傾国の聖女

自失

「ああ……このままもう一度突き上げたいのですが……よろしいでしょうか？」
「え？……でも、もう充分…」
「本当に、充分ですか？」
「あ、ンッ」

繋がったまま耳朶に舌を這わされ、びくんと体が跳ねあがる。
そのままサイラスに唇を吸われて、舌を誘い出されるように甘くくちづけられた。

「ん、ふぅっ、」
「もっと、舌を出して…」
「んん、……あ、ん…」

ちゅぱ、じゅるっ、と唾液の絡まる音が部屋中に響き渡る。舌を吸われて甘噛みされ、サイラスの長い舌に歯列をなぞられていると、また体の奥から男を欲しがる粘液がとろとろとあふれ出す感触がした。

「キスがお好きですか？」
「わ、……かんな、…い」
「くちづけるたび、聖女様の中がうねって私のものを甘く締めつけてきますよ？聖女様の御体は、とても敏感で正直ですね」
「も、言わなくて、いいってばぁ…！」

言われなくてもわかっている、と充希は羞恥で泣き出してしまいそうになる。
自分だってこんなのはおかしいと思ってる。いくら美形だからって、ほぼ初対面のような男とめちゃくちゃにセックスして、してもしてもし足りないなんて。

「変なの…！私の体、ずっとおかしいの…！」

ずっと熱に侵されたように体が熱い。頭がボーっとして、思考がまとまらない。
肌に触れるどんな刺激も全部快感にすり替わってしまっている気がするのだ。こんなのはおかしいとわかっているのに、触られると気持ちよくてたまらなくなる。

「聖女って、いったいなんなのよ…」

こんなの、ただ男に抱かれるための体である。
私の知ってる自分の体じゃないと、充希はとうとう子供のように声をあげて泣きはじめてしまった。


「えっ、あ──ッ！！」

唐突に、サイラスが律動を再開した。繋がったところからグチュグチュと卑猥な音がひっきりなしに聞こえてくる。

（こんな、まだ話の途中、だったのに…！）

酷い、と充希は思う。けれど心と体はやはりバラバラだ。
浅いところをズリズリと擦られる、そのあまりの気持ち良さに思考が途切れた。そのまま胸を揉みしだかれ、乳首を吸われて、充希は涙をこぼしながら甘い声をあげ続ける。

「あん！イイっ、気持ちいいっ！」
「……難しいことは、考えなくていいのです。聖女様は、ただ私共に抱かれて、気持ち良くなって頂ければ、それでいいのです」
「はぁっ、イク！またイッちゃう…！」

サイラスの暴言ともとれるような台詞に、けれど反応することも出来ない。
先程まで泣いていたことも忘れ、サイラスのピストンに合わせて淫らに喘ぎ、体を何度も痙攣させ絶頂を迎える。
それを何度も何度も繰り返すうち、充希の意識はぷっつりと途絶えた。



「……聖女様は、私共の希望ですから」

涙と涎にまみれて意識を消失させた充希を見下ろしたまま、サイラスはそう告げる。
充希の膣内からまだ充分に硬さのあるペニスを引き抜くと、ゴポッと吐き出した精子と愛液が逆流してきた。
その混ざり合った体液を見つめて、サイラスは笑う。
サイラスもまた、熱に浮かされたような目をして、意識のない充希の顔をいつまでもうっとりと眺め続けたのだった。