37 / 242
突然のホラー
しおりを挟む
「なあ、俺、話し相手が欲しいんだけど」
そう言った瞬間、エルヴィンとレイノルドは無言のままふたりで見つめ合い、そうして同時に互いに首を横に振った。
「「それは無理」」
「なんでだよ……俺暇で死んじゃう…」
「かわいこぶらないで下さい」
レイノルドが執務に戻った為、残ったエルヴィンに対して龍之介は駄々をこね続けていた。
「文字の勉強はどうしたのですか?」
「飽きた」
「………………」
「っていうかダームウェルってなんでいなくなったの?」
アイツがいればまだ話し相手になったのに、と龍之介はブスくれる。
「さあ、私にはわかりかねますが」
「ミアちゃんにまた来てもらうわけにはいかないわけ?」
「彼女は今、別の客人の相手をしていまして…」
「じゃあ別のメイドさんとか」
「他のメイドも全てその客人の対応に追われている状況です」
「え、……もしかしてヤバめな客?」
察しがいいですね、とエルヴィンはにこりと微笑む。何故だろう、笑っているのに笑っているように見えないのは…
「そういうわけで、女性の使用人にはあなたの面倒までみる余裕はありません。ご理解頂けましたか?」
「じゃ、じゃあ…男の使用人でも…」
「男は嫌と仰っていましたよね?」
「…………そうでした」
でもあれは、急にあの金髪くるくる頭が押し倒してきたからで、と龍之介はもごもごと文句を垂れ続ける。
「そういうこと、しない奴を選んでくれたら俺だって…」
「残念ながら、絶対にあなたに手を出さないと言い切ることは難しいのですよ」
「え、なんで?」
「…………なんででしょうね?」
エルヴィンはにっこり笑ってそう言うと、話はこれで終わりとばかりに部屋の清掃をサッと切り上げ出て行ってしまった。
残された龍之介はだだっぴろい部屋にひとり、置き去りにされた気分で天を仰ぐ。
「うーん、病みそう」
そのまま綺麗にベットメイキングされたシーツの上にごろんと寝転ぶ。
こうなってみるとダームウェルの有り難みがよくわかった。なんだかんだ言ってここ最近楽しく過ごせていたのはダームウェルという話し相手がいてこそだったと痛感させられる。
「…………マジで、暇だ」
他の性奴隷はいったい何をして、セックス以外の時間を潰しているのだろうか?
「えーと、労働とか…かな?」
少し考えてみて、そうだ、と龍之介は思う。娯楽がないなら労働だ、と。正直なところ、レイノルドの相手をする時以外龍之介はまるっきり暇なのである。レイノルドも最近は仕事が忙しいらしく、何日も屋敷を空けることもあった。そうなってしまうと龍之介は本格的に手持ち無沙汰になってしまう。
睡眠と筋トレ、時々読書の無限ループに陥ってしまうのだ。しかも外にも出られない。人は日光にあたらないと死ぬっていうけど俺の今のこの生活は大丈夫なんだろうか…?と思わず不安になるほどである。
(そういや、どっかの国の海軍の潜水艦の乗員は、3ヶ月の交代制だって聞いたことがある…)
じゃないと、精神的に異常をきたすのだそうだ。
自分もこの部屋にずっといたら、そのうち頭がおかしくなってしまうのではないか…?
「やば~、脱走しよっ」
うん、そうしよう、と龍之介は勢いをつけてベッドから起き上がる。
このまま部屋に閉じこもってばかりでは心にも体にもあらゆる方面からよくない。
実はこの部屋、外からは決められた者しか入れなくなっているようだが内からは簡単に出られる仕様なのである。
ただ出るなよ、ときつく言いつけられてはいた。
出たら命の保証はないぞ、と。
(まあでも、せめて窓を開けるくらいなら、いいよな?)
