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ご主人様の生態
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競りが終わると外套をかけられ、手錠を外された。
よくファンタジーでありがちな焼印とか服従魔法とか、そんなことをされるのかと身構えていたがそんなこともなく
龍之介はただ普通に、迎えに来た執事風の男に引き渡され待っていた馬車に乗せられたのだった。
(ひょ、拍子抜け……!)
ガタガタと舗装の悪い道に揺られながら、龍之介はホッと胸を撫で下ろす。
正直なところ、手錠を外されたのも嬉しかった。
外套の下は相変わらずパンイチだったが、羽織るものをくれただけでも僥倖だった。何せ龍之介は夜盗に襲われてからというもの、まともな衣類を身につけてこなかった。
(あったかい…)
こんな状況だというのに、龍之介は外套の暖かさにうっかりうとうとしてしまう。そして迂闊にも忍び寄る睡魔にそのまま身を任せてしまった。
どこの世界にこれから売られていく馬車の中で居眠りをする馬鹿野郎がいるのだろうか。
「強心臓だな」
「左様ですね」
眠りこける龍之介を見て、黒い影が口を開く。
「人間とはもっと脆弱で繊細な生き物と聞いていたが……」
「案外図太そうですね」
「まあ、いい。屋敷に着いたら洗浄して部屋に転がしておけ」
「早速お楽しみですか?リーリエ嬢が発狂しそうですね」
「構うものか。私は女には勃たないんだ。精々見せつけて、早々に諦めて頂こう」
「この奴隷さん、処女なのかなー。初めてがご主人様じゃ、トラウマになっちゃうかもですね?」
「………………」
そんな不穏な会話が交わされていたことなど知る由もなく、龍之介はここ最近でいちばんの安らかな眠りの中に落ちていったのであった。
「嘘だろ…」
あっという間に全身丸洗いされてしまった。
(し、しかも浣腸までされたぞ…!)
おかげで全部出し切ってしまった。その後ぬるぬるしたオイルまで塗られて、龍之介はポン、とだだっ広いベッドの上に放り出された。
完全に、抱かれる準備万端である。
「やばい…変な汗出てきた…」
ガウンは着させてくれたけれど、下着は着けさせてくれなかった。
というか、そもそも用意されていなかった。
性奴隷にパンツは必要ないってことですか??
「だ、抱か…れるのか…?」
尻をあんなに洗われたということは、つまりそういうことなのだろう。
龍之介はアナルセックスの経験はないが、知識としては知っていた。そういえば昔尻を弄ってやると喜んだ女がいたが突っ込む気にはならなかったんだよなとありし日の記憶をぼんやり思い出していると、唐突に目の前の黒いシミが人型をとりはじめた。
「ひっ、ひぃ!」
ホラーである。黒いシミのようなものは徐々に形を変え、真っ黒な闇のように大きく広がっていき、最終的にひとりの男の姿となった。
「そう怯えるな、興が削がれる」
「……(無茶言うなよ…)」
自分を見下ろす男を見上げて、龍之介は思わず反論しそうになる。
白銀の髪に褐色の肌をした、血のように紅い瞳を持つ男が、静かにそこに立っていた。
よくファンタジーでありがちな焼印とか服従魔法とか、そんなことをされるのかと身構えていたがそんなこともなく
龍之介はただ普通に、迎えに来た執事風の男に引き渡され待っていた馬車に乗せられたのだった。
(ひょ、拍子抜け……!)
ガタガタと舗装の悪い道に揺られながら、龍之介はホッと胸を撫で下ろす。
正直なところ、手錠を外されたのも嬉しかった。
外套の下は相変わらずパンイチだったが、羽織るものをくれただけでも僥倖だった。何せ龍之介は夜盗に襲われてからというもの、まともな衣類を身につけてこなかった。
(あったかい…)
こんな状況だというのに、龍之介は外套の暖かさにうっかりうとうとしてしまう。そして迂闊にも忍び寄る睡魔にそのまま身を任せてしまった。
どこの世界にこれから売られていく馬車の中で居眠りをする馬鹿野郎がいるのだろうか。
「強心臓だな」
「左様ですね」
眠りこける龍之介を見て、黒い影が口を開く。
「人間とはもっと脆弱で繊細な生き物と聞いていたが……」
「案外図太そうですね」
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「早速お楽しみですか?リーリエ嬢が発狂しそうですね」
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「この奴隷さん、処女なのかなー。初めてがご主人様じゃ、トラウマになっちゃうかもですね?」
「………………」
そんな不穏な会話が交わされていたことなど知る由もなく、龍之介はここ最近でいちばんの安らかな眠りの中に落ちていったのであった。
「嘘だろ…」
あっという間に全身丸洗いされてしまった。
(し、しかも浣腸までされたぞ…!)
おかげで全部出し切ってしまった。その後ぬるぬるしたオイルまで塗られて、龍之介はポン、とだだっ広いベッドの上に放り出された。
完全に、抱かれる準備万端である。
「やばい…変な汗出てきた…」
ガウンは着させてくれたけれど、下着は着けさせてくれなかった。
というか、そもそも用意されていなかった。
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「だ、抱か…れるのか…?」
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「ひっ、ひぃ!」
ホラーである。黒いシミのようなものは徐々に形を変え、真っ黒な闇のように大きく広がっていき、最終的にひとりの男の姿となった。
「そう怯えるな、興が削がれる」
「……(無茶言うなよ…)」
自分を見下ろす男を見上げて、龍之介は思わず反論しそうになる。
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