傾国の聖女

文字の大きさ
上 下
12 / 37

好感

しおりを挟む
「噂に違わず、可愛らしい顔をしているな」

まじまじと至近距離で見つめられ、直球で褒められる。
社交辞令とわかっていても、充希は途端に恥ずかしさを覚えた。

「そ、んな…たいそうなものでは…」
「それに、随分綺麗な肌だな。月明かりのせいか、余計に艶かしく…」

そこまで言って、男はしまった、という顔をする。弾かれたように充希との距離を取ると、彼はソファの端へと座り直した。

「勝手に触って申し訳なかった。聖女様には指一本触れるなとの御達しだったのに」
「え?」
「サイラスから聞いてないか?聖女様がよいと言うまで、誰もお渡りはせぬようにと言付かっている」
「お渡り…」

って、あれだろうか。昔でいう将軍とかが大奥に行って性行為をするっていう意味の…

「本当に、初心なんだな」

意味に気づいて赤面してしまった充希をまじまじと眺めて、オスカーと名乗った青年は珍しいものを見つけた時のような反応を示す。
何がそんなに物珍しいのか、彼はソファの端から顎に指をかけて、何かを考え込むような仕草のままうーんと唸り声をあげ続けている。

「聖女なんて言うから、どんな淫乱女がきたかと思っていたが、これはなかなか予想外な子が召喚されたもんだ」
「いっ、いんらんっ!?」
「ああ、聖女の役割はサイラスから聞いただろう?もう陛下の相手もしたと聞いたぞ」
「そっ、それはっ、」

そうだけど……と、充希はしおしおと項垂れる。
いんらん。かなりのパワーワードである。確かに、確かにそうなんだろうけれど…

(流石にこうもはっきり言われちゃうと、ダメージ大きいなぁ…)

好きでこうなったわけじゃないのに、なんて言い訳にしかならないのだろう。
側から見た評価は、きっとこれが正解なのだ…


見るからに落ち込んでしまった充希を見て、オスカーは失言だったと気付いたのだろう。慌ててフォローするかのようにバシバシと肩を叩かれた。

「だっ、大丈夫だ!お前がみんなが思っているような子じゃないのは見て明らかだし、本当に嫌なら陛下の相手だけしていればいい!」
「……でも、それじゃあ他の魔障にかかった人たちはどうなるんですか?」
「あ、あー……それな…」

先程の勢いはどこへやら、急に意気消沈した様子のオスカーに、充希は首を傾げる。すると、その拍子にオスカーの首の後ろが黒く焦げたように変色している様子が見えた。

「あ、これな」

充希の視線に気付いたのか、オスカーが左手で右のうなじをさする。

「魔障が酷くなると、こうなるんだ。見た目にも醜いだろ?」

だからまあ、治してもらえるなら治して欲しいんだが、とオスカーは口籠る。

「でもま、だからって嫌がってる女の子に無理強いするほど落ちぶれちゃいないし、まだすぐには命に関わるってほどでもないからな」

まあ気にするな、とオスカーはにこりと笑う。
それは人を安心させるような、人懐っこい笑みだった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...