89 / 239
買い物と手料理
しおりを挟む
「風邪ひくわ…」
「まぁまぁ、もう充分温まったろ?」
「寒暖差で鼻水でる」
ずびっと鼻を啜った龍之介に、ダームウェルはもう一枚毛布をわけてくれる。やっぱり久しぶりに会っても甲斐甲斐しい、出来る男ぶりを発揮するダームウェルであった。
突然極寒の地に降り立った時はどうしようかと思ったけれど、ダームウェルはすぐに近場の小屋に龍之介を案内すると、あっという間にそこを居心地の良い空間へと変貌させてしまった。
外から見るとみすぼらしい掘立て小屋だが中に入るととても暖かくて居心地が良い。男ふたりでも充分広々と座れるソファにテーブルと暖炉、簡易キッチン、トイレバス付きとまぁ普通に龍之介が生活していたアパートと何ら変わらない間取りである。
要は狭いけれどなんか落ち着く、という空間であった。
「ここは街からは離れてるし、近場の魔獣は一掃してあるから危険も少ない。ゆっくり過ごすには最適の場所だぞ」
「外寒いけどな…」
「…厚手のコートでも買いに行くか?」
どうせ暫く滞在するんだし、必要な物を買い出しに行くかとダームウェルは腰をあげる。
「買い物?したいしたい!」
「じゃあ街の近くまでとりあえずおりるか」
「おっ?」
ぎゃあ!と思わず叫んでしまった。ダームウェルは龍之介の腕を掴んだその瞬間に、またしてもテレポートしたのだ。こんな頻繁にやられると心臓に悪い。もうちょっとこう、準備をくれ、心の準備を!
「まずは服だな」
「おふ、寒い…」
「少し歩けば街が見えてくる。それまでの辛抱だ」
街中にテレポートしないのはなんで?とは思ったが、色々事情があるのだろう。
深くは聞かずに、龍之介は言われた通りに歩き出す。
やがて見えてきたのは露天がずらりと並ぶ活気に溢れた街だった。
龍之介はこの世界に来て、初めて自分の欲しい物を買った。まあ正確に言うなら買ってもらったのだが、久しぶりの買い物はそりゃあもう楽しかった。
日常的に着る洋服数点と下着、それに厚手のコートと防寒具、膝下までのロングブーツと日用品を好きなように買い漁る。
最後に食料品を大量に購入し、帰りもテレポートで帰った。なんとも便利な能力である。
「楽しかったー!」
「買い物が好きなんて、女みたいだな」
「なにその偏見。仕方ないだろ、娯楽が少ないんだから」
そもそもこの世界の人たちにとっての娯楽ってなに?と龍之介はダームウェルに聞いてみる。すると「酒、食事、セックス」との返事がかえってくる。うーん原始的。
「じゃ、とりあえずご飯でも作ろうか?」
「作れるのか?」
「簡単なものならな。火の扱いさえ教えてもらえればなんとかなると思うけど」
「そりゃいいな、お前の手料理を食ったと知ったらさぞレイノルドが悔しがるだろうな」
「…そんなたいしたもんじゃないぞ」
前置きしてからキッチンに立つ。これでも学生の頃は自炊していたのだ。社会人になってからは忙しさにかまけてさっぱりしなくなっていたけれど…
「まぁまぁ、もう充分温まったろ?」
「寒暖差で鼻水でる」
ずびっと鼻を啜った龍之介に、ダームウェルはもう一枚毛布をわけてくれる。やっぱり久しぶりに会っても甲斐甲斐しい、出来る男ぶりを発揮するダームウェルであった。
突然極寒の地に降り立った時はどうしようかと思ったけれど、ダームウェルはすぐに近場の小屋に龍之介を案内すると、あっという間にそこを居心地の良い空間へと変貌させてしまった。
外から見るとみすぼらしい掘立て小屋だが中に入るととても暖かくて居心地が良い。男ふたりでも充分広々と座れるソファにテーブルと暖炉、簡易キッチン、トイレバス付きとまぁ普通に龍之介が生活していたアパートと何ら変わらない間取りである。
要は狭いけれどなんか落ち着く、という空間であった。
「ここは街からは離れてるし、近場の魔獣は一掃してあるから危険も少ない。ゆっくり過ごすには最適の場所だぞ」
「外寒いけどな…」
「…厚手のコートでも買いに行くか?」
どうせ暫く滞在するんだし、必要な物を買い出しに行くかとダームウェルは腰をあげる。
「買い物?したいしたい!」
「じゃあ街の近くまでとりあえずおりるか」
「おっ?」
ぎゃあ!と思わず叫んでしまった。ダームウェルは龍之介の腕を掴んだその瞬間に、またしてもテレポートしたのだ。こんな頻繁にやられると心臓に悪い。もうちょっとこう、準備をくれ、心の準備を!
「まずは服だな」
「おふ、寒い…」
「少し歩けば街が見えてくる。それまでの辛抱だ」
街中にテレポートしないのはなんで?とは思ったが、色々事情があるのだろう。
深くは聞かずに、龍之介は言われた通りに歩き出す。
やがて見えてきたのは露天がずらりと並ぶ活気に溢れた街だった。
龍之介はこの世界に来て、初めて自分の欲しい物を買った。まあ正確に言うなら買ってもらったのだが、久しぶりの買い物はそりゃあもう楽しかった。
日常的に着る洋服数点と下着、それに厚手のコートと防寒具、膝下までのロングブーツと日用品を好きなように買い漁る。
最後に食料品を大量に購入し、帰りもテレポートで帰った。なんとも便利な能力である。
「楽しかったー!」
「買い物が好きなんて、女みたいだな」
「なにその偏見。仕方ないだろ、娯楽が少ないんだから」
そもそもこの世界の人たちにとっての娯楽ってなに?と龍之介はダームウェルに聞いてみる。すると「酒、食事、セックス」との返事がかえってくる。うーん原始的。
「じゃ、とりあえずご飯でも作ろうか?」
「作れるのか?」
「簡単なものならな。火の扱いさえ教えてもらえればなんとかなると思うけど」
「そりゃいいな、お前の手料理を食ったと知ったらさぞレイノルドが悔しがるだろうな」
「…そんなたいしたもんじゃないぞ」
前置きしてからキッチンに立つ。これでも学生の頃は自炊していたのだ。社会人になってからは忙しさにかまけてさっぱりしなくなっていたけれど…
46
お気に入りに追加
1,616
あなたにおすすめの小説
異世界のオークションで落札された俺は男娼となる
mamaマリナ
BL
親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。
異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。
俺の異世界での男娼としてのお話。
※Rは18です
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる