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セフレのお誘い

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「なあ、お前って俺に気があるの?」
「は…?」

何言ってんの?という顔をされてしまった。
なにこの顔、ちょっと屈辱なんですけど。

「エルヴィンさんが、そう言ってたから」
「…言ってたから、なんだっつーんだよ」

抱かせてくれるとでも言うのかよ、と半ギレみたいな口調で聞いてくるので、龍之介は「まあ」と頷く。

「別にいいけど」
「………お前さぁ」

俺のこと舐めてんだろ、とルクシュはその可愛らしい顔でヤンキーみたいなことを言ってくる。

「別に舐めてないけど…」
「最初に押し倒した時は半泣きだったくせに」
「あの時はあの時、今は今だ!」
「開き直んなよ…」

だいたいレイノルド様と恋人になったんだろ?とルクシュは痛いところを突いてくる。

「なあ、ルクシュって恋人いる?」
「は?今はいねえよ」
「恋人がいても、他の奴とセックスってするわけ?」
「…時と場合によるけど」
「やっぱすんのね…」

フー、と溜息を吐く。出ちゃう。やっぱりそういうもんなのだろうか。

「セックスって、もしかしてそんなに重要じゃない?」
「どういう意味だ?」
「なんつーか、扱いが軽いっていうか…俺の中の常識だと、恋人が出来たらその人以外とはセックスしないもんだからさ」
「………考え方というより、生態の問題だと思う」

あくまで俺の、半獣人としての意見だけどと前置きしてから、ルクシュは説明してくれる。

「例えば俺は定期的にセックスしないと具合が悪くなんの。単純に動きが悪くなるしメンタルもおかしくなる。情緒不安定になる奴もいるし凶暴化するやつだっている。俺の場合のみで言えば怠くて何もやる気が起きなくなんだ」
「ひとりで抜くのじゃ駄目なん…?」
「勿論自慰行為もするけど、それだけじゃおさまらない。そうなった時に常に恋人が傍にいて、ヤラせてくれるわけじゃないだろ?」
「だから、手近な奴とヤッちゃうってこと?」
「そうなるな。獣人同士ならその辺はわかってるから話が早い。助け合いみたいなもんだ」
「そこに、邪な気持ちなんかはないってこと?」
「それはケースバイケース」

なんかズルくない…?という顔をする龍之介に、ルクシュは「しょうがねえんだよ!」と言う。

「だからそれを浮気と言われるとちょっと付き合えない」
「じゃあ恋人とセフレの違いってなに?」
「そりゃあ好きかどうかだろ」
「……なんか今いちピンとこないんだよなぁ」

(俺はセフレのことだってちゃんと好きになるけどな…)

でも恋人がいるときはセフレは作らない。それが社会の暗黙のルールだと思っていたからだ。
でもこっちの世界では恋人がいてもセフレはOKだという。それでいて、恋人だけを好きでいろという。
それは龍之介にとっては中々難しいことであった。だってどうしたって一度寝ると情がわいてしまう。特に、抱かれる側になるとそれが顕著だった。

(でももう悩まないって決めたしな…)

習うより慣れよ、である。




「で、結局するの?しないの?」
「…………する」
「(するんかーい)」
「でも、一旦持ち帰らせてくれ」

何の為に?という顔をする龍之介に、ルクシュは溜息を吐く。

「そうは言ってもお前はレイノルド様の所有物だし、手を出すならきちんと筋を通さないといけない」
「なにそれ」
「あのなあ、いくらセックスに寛容な世界でも立場が上の人のものに手を出す時は許可が必要なんだよ。なんでもありってわけじゃない」
「でもお前、最初に会った時さぁ…」
「あれは興奮して我を忘れてたの!」

とにかくこの話は一旦持ち帰る!と叫ぶとルクシュは部屋から出て行った。
なんかとてつもなく恥ずかしいことと理不尽なことを同時に言われた気がする龍之介であった。
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