27 / 37
忠義
しおりを挟む
物語の中では簡単に人を好きになるし、簡単に他人に好意を持たれる。
そのことになんの違和感も覚えなかったし、物語の中のキャラクターたちはそもそもみんな、魅力的だったから
だから、簡単に好意を持ったり持たれたりすることにも無頓着で、それが当然のことのように感じていたのかもしれない。
(…………でも実際、自分がこうなってみると、違和感ばかりだ)
サイラスの綺麗な瞳をじっと見つめる。その眼差しは優しくて、充希に対する好意に溢れている。
けれどその好意の根底には、聖女という役割がある。サイラスの好意の根源は、何処まで行ってもそれに尽きる。
そしてそれは、ダリウスとて同じことなのだ。
「そんなに見つめられると、鼓動が早くなってしまいます」
サイラスは充希の頬に手を伸ばし、伸びた髪を一房掴む。そのままそれに口づけて、続きを乞うように顔を傾ける。
サイラスは充希を最後まで抱かない。けれどこうして戯れに触れてくる。キスしたり身体を触ったり、舐めたり吸ったりいやらしいこともそれなりにしてくる。
(けどそれも、私が聖女で、彼が魔障に侵されているから…)
そう、勘違いしてはいけない。
この行為の底にあるのはいつだってそれだ。だから常にこんなにも不安なのだろう。
(与えられる刺激と甘い態度にこのまま溺れたら、きっといつか後悔する)
わかっている。頭では、理性では充分過ぎるほど理解している。
それでももう充希はサイラスのくちづけを拒めないし、ダリウスに抱かれる喜びを隠し通せない。
それがとても怖いことであるのは自覚している。けれどもう、駄目なのだ。
(身体がもう、熱を求めてる)
ついさっきまで、あれほど激しく抱かれていても、サイラスに少し触れられただけでこんなにも身体が反応している。
怖い身体だ。どんどん抑えがきかなくなっている。触れられればすぐに濡れ、快楽で思考がままならなくなる。
(私、本当に、ダメになっちゃったなぁ)
こんな奴、物語のヒロインになんて全然相応しくないだろう。
「触れても構いませんか?」
「………………」
吐息のかかる距離で囁かれ、充希は小さく頷いてみせる。
答えなんてわかりきっているくせに、サイラスはいつも充希にそう聞いてくる。嫌がることはしない、それはそうなのだろうけれど、きっと彼は充希が決して嫌がらないことを知っているに違いないのだ。
(ずるい、なぁ)
それでも最後までしないのだから、たいした忠誠心である。
なんてことは、決して口に出して言ったりはしないのだけど。
そのことになんの違和感も覚えなかったし、物語の中のキャラクターたちはそもそもみんな、魅力的だったから
だから、簡単に好意を持ったり持たれたりすることにも無頓着で、それが当然のことのように感じていたのかもしれない。
(…………でも実際、自分がこうなってみると、違和感ばかりだ)
サイラスの綺麗な瞳をじっと見つめる。その眼差しは優しくて、充希に対する好意に溢れている。
けれどその好意の根底には、聖女という役割がある。サイラスの好意の根源は、何処まで行ってもそれに尽きる。
そしてそれは、ダリウスとて同じことなのだ。
「そんなに見つめられると、鼓動が早くなってしまいます」
サイラスは充希の頬に手を伸ばし、伸びた髪を一房掴む。そのままそれに口づけて、続きを乞うように顔を傾ける。
サイラスは充希を最後まで抱かない。けれどこうして戯れに触れてくる。キスしたり身体を触ったり、舐めたり吸ったりいやらしいこともそれなりにしてくる。
(けどそれも、私が聖女で、彼が魔障に侵されているから…)
そう、勘違いしてはいけない。
この行為の底にあるのはいつだってそれだ。だから常にこんなにも不安なのだろう。
(与えられる刺激と甘い態度にこのまま溺れたら、きっといつか後悔する)
わかっている。頭では、理性では充分過ぎるほど理解している。
それでももう充希はサイラスのくちづけを拒めないし、ダリウスに抱かれる喜びを隠し通せない。
それがとても怖いことであるのは自覚している。けれどもう、駄目なのだ。
(身体がもう、熱を求めてる)
ついさっきまで、あれほど激しく抱かれていても、サイラスに少し触れられただけでこんなにも身体が反応している。
怖い身体だ。どんどん抑えがきかなくなっている。触れられればすぐに濡れ、快楽で思考がままならなくなる。
(私、本当に、ダメになっちゃったなぁ)
こんな奴、物語のヒロインになんて全然相応しくないだろう。
「触れても構いませんか?」
「………………」
吐息のかかる距離で囁かれ、充希は小さく頷いてみせる。
答えなんてわかりきっているくせに、サイラスはいつも充希にそう聞いてくる。嫌がることはしない、それはそうなのだろうけれど、きっと彼は充希が決して嫌がらないことを知っているに違いないのだ。
(ずるい、なぁ)
それでも最後までしないのだから、たいした忠誠心である。
なんてことは、決して口に出して言ったりはしないのだけど。
114
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる