85 / 242
ただの八つ当たりでした
しおりを挟む
「レイノルドに愛想尽かしたら、いつでも嫁にこいよ」
「愛想尽かされたら、の間違いでは…」
「いや、まあ、………色々頑張れよ!」
「…………?(不審な顔)」
と、別れ際不穏な台詞を残しつつ、王様とはそこで別れた。
レイシャの石像問題はどうなったのかと言うと「アイツも少しは痛い目みたほうがいいだろ」とのことであの状態のまま三年放置、それ以上は心身に異常をきたす可能性があるのでその頃また石化解呪の魔法をかけるという約束をレイノルドとの取り決めとしたらしい。そんなんでええんか。
「いいんだよ、正直レイシャがいない方が国政はやりやすいんだ」
「問題児なん…」
「でもアイツには借りがあるから、出来るだけ尊重はしてやりたいわけ。まあ限度はあるけどな」
「?ふうん…」
なんだか複雑なんだなと思いつつ、俺が口出しすることでもないよなと思いそれ以上は口を挟まないことにした。
それにこれ以上王様と話していると後ろからの視線で殺されそうな気がしたので、龍之介はそそくさとその場を離れる。
「賢明な判断ですね」
「…エルヴィンさんは、うさぎさんとちゃんとお別れしたわけ?」
「しましたよ。子種が欲しいと言われましたので、丁重にお断りしました」
「ええ…」
なんちゅう会話だ、と思ったが、まあやってることは自分も大差ないので龍之介はダンマリを決め込んだ。王様とのアレコレは絶対に墓まで持っていく所存である。男の沽券に関わる重大な問題だ。
虎くんと狼くんとは既に別れの挨拶を済ませていたので、これでもうこの国に思い残すことはない。
帰り道は王様が魔法で国境まで送ってくれたので、馬車に揺られることもなければ飛竜に乗る必要もなかった。ほんと、魔法って有難いよ…俺も使えるようになりたいよ…
「ではこれからどうしますか?このまま屋敷に直行しますか?それとも観光がてら寄り道でもしましょうか」
「えっ、エルヴィンさんがそんなこと言うの珍しくない?いつもなら速攻帰って書類仕事の続きをしますよ、とかなんとか言うのに」
「……まあ私も鬼ではないので、たまにはおふたりに羽を伸ばして頂こうかな、と」
「そういや俺って、自分のいる国のこと何にも知らないかも」
「そうでしょう、そうでしょう」
「………………?」
「(にこにこにこ)」
いや、これあきらかに何かおかしいでしょ、と龍之介は確信する。絶対よからぬことを考えている。画策している。なんの理由もなくエルヴィンがこんなに気を遣ってくれるはずがない。
「なあレイノルド、どうす…」
る、と言い終わる前に、龍之介は嫌な予感に襲われる。
(あ、これ駄目なやつ)
話しかけようとしたレイノルドの様子を見て、一瞬で察する。
これは、絶対えっちなことで頭がいっぱいになっている時の顔だ、と…
(に、逃げたい、)
正直今そんな気分じゃない。
性奴隷のくせに仕事を放棄するのかと言われそうだが、こっちにも精神的不調の時があるのだ。
龍之介はなんとかレイノルドの気を逸らそうと、他愛のない会話を振り続ける。
少しでもセックスから離れた話題をと喋り倒す龍之介であったが、生憎当のレイノルドは話を聞いているのかいないのか、龍之介の顔を凝視したままうんともすんとも言わない。
(…………うう、これダメかも…)
全然響いてない。それどころかじわじわと距離を詰められている。
所詮俺との会話なんてその程度のものなのか?やっぱりレイノルドにとって必要なのは俺の体だけのか?コミニュケーションなんて端から取るつもりがないのか??
