聖女様は堕落しました

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わたしとそっくり同じ顔をした、あの女が死んだ。




「優秀で善良な者たちから先に死んでいく。皇都には呪いがかかっているのかもしれないな」


だとしたら、わたしは随分と長生きが出来そうだと、そう思った。
わたしは善良でもないし、頭も悪い。だからしぶとく今も生きている。


「マリエーヌ、お前は聖女様に瓜二つだ。聖女様に懸想した者たちは、こぞってお前を抱きにここへ訪れただろう」


だがそれも今日で終わりだ、と目の前の司祭は腰を突き動かしながら上擦った声をあげる。
抱く時にはいつも身につけさせられていた純白のレースが乱暴に引き裂かれる。なにが聖職者だ。本物の聖女様に対してもこんなふうにしたいとどうせ妄想していたのだろう。汚らわしい、おぞましい。


「お前は皇都に連れて行く。名残惜しいが、こうしてお前を抱くのも今日が終いだ。マリエーヌ、お前はこれから聖女様の代わりとして生きるのだ」


うっ、と呻いて司祭はわたしの中に精を吐き出す。そのままべろべろと顔中を舐めまわしながら自分がいかに聖女様を敬愛していたかを切々と語るので、わたしはうんざりしてしまった。敬愛っていったいどういう意味だったっけと考えてしまう。少なくともこんなふうにいきり勃った下半身を押しつけられるような意味ではなかったはずだ。まったく、本当に気持ちが悪い。



(でも、本当に気色が悪いのは、こんなことでもしないと弟を守れないわたしの方だ)


わたしひとりなら、いつ死んだってよかった。生きている意味も価値もわたしにはよくわからない。楽しいことだってなにもない。

だけどひとつだけ、ひとつだけ、大切にしているものがあった。




「……………サリエルを、このまま大事に育ててくれるなら…」


わたし、行きます。何処へでも。

そう答えると、司祭は何度も頷いて、そうしてまた腰を動かしはじめた。
善良で、人望に厚く、見た目も清潔な好人物。
それがみなの知るところの司祭様だ。でもそれはもうどうでもいい。弟にとって彼が善良な司祭のままでいてくれるなら、わたしはそれ以上は何も望まない。


「ああ、マリエーヌ、…………聖女様、聖女様……ッ」


何度も腰を打ちつけられ、何度も汚される。でももう何も感じない。こんな一方的な行為に、意味なんてない。




わたしはいつだって、あの女の代わりとしてしか求められないのだから。
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