傾国の聖女

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(ご奉仕、とは…?)

うまく働かない頭で考える。
つまり…彼が自分に、性的な奉仕をする、ということだろうか?

「あのっ、いいです!そんな、私なんかに気を遣ってもらわなくても…!」
「ああ、言い方が悪かったですね。私たちはあくまで聖女様に情けを乞う立場です。あなたがいなければ私たちは生きられない。ですからあなたに尽くすことこそが私たちの望みであり、喜びなのです」
「……でも、私に選択権なんて、ないですよね?」

充希が思わずそうぽつりと漏らすと、サイラスは一瞬困惑したような、悲しげな顔をした。

「そんなことはありません。陛下をのぞけば、聖女様より上の立場の者はこの国には存在しません。あなたが行為を嫌がるのなら、無理強いすることは誰にも出来ないのです」
「で、でも…それじゃ魔障は…?」
「侵された者は死ぬしかありません。しかし、聖女様が義務として相手をしなければならないのは本来陛下のみです。他の者たちは聖女様の慈悲によってのみ救われる」
「じゃあ、私が相手をしなければ、魔障に侵された人は死ぬしかないってことじゃないですか…」

充希がそう言うと、サイラスは「そうなりますね」と瞼を伏せる。
そんなの、選択肢は無いに等しい。魔障に侵された人がいったいどれだけいるか知らないけれど、その人たちをみすみす見殺しになど、充希には出来そうにない。
かと言って、不特定多数の人を相手に体を投げだすことも恐ろしい。

(ただでさえ、体がふわふわして落ち着かないのに。この上たくさんの人を相手にするだなんて、想像も出来ないよ…)

単純に、怖いと思う。それは身も知らぬ男たちを相手にしなければならないという恐怖心もあるが、それと同じくらいその行為を受け入れてしまうかもしれないと感じている自分自身に対して、であった。

「私、なんだか体がおかしいんです」

涙声になりながら、充希は訴える。サイラスの腕に抱かれながら、彼の碧い瞳をまっすぐに見つめて。

「こんなに感じやすい体じゃなかったのに、今は少し触れられただけで、変な気分になっちゃうんです」

馬鹿みたいな告白だと、自分でも思った。これでは自分が淫乱だと打ち明けているようなものだ。
けれど事実、昨日からの充希はおかしかった。以前の充希はこんなに流されやすくはなかったし、どちらかと言えば性に消極的なタイプだった。
自分から強請ったり、欲しがったりしたことなんてない。セックスで気持ちよくなったことだって、殆どなかったのだ。

それなのに、今は欲しくて欲しくて仕方がない。さっき中をかき混ぜられ、強く擦られた感触がずっと消えない。
もっともっと太くて長いもので、奥を刺激されたいと願ってしまっているのだ。


「聖女様の御体は、そういうものだと聞いております。なので、何も気にする必要はありません。あなたが男を欲しがるのは聖女である所以。むしろ私たちにとっては喜ばしいことです」
「そういうって、つまり…」
「直接的な表現をするなら、濡れやすく感じやすい、男を迎え入れるのに適した御体と聞いております」

事実、あなたと少し触れ合っただけの私でさえ、もうこんな状態ですとサイラスは固くそそり立った下半身を充希に押しつけてくる。

「わかりますか?私があなたをどれほど求めているか」

それでも、あなたが拒否するのなら私はあなたを抱くことはしません、とサイラスは続ける。

「指と舌だけで御奉仕させて頂きます」

聖女さまの望むままに、とサイラスは充希の瞳を覗き込む。
あくまで彼は選択権は充希にあるのだと言いたのだろう。
けれど、こんな状況で、充希に果たしてサイラスを拒絶することなど出来るだろうか?

サイラスに押し付けられた熱は、充希の欲を充分に刺激していた。
このまま舌と指でどれだけイカされたところで、この固い熱を忘れることは出来ないだろう。

(問題の解決なんて、出来そうにない。この先どうしたらいいのかなんて、まるでわからない)

けれど今は、どんな重大な問題さえもどうでもいいと思ってしまう。この熱に浮かされたような状態が聖女たる所以と言うのなら、もう自分は立派な聖女なのかもしれないと充希は思う。

(男を誘惑し、男を欲しがるのがこの国の聖女なの…?)

なんて酷い、と思いながらも、充希はサイラスの首に両腕を絡める。
はじめて自分からキスをして、その先を求めるように唇をひらいた。


「抱いてください…最後まで」

羞恥に震えながらそう懇願すると、サイラスはこれ以上もなく嬉し気に、喉を鳴らして頷いた。
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