社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活

恋人のいない朝

ルクシュのつけた痕を、すっかり自分のつけた痕に変えてからレイノルドは仕事に向かった。
ルクシュと寝るようになってから、変わったことと言えばそれくらいだ。相変わらずレイノルドの加虐趣味は龍之介に新しい傷を作りまくっていたが、今はダームウェルがいる為傷跡が残ることもない。それを見越してのプレイだと思うと腹立たしくもあるが、結局のところそんなレイノルドとのセックスにも慣れはじめているのが恐ろしいところである。


（レイノルドの、）

匂いが好きだ、と最近気付いた。
恋人の去ったベッドの上でシーツに包まれていると、殊更にそれを思い知る。以前は気付かなかった。それは多分レイノルドしか知らなかったからである。

（ルクシュの匂いとも、ダームウェルの匂いとも全然違う）

香水ともまた違う、体臭なのだろうか？でも臭いとかそういうんじゃなくて、なんかこう、妙に落ち着く香りなのだ。

（そんで、嗅いでるとちょっとエッチな気分になってきたり…）

する、そんな匂いだった。龍之介はレイノルドがいなくなった後の、特に事後のベッドの中で微睡むのが好きだった。勿論ぐっしょり汚れたシーツは論外だが、そこまで汚れていない時はそのまま二度寝をすることもあった。すると何故だかよく眠れたりする。レイノルドには、話したことはなかったけれど。


（恋人になって良かったことは、スケジュールが把握しやすくなったことだな）

寝室を共にしたことで、レイノルドがいつ起きて何時に帰ってくるのかが大体把握出来るようになっていた。
以前は別の部屋を用意されていたし、そこに軟禁状態だった。レイノルドはセックスの時だけそこに訪れて、行為が終われば帰っていってしまう。故に、なんだか妙に寂しかったのを覚えている。

（今は行為が終わっても一緒にいるし、朝まで同じベッドで寝たりする。最初は四六時中一緒でうんざりしたけど、寝室を一緒にしたのは悪くなかったのかもな…）

レイノルドの匂いに包まれながら、目を閉じる。まるで今隣にレイノルドがいるような錯覚を起こしそうになる。

（ルクシュと寝たり、ダームウェルと戯れたりするのもまぁ気持ちいいし、楽しいけど…）

やっぱりなんだかんだ言って、レイノルドに抱かれるのがいちばんしっくりくるんだよなぁと龍之介は思う。
体が、もうレイノルドに馴染んできてしまっているのだ。
こればっかりは、仕方がない。だってレイノルドがいちばん初めに龍之介の体をひらいた張本人なのだから。


（最初の男って、特別なんだなぁ…）

まあ刷り込みかもしれないけれど。
なんてことを考えながら、龍之介は朝の微睡の中へ落ちていく。

それはとても気分の良い、幸福な夢の檻の中。