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それから
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「本当に、自分たちがついていながら申し訳ありませんでした」
「ええ…いや、虎くんも狼くんも悪くないでしょ、だって攫ったのは君たちのとこの王様なわけなんだし」
「誰が相手であっても、目を離して攫う隙をみせたのは自分たちの落ち度です。怖い思いをさせてしまったこと、心から謝罪致します」
「(ま、真面目ぇ…)」
無事(?)意識が回復した龍之介を待っていたのは虎くんと狼くんによる誠心誠意の謝罪だった。
そんなに気にすることないよと龍之介が言ったところで、ふたりは如何なる処罰も受けますと頑としてきかない。どうやら行方不明の間、相当レイノルドに絞られたらしい彼らは心なしかげっそりしているようにも見受けられた。そんな姿を見て、本当に申し訳ないことをしたなとこちら側が恐縮してしまう始末である。
「本当にほら、俺ピンピンしてるしさ!」
「しかし、怖い思いをしたと聞きました。レイシャ姫にも襲われたと…」
「嫌な思いも沢山したのではないですか?」
「嫌な思い…」
そう狼くんに聞かれて、ふと件の醜態が頭を過ぎる。
「………………」
「ほら!やっぱりしたんですよね!?」
「そんなに黙り込むほどの何がいったいあったのですか!?」
「あっ、いやいや!それはこっちの問題っていうか!むしろ王様のせいで…その、えーっと…」
く、苦しい!なんで俺がこんな言い訳しないといけないわけ!?と龍之介が混乱していると、見かねたうさぎさんがふたりを制止してくれた。た、たすかるぅ。
「いい加減にしなさいよふたりとも、困っているのがわからないの?」
「う、うさぎさぁん」
ピャッとうさぎさんの後ろに隠れる龍之介に、虎くんも狼くんも肩を落とした様子で項垂れている。心なしか耳も尻尾も元気がない。
心配してくれるのは嬉しいが、こちらにも話せない事情があるのだ。出来ればこれ以上踏み込んできて欲しくない。
(いや、気持ちは有難いんだけどね?)
短い付き合いだったけど、あんなことやこんなことまでした仲だ。個人的にもかなり優しくしてもらったし、たくさん守ってもらった。
「……本当に、気にしないで欲しいんだ。俺はこの国に来て、ふたりに優しくしてもらって嬉しかったし感謝してる。だからもう謝らないで欲しい」
あ、勿論うさぎさんもありがとうね!と言うと、彼女はこちらを振り返り、にっこり笑ってくれる。うーん、俺もこの短期間で動物の顔の喜怒哀楽を見分けられるようになったもんだ。
というわけで、なんとか納得してもらって一旦解散した後、こっそり戻って来た狼くんに何故か呼び止められてしまった。
「うん?どした?」
「…………魔力の操作、出来るように頑張ります」
「うん?」
「次会える時までには、必ず出来るようになっていますから」
「お、おう、」
「その時は、私と…」
「……………」
「その…」
「(なにこの甘酸っぱい空気…)」
もじもじする狼くんに、なんとなく察する。
魔力の操作、出来るようになったら、の続き。
「うん、そうだな」
「え?」
「人型になれたら、続き、しような?」
「…………!」
狼くんのフサフサの頬に軽くチュッ、として龍之介はウインクする。
ああかわいい、狼くんてやっぱりかわいい。
(俺なんかにあんなに必死になるなんて、ほんと可愛いよな)
怖い思いもたくさんしたし、嫌な思い出も出来てしまったけれど
(狼くんに会う為なら、また遊びに来ても、いいかもしれない)
なんてことを考えた、獣人国滞在、最終日。
「ええ…いや、虎くんも狼くんも悪くないでしょ、だって攫ったのは君たちのとこの王様なわけなんだし」
「誰が相手であっても、目を離して攫う隙をみせたのは自分たちの落ち度です。怖い思いをさせてしまったこと、心から謝罪致します」
「(ま、真面目ぇ…)」
無事(?)意識が回復した龍之介を待っていたのは虎くんと狼くんによる誠心誠意の謝罪だった。
そんなに気にすることないよと龍之介が言ったところで、ふたりは如何なる処罰も受けますと頑としてきかない。どうやら行方不明の間、相当レイノルドに絞られたらしい彼らは心なしかげっそりしているようにも見受けられた。そんな姿を見て、本当に申し訳ないことをしたなとこちら側が恐縮してしまう始末である。
「本当にほら、俺ピンピンしてるしさ!」
「しかし、怖い思いをしたと聞きました。レイシャ姫にも襲われたと…」
「嫌な思いも沢山したのではないですか?」
「嫌な思い…」
そう狼くんに聞かれて、ふと件の醜態が頭を過ぎる。
「………………」
「ほら!やっぱりしたんですよね!?」
「そんなに黙り込むほどの何がいったいあったのですか!?」
「あっ、いやいや!それはこっちの問題っていうか!むしろ王様のせいで…その、えーっと…」
く、苦しい!なんで俺がこんな言い訳しないといけないわけ!?と龍之介が混乱していると、見かねたうさぎさんがふたりを制止してくれた。た、たすかるぅ。
「いい加減にしなさいよふたりとも、困っているのがわからないの?」
「う、うさぎさぁん」
ピャッとうさぎさんの後ろに隠れる龍之介に、虎くんも狼くんも肩を落とした様子で項垂れている。心なしか耳も尻尾も元気がない。
心配してくれるのは嬉しいが、こちらにも話せない事情があるのだ。出来ればこれ以上踏み込んできて欲しくない。
(いや、気持ちは有難いんだけどね?)
短い付き合いだったけど、あんなことやこんなことまでした仲だ。個人的にもかなり優しくしてもらったし、たくさん守ってもらった。
「……本当に、気にしないで欲しいんだ。俺はこの国に来て、ふたりに優しくしてもらって嬉しかったし感謝してる。だからもう謝らないで欲しい」
あ、勿論うさぎさんもありがとうね!と言うと、彼女はこちらを振り返り、にっこり笑ってくれる。うーん、俺もこの短期間で動物の顔の喜怒哀楽を見分けられるようになったもんだ。
というわけで、なんとか納得してもらって一旦解散した後、こっそり戻って来た狼くんに何故か呼び止められてしまった。
「うん?どした?」
「…………魔力の操作、出来るように頑張ります」
「うん?」
「次会える時までには、必ず出来るようになっていますから」
「お、おう、」
「その時は、私と…」
「……………」
「その…」
「(なにこの甘酸っぱい空気…)」
もじもじする狼くんに、なんとなく察する。
魔力の操作、出来るようになったら、の続き。
「うん、そうだな」
「え?」
「人型になれたら、続き、しような?」
「…………!」
狼くんのフサフサの頬に軽くチュッ、として龍之介はウインクする。
ああかわいい、狼くんてやっぱりかわいい。
(俺なんかにあんなに必死になるなんて、ほんと可愛いよな)
怖い思いもたくさんしたし、嫌な思い出も出来てしまったけれど
(狼くんに会う為なら、また遊びに来ても、いいかもしれない)
なんてことを考えた、獣人国滞在、最終日。
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