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防衛措置

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「私の背中にしがみついて爪を立てる、あの華奢な白い指がいい」
「…………なんの話だ?」

今俺お前と仕事の話してたよな?と確認しながらダームウェルはレイノルドの方を見る。
あーヤバい、心ここに在らずの顔。

「朝っぱらからヤッてきたのか?」
「いや……まあ、そうだな」
「どっちだよ」
「最近特に可愛い。あんなに可愛いのだから、目をつけられるのも仕方がない」
「…………そうだなあ」

さて、どうするかねとダームウェルは溜息を吐く。
龍之介に目をつけた魔人の処遇は一旦棚上げしていたのだが、リーリエの帰還によりそうも言ってられなくなってきた。

「相当傷が深いらしい。異能の殆どが使えないとはいえあのリーリエをあそこまで痛めつけるとは、我が兄ながら恐ろしいぜ」
「領地を戦場にはしたくない。出来れば結界内でことを済ませたいところだが…」
「どうかねえ、納得しないだろうねえ、あの兄者は」
「他にいくらでも男を作って構わないが、魔人は駄目だ。特にあの白いのはよくない」
「俺も一応魔人なんだけど?」
「お前はもう殆ど臭いが違うだろう」
「そう言ってもらえるのは有難いけどさ」

まあ俺のことはさておきとダームウェルは仕切り直す。
獣人国で姿を見せた魔人は今も尚龍之介に手を出そうとその機会を窺っていた。魔人は基本的に傍若無人であり話し合いは不可能とされている。故に気に入られると拒むことは出来ず、拒絶は死を意味していた。

「兄者は昔から、人間が好きだからなあ…」

ダームウェルは頬杖をつきながら遠い目をする。魔人の寵愛を受けて孕まされる異種族は多々いるが、その内の半数は死産であり、またその内の半数は母体ごと死ぬとされている。
これは魔人の魔力が強すぎる為母体がそれに耐えきれずに起きる悲劇であり、故に魔人は魔人同士の間にしか生まれないとされていた。

だが魔人との間に無事に生まれる子供も少数であるが存在する。その場合は魔人の血が限りなく薄く、それ故に母体にかかる負担が少ない為であると言われていた。

「兄者は異種族との間に自分の子供を作りたがってる。今も昔も、そのことだけに拘泥している」

ところが彼の魔力量ではほぼ100%の確率で母体を殺してしまうのだ。妊娠後期まではいけても、いざ出産の段階になるとその過程で必ず母体が耐えきれなくなり、子供ごと亡くなってしまう。それを幾度となく繰り返していた。


「……傍迷惑な話だな」
「龍之介を狙っているのも、恐らくは母体の候補として考えているんだろう」

何故なら唯一兄者の子供を出産出来たのが、人間の男だったからだとダームウェルは告げる。


「まあ、その後母体は亡くなってしまったがな」
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