傾国の聖女

夢現

耳元で吐息が聞こえる。
運動した後のような浅い呼吸。苦しげな、でもどこか艶っぽくも感じる息の熱さを首筋に感じて、充希はくすぐったさから僅かに身を捩る。

けれど、思ったよりも体が動かない。先程連続でイカされ過ぎたせいか、体が泥をかぶったように重く感じた。


（あ……でもなんだろう、気持ち…いいような…）

さっきまでの快感が尾を引いているのだろうか。股の間からまだとろとろと蜜が溢れている感覚がある。
確かにあれほどの快楽をすぐに忘れることなど出来ないだろう。充希が今まで経験してきたことなど比べるのも烏滸がましい。あれが充希の欲求不満がつくり出した妄想だったとしても、きっとこの先あれ以上に気持ちのいいセックスは体験出来ないだろうと確信してしまう。

（あ、れ……？）

ぬぷっ、と何かが侵入してきた感覚がした。
すぐにお腹いっぱいに長くて太いもので満たされていく。はっ、と思わず浅い呼吸が漏れた。
ものすごい圧迫感だった。けれどすぐにきゅうっと中で締めつけてしまう。反射的に足がピンと伸びて、下半身がぶるりと震えた。

（さっき……最後までしなかったから…）

もしかしたら、続きの夢を見ているのかもしれない、と充希は思った。
だって、こんなに大きいの、簡単にはいるはずない。
こんなに奥まではいったら、きっと痛くて苦しいに決まっている。

（あ…動、く……？）

すごく性急な動きだった。ゴツゴツと膣奥を刺激され、生理的な声が思わず口からこぼれてしまう。
こんなに荒々しく奥を突かれたら痛いに決まっている。なのに、ちっとも苦痛は感じない。むしろ今まで届いたことのなかったはじめての場所をガンガン刺激され、新たな快感に目覚めそうになってしまった。

これは、夢や妄想にしてもなんだか都合が良過ぎる気がする。中イキなんて、充希は正直経験したことがない。

（中でイケるなんて、ファンタジーだと思ってたのに……これ、だめ、なんか…きちゃう……）

うつ伏せで良かった、と充希は思う。奥を穿つたび、ひっきりなしに出る甘い喘ぎ声は全て枕が吸収してくれた。
枕がなければ、今頃酷く下品な嬌声を撒き散らしていたかもしれない。

そのくらい、後ろからのピストンが気持ちよかった。それ以外のことは、何も考えられなかった。
それが誰によるものなのか、誰が背後にいるのかなんて、そんな至極真っ当な疑問にさえ至らないほどに。


（あ、……だめだめ、イッちゃう……！）

充希が達するのとほぼ同時に、中で出される感覚がした。

（射精……なが…い…）

腰を擦りつけられるようにしながら、何度も射精される。
よっぽど溜まっていたのかな、なんて間抜けな感想を抱きながら、充希は夢現のままはじめての中イキの余韻にぶるりと震える。


背後からの熱は、まだ退かない。