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嘘も方便
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龍之介が十日もの間眠っていたのには理由があった。
「すぐに回復させたらあいつ、学習しないだろ。少し反省させた方がいいと思ってな」
スリープをかけたんだ、とダームウェルは言った。所謂対象を眠らせる魔法なのだろう。
元々龍之介の体は睡眠が足りていなかったのだそうだ。あんなに怠惰な生活をしていたのに?と首を捻りたくなったが、実際には寝ている間もレイノルドによって悪戯(?)されていることが多いらしく、質の良い眠りとはいかないようだった。
「俺の回復魔法は軽い風邪や傷は癒せるが、古傷や体力回復には効果が薄い」
なので蓄積された龍之介の慢性的な疲労自体は、取り除くのは難しかったのだそうだ。
その為龍之介に必要な睡眠を確保する為、レイノルドには内緒でスリープをかけたのだという。
「勿論エルヴィンは了承済みだ」
「…………そうなんだ」
言われてみれば、いつもより目覚めが良かった気がする。たくさん寝たおかげか体も軽い。
「とは言えまだ微熱がある。こういうのは魔法を使わず自然治癒力で治した方がいいんだ。これからは適度な運動と、食事にも気を使ったほうがいいな。獣人たちの食事は肉が多いから、食物繊維やビタミンが不足しがちになるだろう。免疫力をあげるにはまずバランスの取れた食生活が……」
「…………(お、おかん…)」
急にオカン化したダームウェルをポカンとした顔で見つめていると、龍之介の視線に気がついたのか、ダームウェルがハッとした表情で口をつぐむ。その顔は、どことなく赤い。
「…………とにかく、あと数日は隔離してやる。レイノルドは遠見も使えるが、この部屋は魔力遮断しているから覗かれる心配も侵入される恐れもない。ゆっくり体を休めろよ」
「…………わかった、」
ありがとう、と龍之介が素直にお礼を言うとダームウェルは些か居心地の悪そうな顔をして、そのまま部屋から出ていってしまった。
(案外、悪い奴じゃないのかも…?)
自分の世話を焼いてくれる人間は、須く良い奴であると思っている節のある龍之介である。
非常に単純な思考回路だが、龍之介のこういう部分が敵を作らない所以でもあった。
(そう言われてみれば、出される食事は脂っこいものが多かったな…)
とは言え社畜時代は飯を食う時間さえなかった。コンビニ飯かゼリー飲料くらいしか摂取していなかった頃に比べれば、屋敷で出される食事は充分なご馳走だったし文句のつけようもなかった。
(元気に性奴隷するには、体が資本ってことか)
これを機会に、生活自体を改善してみるのも良いかもしれない。
やっぱりまだ、死にたくはないんだよなぁと改めて実感した龍之介であった。
「すぐに回復させたらあいつ、学習しないだろ。少し反省させた方がいいと思ってな」
スリープをかけたんだ、とダームウェルは言った。所謂対象を眠らせる魔法なのだろう。
元々龍之介の体は睡眠が足りていなかったのだそうだ。あんなに怠惰な生活をしていたのに?と首を捻りたくなったが、実際には寝ている間もレイノルドによって悪戯(?)されていることが多いらしく、質の良い眠りとはいかないようだった。
「俺の回復魔法は軽い風邪や傷は癒せるが、古傷や体力回復には効果が薄い」
なので蓄積された龍之介の慢性的な疲労自体は、取り除くのは難しかったのだそうだ。
その為龍之介に必要な睡眠を確保する為、レイノルドには内緒でスリープをかけたのだという。
「勿論エルヴィンは了承済みだ」
「…………そうなんだ」
言われてみれば、いつもより目覚めが良かった気がする。たくさん寝たおかげか体も軽い。
「とは言えまだ微熱がある。こういうのは魔法を使わず自然治癒力で治した方がいいんだ。これからは適度な運動と、食事にも気を使ったほうがいいな。獣人たちの食事は肉が多いから、食物繊維やビタミンが不足しがちになるだろう。免疫力をあげるにはまずバランスの取れた食生活が……」
「…………(お、おかん…)」
急にオカン化したダームウェルをポカンとした顔で見つめていると、龍之介の視線に気がついたのか、ダームウェルがハッとした表情で口をつぐむ。その顔は、どことなく赤い。
「…………とにかく、あと数日は隔離してやる。レイノルドは遠見も使えるが、この部屋は魔力遮断しているから覗かれる心配も侵入される恐れもない。ゆっくり体を休めろよ」
「…………わかった、」
ありがとう、と龍之介が素直にお礼を言うとダームウェルは些か居心地の悪そうな顔をして、そのまま部屋から出ていってしまった。
(案外、悪い奴じゃないのかも…?)
自分の世話を焼いてくれる人間は、須く良い奴であると思っている節のある龍之介である。
非常に単純な思考回路だが、龍之介のこういう部分が敵を作らない所以でもあった。
(そう言われてみれば、出される食事は脂っこいものが多かったな…)
とは言え社畜時代は飯を食う時間さえなかった。コンビニ飯かゼリー飲料くらいしか摂取していなかった頃に比べれば、屋敷で出される食事は充分なご馳走だったし文句のつけようもなかった。
(元気に性奴隷するには、体が資本ってことか)
これを機会に、生活自体を改善してみるのも良いかもしれない。
やっぱりまだ、死にたくはないんだよなぁと改めて実感した龍之介であった。
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