聖女様は堕落しました

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皇都へ向かう馬車の中で、何度も司祭に乱暴された。

抱くのはこれが最後だなんて言っておきながら、結局はこれだ。今も肌の上には司祭の痕跡が残っている。不快で仕方がない。


(下衆、と………言っていたわね…)


忌々しげに吐き捨てられたそれには、真実味を感じた。
ラナウェルと名乗った青年はわたしの様子を見て、すぐに何があったのかを理解したようだった。お喋りな司祭を追い出してくれたのには清々した。これきり二度と、顔を見ることがないことを願っている。



「マリエーヌ様、どうぞこちらへ」


わたしより余程美しく手入れの行き届いた容姿のメイドさんが、恭しく道案内をしてくれる。
なんだかとても、申し訳ない。


「こちらでどうぞお寛ぎになってお待ち下さい。今湯を張りますので、お好きな香りがあれば教えて下さいね」


にこりと優しげに微笑まれ、わたしは小さく頷き返す。司祭には、許しが出るまで決して声を発するなと言われていたが、今となっては誰の許しを得ればいいのか全くわからない。


(…………でも、湯船にはひとりで、入りたい)


おそらく彼女はわたしを洗ってくれるつもりなのだろう。でも、わたしはこの汚い身体を彼女にも誰にも見られたくない。
先程強く吸われた箇所にはまだ生々しい痕が残っているだろうし、股の奥も濡れている。
乱雑に拭かれただけなので、まだ身体には男の匂いも残っているかもしれない。そう思うと、羞恥で死にたくなってくる。
とても、惨めな気持ちだった。


「マリエーヌ様、準備が整いましたのでどうぞこちらに」
「あ、……の、……」


浴室から戻ってきた彼女に、わたしは怯えながらも唇を震わせる。
喋っても、いいだろうか?怒られや、しないだろうか?

そんなことを思いながら、なんとか声を形にする。どうか、浴室にはひとりで入りたいのだと。

そうなんとか告げると、彼女はわたしに着替えを手渡し、簡単に室内の構造を説明してくれた。
そして、そのまま部屋から出ていく。わたしは安堵と感謝の気持ちでいっぱいになった。よかった、と心から思った。


(男の人には見られてもいいけれど、女の人には見られたくない)


男にはどんな扱いを受けても我慢出来る、だけど女からの軽蔑には耐えられない。

わたしは湯を張ってくれたメイドさんに心から感謝しつつ、浴室の扉を開け、湯船の中で汚れを落とした。


けれど、いくら洗っても、司祭の臭いは中々消えてはくれなかった。
わたしは温かな湯船の中で、いつまでもいつまでも、身体を擦り続けた。
その肌が、赤く腫れあがるほどに。


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