…なんてことを考えていたら、腹が立ってきた。
「……………もういい」
龍之介はそこで、手首を捲り上げた。そして、中指の爪を手首に思い切り突き立てる。
「家出してやる!!!」
その瞬間、時が止まったかのように、レイノルドの動きが停止した。
「愛想尽かされたら、の間違いでは…」
「いや、まあ、………色々頑張れよ!」
「…………?(不審な顔)」
と、別れ際不穏な台詞を残しつつ、王様とはそこで別れた。
レイシャの石像問題はどうなったのかと言うと「アイツも少しは痛い目みたほうがいいだろ」とのことであの状態のまま三年放置、それ以上は心身に異常をきたす可能性があるのでその頃また石化解呪の魔法をかけるという約束をレイノルドとの取り決めとしたらしい。そんなんでええんか。
「いいんだよ、正直レイシャがいない方が国政はやりやすいんだ」
「問題児なん…」
「でもアイツには借りがあるから、出来るだけ尊重はしてやりたいわけ。まあ限度はあるけどな」
「?ふうん…」
なんだか複雑なんだなと思いつつ、俺が口出しすることでもないよなと思いそれ以上は口を挟まないことにした。
それにこれ以上王様と話していると後ろからの視線で殺されそうな気がしたので、龍之介はそそくさとその場を離れる。
「賢明な判断ですね」
「…エルヴィンさんは、うさぎさんとちゃんとお別れしたわけ?」
「しましたよ。子種が欲しいと言われましたので、丁重にお断りしました」
「ええ…」
なんちゅう会話だ、と思ったが、まあやってることは自分も大差ないので龍之介はダンマリを決め込んだ。王様とのアレコレは絶対に墓まで持っていく所存である。男の沽券に関わる重大な問題だ。
虎くんと狼くんとは既に別れの挨拶を済ませていたので、これでもうこの国に思い残すことはない。
帰り道は王様が魔法で国境まで送ってくれたので、馬車に揺られることもなければ飛竜に乗る必要もなかった。ほんと、魔法って有難いよ…俺も使えるようになりたいよ…
「ではこれからどうしますか?このまま屋敷に直行しますか?それとも観光がてら寄り道でもしましょうか」
「えっ、エルヴィンさんがそんなこと言うの珍しくない?いつもなら速攻帰って書類仕事の続きをしますよ、とかなんとか言うのに」
「……まあ私も鬼ではないので、たまにはおふたりに羽を伸ばして頂こうかな、と」
「そういや俺って、自分のいる国のこと何にも知らないかも」
「そうでしょう、そうでしょう」
「………………?」
「(にこにこにこ)」
いや、これあきらかに何かおかしいでしょ、と龍之介は確信する。絶対よからぬことを考えている。画策している。なんの理由もなくエルヴィンがこんなに気を遣ってくれるはずがない。
「なあレイノルド、どうす…」
る、と言い終わる前に、龍之介は嫌な予感に襲われる。
(あ、これ駄目なやつ)
話しかけようとしたレイノルドの様子を見て、一瞬で察する。
これは、絶対えっちなことで頭がいっぱいになっている時の顔だ、と…
(に、逃げたい、)
正直今そんな気分じゃない。
性奴隷のくせに仕事を放棄するのかと言われそうだが、こっちにも精神的不調の時があるのだ。
龍之介はなんとかレイノルドの気を逸らそうと、他愛のない会話を振り続ける。
少しでもセックスから離れた話題をと喋り倒す龍之介であったが、生憎当のレイノルドは話を聞いているのかいないのか、龍之介の顔を凝視したままうんともすんとも言わない。
(…………うう、これダメかも…)
全然響いてない。それどころかじわじわと距離を詰められている。
所詮俺との会話なんてその程度のものなのか?やっぱりレイノルドにとって必要なのは俺の体だけのか?コミニュケーションなんて端から取るつもりがないのか??
…なんてことを考えていたら、腹が立ってきた。
「……………もういい」
龍之介はそこで、手首を捲り上げた。そして、中指の爪を手首に思い切り突き立てる。
「家出してやる!!!」
その瞬間、時が止まったかのように、レイノルドの動きが停止した。
77
お気に入りに追加
1,649
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

異世界のオークションで落札された俺は男娼となる
mamaマリナ
BL
親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。
異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。
俺の異世界での男娼としてのお話。
※Rは18です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。
mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】
別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる