい目を瞑ってやってもいいが、レイノルドは違うだろう」
「……………」
「その好意が、どの程度の好きなのか、ちゃんと見極めとくんだな」
スピネルはそう言うと、今度こそ目を閉じた。もう眠りにつくつもりなのだろう。
逞しい腕を枕に、龍之介も目を閉じる。が、なかなか寝つくことは出来なかった。スピネルに言われたことが頭の中をぐるぐる回って、考えれば考えるほど眠れなくなってしまったのだ。
(生殺し……かぁ)
確かに、そうかもしれないと龍之介は思う。狼くんがずっと、物言いたげに自分を見ていることには気付いていたし、その視線の中に、うっすら期待めいたものが混じっていたことにも気が付いていた。
(けど、さ…)
だからと言って自分から誘うのはハードルが高い、と龍之介は思う。ぶっちゃけ無闇矢鱈に触ってくる輩がいないせいか、獣人国に来てからというものかなり心穏やかに過ごせていた。狼くんともそれはそれは良い距離感で、仲良く過ごしている。そこに性的な接触は一切なく、代わりにあるのは思春期にあったような気もするふわふわっとした淡い恋心であった。
つまり、プラトニックな疑似恋愛を楽しんでいたわけである。
(でも現実俺はハタチ越えてる草臥れた社畜リーマンだったわけで…烏滸がましいよな、キラキラした十代と青春取り戻そうなんてさあ…)
十代なんて、ヤリたい盛りである。それなのにオッサンのノスタルジーに付き合わせることのこの罪深さよ。
(あーそっか、わかったぞ)
なんで中々狼くんにヤラせなかったのか。
一度ヤッてしまったら、あの初々しさがなくなってしまうのではないかと思ったからだ…
(体をゆるしたら、もうそればっかの関係になっちまうのが嫌だったんだな、俺は…)
なかなか彼氏にセックスさせない女子の気持ちがなんとなくわかってしまった。今自分の中には、処女の女子中学生がいるのだろう。なんとも気持ちの悪い例えだが、きっとそういうことなのだ。
(セックスして、態度変えられるのが怖いんだな)
あの可愛い言動がプラトニック故のものだと何処かで感じているせいだろうか。アホらしいバカらしい。いったい相手にどんな幻想を抱いているのだろう。
「明日……するか…」
声に出してそう宣言すると、寝言だと思ったのかスピネルに軽く頭を撫でられた。寝ていても反射で体が動くなんて、なんか凄い。スピネルの嫁たちはきっと幸せなんだろうなとその時初めて、心から思った。
「う…まぁ、実は…」
なんとなく流れで二回戦目を終え、再び事後の気怠い空気の中。話題は自然と護衛騎士となった狼くんについてとなっていた。
「マジで鬼畜」
「いや、だってさぁ」
「生殺しもいいとこだな。折角努力して変化も身につけたんだ。国にいる間に抱かせてやってもバチは当たらんだろ」
「それが仮にも夫の言う台詞かよ…」
「言っただろ、護衛騎士とヤるのは浮気に入らない。むしろヤラせないことの方が侮辱にあたるんだぜ?」
「な、なんでそうなるん??」
「つべこべ言わずに抱かせてやれ。ちょうど明日から俺は留守にする。その間エドの奴にしっかり満足させてもらうんだな」
「いや、でも、さ…」
なんか恥ずかしくって…と龍之介は頬を赤らめる。それを見て、スピネルが激しく顔を歪ませた。
「お前…その顔レイノルドの前でするなよ。血を見るぞ」
「え?」
「そういや人間は好きな相手には中々体を許さないのが美徳なんだっけか?面倒臭い生き物だな…」
「いや、いやいや、別にそういうわけじゃ…」
「さっきの顔で、お前がエドの奴に少なからず好意があるのはわかった。俺個人としては護衛騎士とイチャつくくらい目を瞑ってやってもいいが、レイノルドは違うだろう」
「……………」
「その好意が、どの程度の好きなのか、ちゃんと見極めとくんだな」
スピネルはそう言うと、今度こそ目を閉じた。もう眠りにつくつもりなのだろう。
逞しい腕を枕に、龍之介も目を閉じる。が、なかなか寝つくことは出来なかった。スピネルに言われたことが頭の中をぐるぐる回って、考えれば考えるほど眠れなくなってしまったのだ。
(生殺し……かぁ)
確かに、そうかもしれないと龍之介は思う。狼くんがずっと、物言いたげに自分を見ていることには気付いていたし、その視線の中に、うっすら期待めいたものが混じっていたことにも気が付いていた。
(けど、さ…)
だからと言って自分から誘うのはハードルが高い、と龍之介は思う。ぶっちゃけ無闇矢鱈に触ってくる輩がいないせいか、獣人国に来てからというものかなり心穏やかに過ごせていた。狼くんともそれはそれは良い距離感で、仲良く過ごしている。そこに性的な接触は一切なく、代わりにあるのは思春期にあったような気もするふわふわっとした淡い恋心であった。
つまり、プラトニックな疑似恋愛を楽しんでいたわけである。
(でも現実俺はハタチ越えてる草臥れた社畜リーマンだったわけで…烏滸がましいよな、キラキラした十代と青春取り戻そうなんてさあ…)
十代なんて、ヤリたい盛りである。それなのにオッサンのノスタルジーに付き合わせることのこの罪深さよ。
(あーそっか、わかったぞ)
なんで中々狼くんにヤラせなかったのか。
一度ヤッてしまったら、あの初々しさがなくなってしまうのではないかと思ったからだ…
(体をゆるしたら、もうそればっかの関係になっちまうのが嫌だったんだな、俺は…)
なかなか彼氏にセックスさせない女子の気持ちがなんとなくわかってしまった。今自分の中には、処女の女子中学生がいるのだろう。なんとも気持ちの悪い例えだが、きっとそういうことなのだ。
(セックスして、態度変えられるのが怖いんだな)
あの可愛い言動がプラトニック故のものだと何処かで感じているせいだろうか。アホらしいバカらしい。いったい相手にどんな幻想を抱いているのだろう。
「明日……するか…」
声に出してそう宣言すると、寝言だと思ったのかスピネルに軽く頭を撫でられた。寝ていても反射で体が動くなんて、なんか凄い。スピネルの嫁たちはきっと幸せなんだろうなとその時初めて、心から思った。
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