空気の入れ替えくらいしたい。そのついでに、窓から脱走出来るかどうかも確認したい。
そんな邪なことを考えながら、龍之介は窓のそばへと移動する。
実のところ、窓には常にレースのカーテンがひかれており、龍之介はこの部屋の外の景色を見たこともなかったのだ。
「とりあえず、カーテン開けてみるか…」
そう誰に言い訳するでもなく宣言しながら、龍之介はシャーッとレースのカーテンを勢いよく開けた。──すると
(えっ、)
カーテンレールの向こう側、窓のすぐそばに、その少女は立っていた。
「ヒィッ!」
その瞬間、龍之介は危うく卒倒しかけた。
カーテンを開けたら窓から外の景色が見られると思っていたのに、そこにいたのは真っ赤なドレスに身を包んだ赤毛の少女が立っていたのである。それも、窓に張り付いてじっと中を、こちらを、無表情のまま覗き込んでいるではないか…
ホラーである。
おしっこ、ちびるかと思ったぜ…
そう言った瞬間、エルヴィンとレイノルドは無言のままふたりで見つめ合い、そうして同時に互いに首を横に振った。
「「それは無理」」
「なんでだよ……俺暇で死んじゃう…」
「かわいこぶらないで下さい」
レイノルドが執務に戻った為、残ったエルヴィンに対して龍之介は駄々をこね続けていた。
「文字の勉強はどうしたのですか?」
「飽きた」
「………………」
「っていうかダームウェルってなんでいなくなったの?」
アイツがいればまだ話し相手になったのに、と龍之介はブスくれる。
「さあ、私にはわかりかねますが」
「ミアちゃんにまた来てもらうわけにはいかないわけ?」
「彼女は今、別の客人の相手をしていまして…」
「じゃあ別のメイドさんとか」
「他のメイドも全てその客人の対応に追われている状況です」
「え、……もしかしてヤバめな客?」
察しがいいですね、とエルヴィンはにこりと微笑む。何故だろう、笑っているのに笑っているように見えないのは…
「そういうわけで、女性の使用人にはあなたの面倒までみる余裕はありません。ご理解頂けましたか?」
「じゃ、じゃあ…男の使用人でも…」
「男は嫌と仰っていましたよね?」
「…………そうでした」
でもあれは、急にあの金髪くるくる頭が押し倒してきたからで、と龍之介はもごもごと文句を垂れ続ける。
「そういうこと、しない奴を選んでくれたら俺だって…」
「残念ながら、絶対にあなたに手を出さないと言い切ることは難しいのですよ」
「え、なんで?」
「…………なんででしょうね?」
エルヴィンはにっこり笑ってそう言うと、話はこれで終わりとばかりに部屋の清掃をサッと切り上げ出て行ってしまった。
残された龍之介はだだっぴろい部屋にひとり、置き去りにされた気分で天を仰ぐ。
「うーん、病みそう」
そのまま綺麗にベットメイキングされたシーツの上にごろんと寝転ぶ。
こうなってみるとダームウェルの有り難みがよくわかった。なんだかんだ言ってここ最近楽しく過ごせていたのはダームウェルという話し相手がいてこそだったと痛感させられる。
「…………マジで、暇だ」
他の性奴隷はいったい何をして、セックス以外の時間を潰しているのだろうか?
「えーと、労働とか…かな?」
少し考えてみて、そうだ、と龍之介は思う。娯楽がないなら労働だ、と。正直なところ、レイノルドの相手をする時以外龍之介はまるっきり暇なのである。レイノルドも最近は仕事が忙しいらしく、何日も屋敷を空けることもあった。そうなってしまうと龍之介は本格的に手持ち無沙汰になってしまう。
睡眠と筋トレ、時々読書の無限ループに陥ってしまうのだ。しかも外にも出られない。人は日光にあたらないと死ぬっていうけど俺の今のこの生活は大丈夫なんだろうか…?と思わず不安になるほどである。
(そういや、どっかの国の海軍の潜水艦の乗員は、3ヶ月の交代制だって聞いたことがある…)
じゃないと、精神的に異常をきたすのだそうだ。
自分もこの部屋にずっといたら、そのうち頭がおかしくなってしまうのではないか…?
「やば~、脱走しよっ」
うん、そうしよう、と龍之介は勢いをつけてベッドから起き上がる。
このまま部屋に閉じこもってばかりでは心にも体にもあらゆる方面からよくない。
実はこの部屋、外からは決められた者しか入れなくなっているようだが内からは簡単に出られる仕様なのである。
ただ出るなよ、ときつく言いつけられてはいた。
出たら命の保証はないぞ、と。
(まあでも、せめて窓を開けるくらいなら、いいよな?)
空気の入れ替えくらいしたい。そのついでに、窓から脱走出来るかどうかも確認したい。
そんな邪なことを考えながら、龍之介は窓のそばへと移動する。
実のところ、窓には常にレースのカーテンがひかれており、龍之介はこの部屋の外の景色を見たこともなかったのだ。
「とりあえず、カーテン開けてみるか…」
そう誰に言い訳するでもなく宣言しながら、龍之介はシャーッとレースのカーテンを勢いよく開けた。──すると
(えっ、)
カーテンレールの向こう側、窓のすぐそばに、その少女は立っていた。
「ヒィッ!」
その瞬間、龍之介は危うく卒倒しかけた。
カーテンを開けたら窓から外の景色が見られると思っていたのに、そこにいたのは真っ赤なドレスに身を包んだ赤毛の少女が立っていたのである。それも、窓に張り付いてじっと中を、こちらを、無表情のまま覗き込んでいるではないか…
ホラーである。
おしっこ、ちびるかと思ったぜ…
84
お気に入りに追加
1,646
あなたにおすすめの小説

異世界のオークションで落札された俺は男娼となる
mamaマリナ
BL
親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。
異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。
俺の異世界での男娼としてのお話。
※Rは18です

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。
mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】
別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる