1 / 5
1
しおりを挟む
わたしとそっくり同じ顔をした、あの女が死んだ。
「優秀で善良な者たちから先に死んでいく。皇都には呪いがかかっているのかもしれないな」
だとしたら、わたしは随分と長生きが出来そうだと、そう思った。
わたしは善良でもないし、頭も悪い。だからしぶとく今も生きている。
「マリエーヌ、お前は聖女様に瓜二つだ。聖女様に懸想した者たちは、こぞってお前を抱きにここへ訪れただろう」
だがそれも今日で終わりだ、と目の前の司祭は腰を突き動かしながら上擦った声をあげる。
抱く時にはいつも身につけさせられていた純白のレースが乱暴に引き裂かれる。なにが聖職者だ。本物の聖女様に対してもこんなふうにしたいとどうせ妄想していたのだろう。汚らわしい、おぞましい。
「お前は皇都に連れて行く。名残惜しいが、こうしてお前を抱くのも今日が終いだ。マリエーヌ、お前はこれから聖女様の代わりとして生きるのだ」
うっ、と呻いて司祭はわたしの中に精を吐き出す。そのままべろべろと顔中を舐めまわしながら自分がいかに聖女様を敬愛していたかを切々と語るので、わたしはうんざりしてしまった。敬愛っていったいどういう意味だったっけと考えてしまう。少なくともこんなふうにいきり勃った下半身を押しつけられるような意味ではなかったはずだ。まったく、本当に気持ちが悪い。
(でも、本当に気色が悪いのは、こんなことでもしないと弟を守れないわたしの方だ)
わたしひとりなら、いつ死んだってよかった。生きている意味も価値もわたしにはよくわからない。楽しいことだってなにもない。
だけどひとつだけ、ひとつだけ、大切にしているものがあった。
「……………サリエルを、このまま大事に育ててくれるなら…」
わたし、行きます。何処へでも。
そう答えると、司祭は何度も頷いて、そうしてまた腰を動かしはじめた。
善良で、人望に厚く、見た目も清潔な好人物。
それがみなの知るところの司祭様だ。でもそれはもうどうでもいい。弟にとって彼が善良な司祭のままでいてくれるなら、わたしはそれ以上は何も望まない。
「ああ、マリエーヌ、…………聖女様、聖女様……ッ」
何度も腰を打ちつけられ、何度も汚される。でももう何も感じない。こんな一方的な行為に、意味なんてない。
わたしはいつだって、あの女の代わりとしてしか求められないのだから。
「優秀で善良な者たちから先に死んでいく。皇都には呪いがかかっているのかもしれないな」
だとしたら、わたしは随分と長生きが出来そうだと、そう思った。
わたしは善良でもないし、頭も悪い。だからしぶとく今も生きている。
「マリエーヌ、お前は聖女様に瓜二つだ。聖女様に懸想した者たちは、こぞってお前を抱きにここへ訪れただろう」
だがそれも今日で終わりだ、と目の前の司祭は腰を突き動かしながら上擦った声をあげる。
抱く時にはいつも身につけさせられていた純白のレースが乱暴に引き裂かれる。なにが聖職者だ。本物の聖女様に対してもこんなふうにしたいとどうせ妄想していたのだろう。汚らわしい、おぞましい。
「お前は皇都に連れて行く。名残惜しいが、こうしてお前を抱くのも今日が終いだ。マリエーヌ、お前はこれから聖女様の代わりとして生きるのだ」
うっ、と呻いて司祭はわたしの中に精を吐き出す。そのままべろべろと顔中を舐めまわしながら自分がいかに聖女様を敬愛していたかを切々と語るので、わたしはうんざりしてしまった。敬愛っていったいどういう意味だったっけと考えてしまう。少なくともこんなふうにいきり勃った下半身を押しつけられるような意味ではなかったはずだ。まったく、本当に気持ちが悪い。
(でも、本当に気色が悪いのは、こんなことでもしないと弟を守れないわたしの方だ)
わたしひとりなら、いつ死んだってよかった。生きている意味も価値もわたしにはよくわからない。楽しいことだってなにもない。
だけどひとつだけ、ひとつだけ、大切にしているものがあった。
「……………サリエルを、このまま大事に育ててくれるなら…」
わたし、行きます。何処へでも。
そう答えると、司祭は何度も頷いて、そうしてまた腰を動かしはじめた。
善良で、人望に厚く、見た目も清潔な好人物。
それがみなの知るところの司祭様だ。でもそれはもうどうでもいい。弟にとって彼が善良な司祭のままでいてくれるなら、わたしはそれ以上は何も望まない。
「ああ、マリエーヌ、…………聖女様、聖女様……ッ」
何度も腰を打ちつけられ、何度も汚される。でももう何も感じない。こんな一方的な行為に、意味なんてない。
わたしはいつだって、あの女の代わりとしてしか求められないのだから。
10
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる