11 / 36
自覚
しおりを挟む
次に目を覚ました時、室内は暗闇に満ちていた。
(夜……?)
重い体を引きずって、半身を起こす。
徐々に視界が慣れてきて、充希は暗闇の中でじっと目を凝らす。
時計の針は、午後の7時頃を指していた。
途端に、ぐう、とお腹が空腹を訴える。
(そういえば、結局朝食は食べられなかったな…)
あの時湯浴みではなく朝食と答えていれば、サイラスとあんなふうにセックスすることもなかったのかもしれない。
(違うか……結局私は、どう足掻いても男の人を求めてしまうようになっているんだろうな…)
その証拠に、目が覚めたばかりだというのにもう体が熱い。なんだか少しずつ、症状が悪化していっているような気がする。
もしかしたら、魔障に侵された者たちと性行為をすることで、体になんらかの影響を及ぼしているのかもしれない。
しらんけど。
行為を重ねれば重ねるほど、性欲が高まっている感覚があった。
感度もあがっていたし、濡れるのも早い。
(理性が飛ぶのも、はやい、)
こんなのはまともじゃないな、と思う。
けれど、初めからまともなことなんてひとつもなかった。
ならもう受け入れてしまうしかない。きっともう、どんなに帰りたいと望んでも、自分は元の世界に戻れることはないのだろうから。
(男の人と、えっちなことをする為だけの聖女、かあ…)
サイラスは、嫌なら拒絶しても構わないと言っていた。けれどあれは嘘だと、充希は思う。
充希の体は、既に男を求めて発情をはじめていた。
こんな状態では、きっといつか自分から相手をねだってしまう日がくるだろう。聖女が聞いてあきれる。こんなのはただの呪いである。
「どうして、こんなことになっちゃったんだろう…」
何故、自分でなければならなかったのか。
いったい、自分が何をしたっていうのか?
泣いても何も解決しないのに、勝手に涙があふれてきてしまう。
ああ、イケメンとえっちする夢だ、ラッキーなんて呑気に考えていた頃の自分を殴りたい。
あのくらいお気楽な調子でいられたなら、今のこのどうしようもない状況も、ポジティブに変換出来たのかもしれないけれど…
流石にまだ、そこまで振り切れそうになかった。
そんなことを考えていると、控えめに部屋の扉がノックされた。
充希はその音に、思わずビクッと過剰反応してしまう。
その拍子に、ベッドサイドに置いてあった水差しを手にひっかけて倒してしまった。
カシャン!というガラスの割れた音と殆ど同時に、慌てたように扉が開かれる。
入ってきたのは長身のかっちりとした制服で身を固めた、赤い髪が印象的な男性だった。
サイラスとはまた趣きの違う、こちらは野生みあふれるイケメンである。
後ろ髪をひとつにしばっており、前から見ると短髪にも見える。足早に近づいてきたその人は割れた水差しを見つけると、充希に向かって「怪我はないか?」と第一声で聞いてきた。
「あ…りません」
「そうか、良かった。破片が飛んでいると危険だから、場所を移そう」
「えっ、わわっ、」
言うなり、男は充希を抱き抱えると、ソファの上に充希をそっと降ろした。
なんて力強さだろう、と充希は目を見張る。こんなに軽々と抱きあげられるほど、充希の体重は軽くないはずだ。
「ん?どうした?」
「力もち、なんだなって…」
「ええ?」
思わずそう口にすると、男は一瞬怪訝そうな顔をして、次の瞬間思い切り破顔した。
「ふははっ、女の子ひとり持ち上げただけでそんなこと言われるなんて、思ってもみなかったな」
男は豪快に笑うと、充希の顔を覗きこむ。
その瞳の色は、夜の闇に溶けそうな暗紫色をしていた。
(夜……?)
重い体を引きずって、半身を起こす。
徐々に視界が慣れてきて、充希は暗闇の中でじっと目を凝らす。
時計の針は、午後の7時頃を指していた。
途端に、ぐう、とお腹が空腹を訴える。
(そういえば、結局朝食は食べられなかったな…)
あの時湯浴みではなく朝食と答えていれば、サイラスとあんなふうにセックスすることもなかったのかもしれない。
(違うか……結局私は、どう足掻いても男の人を求めてしまうようになっているんだろうな…)
その証拠に、目が覚めたばかりだというのにもう体が熱い。なんだか少しずつ、症状が悪化していっているような気がする。
もしかしたら、魔障に侵された者たちと性行為をすることで、体になんらかの影響を及ぼしているのかもしれない。
しらんけど。
行為を重ねれば重ねるほど、性欲が高まっている感覚があった。
感度もあがっていたし、濡れるのも早い。
(理性が飛ぶのも、はやい、)
こんなのはまともじゃないな、と思う。
けれど、初めからまともなことなんてひとつもなかった。
ならもう受け入れてしまうしかない。きっともう、どんなに帰りたいと望んでも、自分は元の世界に戻れることはないのだろうから。
(男の人と、えっちなことをする為だけの聖女、かあ…)
サイラスは、嫌なら拒絶しても構わないと言っていた。けれどあれは嘘だと、充希は思う。
充希の体は、既に男を求めて発情をはじめていた。
こんな状態では、きっといつか自分から相手をねだってしまう日がくるだろう。聖女が聞いてあきれる。こんなのはただの呪いである。
「どうして、こんなことになっちゃったんだろう…」
何故、自分でなければならなかったのか。
いったい、自分が何をしたっていうのか?
泣いても何も解決しないのに、勝手に涙があふれてきてしまう。
ああ、イケメンとえっちする夢だ、ラッキーなんて呑気に考えていた頃の自分を殴りたい。
あのくらいお気楽な調子でいられたなら、今のこのどうしようもない状況も、ポジティブに変換出来たのかもしれないけれど…
流石にまだ、そこまで振り切れそうになかった。
そんなことを考えていると、控えめに部屋の扉がノックされた。
充希はその音に、思わずビクッと過剰反応してしまう。
その拍子に、ベッドサイドに置いてあった水差しを手にひっかけて倒してしまった。
カシャン!というガラスの割れた音と殆ど同時に、慌てたように扉が開かれる。
入ってきたのは長身のかっちりとした制服で身を固めた、赤い髪が印象的な男性だった。
サイラスとはまた趣きの違う、こちらは野生みあふれるイケメンである。
後ろ髪をひとつにしばっており、前から見ると短髪にも見える。足早に近づいてきたその人は割れた水差しを見つけると、充希に向かって「怪我はないか?」と第一声で聞いてきた。
「あ…りません」
「そうか、良かった。破片が飛んでいると危険だから、場所を移そう」
「えっ、わわっ、」
言うなり、男は充希を抱き抱えると、ソファの上に充希をそっと降ろした。
なんて力強さだろう、と充希は目を見張る。こんなに軽々と抱きあげられるほど、充希の体重は軽くないはずだ。
「ん?どうした?」
「力もち、なんだなって…」
「ええ?」
思わずそう口にすると、男は一瞬怪訝そうな顔をして、次の瞬間思い切り破顔した。
「ふははっ、女の子ひとり持ち上げただけでそんなこと言われるなんて、思ってもみなかったな」
男は豪快に笑うと、充希の顔を覗きこむ。
その瞳の色は、夜の闇に溶けそうな暗紫色をしていた。
37
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる