傾国の聖女

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幕間(サイラス)

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「よく最後まで抱かなかったな」
「それは一応、わきまえていますから」

はじめては陛下に、私の役目はあくまで確認ですからと、サイラスは微笑する。

「確認ね、……で、どうだった?」
「彼女で間違いありません。その証拠に、ほら見てください」

サイラスは片腕を捲り上げ、その素肌を晒す。その腕からは魔障の痕跡はひとつ残らず消えていた。

「あれほど鉛のように重かった腕が、このとおりです。彼女がいれば、私たちの魔障も取り除かれることでしょう」
「眉唾だと思ってたけど、マジかよ…」
「あなたも後でお相手をしてもらうといいでしょう」
「サイラス、そう言うけどな」

一応俺には婚約者がいるんだぜ、とオスカーは嘆息する。

「ユリアになんて言うんだ?聖女の召喚に成功したから彼女と性交渉させてくれって頼み込むのか?」
「仕方ないでしょう、我々の魔障は聖女様にしか治せないのです。ユリア嬢があなたの命より貞操を重んじるというのなら、あなたは死ぬより他道はないですね」
「そんなあ…」

肩を落とすオスカーを尻目に、サイラスは皇帝の待つ部屋へと向かう。



(さすが、陛下が選んだだけのことはある)

大変可愛らしい方だった、とサイラスは微笑む。
聖女の召喚には莫大な魔力が必要となる。
今のこのライラネル皇国にそこまでの余力は残されていない。

(かなり無謀な召喚だったはず。おそらく陛下の体を蝕む魔障は許容量を越えている…)

一刻も早く聖女による施しを受けてもらわねばならない。
彼女の体液には、魔障を治す力がある。
とりわけ愛液には強い神力を感じた。やはり聖女との性行為こそが確実に魔障を取り除く手段であることは間違いがない。


長期的に魔力を使い続けると、魔障と呼ばれる障りが出る。
そういう言い伝えは確かにあった。けれどここ数百年そういった事象は確認されておらず、近年では迷信とされていた。

だが先の大戦が終局した頃合いを契機に、障りとみられる魔障が突如発生したのである。
魔障に侵されたのはいずれも戦争で多くの功績をあげた者たちだった。おそらくは使った魔力の分だけ障りも大きくなるのだろう。
通常の回復魔法では全く効果が得られず、兵士たちは魔力を使うことを制限された。
幸い大きな戦争も終わったばかりで、国内の治安は安定していた。魔力がなくとも復興は可能である為それほど支障は出ていない。だが、魔障に侵された者たちの苦痛は耐え難いものだった。

まず皮膚が変色する。変色した部分が次第に重くなり、また感覚も鈍くなっていく。
これが心臓まで達すると、命の危険があるとされている。その前に、魔障を治す力のある聖女を召喚しなければならなくなったのだ。


(聖女が彼女で良かった。あの感度の良さなら、問題なくお勤めを果たしてくれるでしょう)

聖女の施しには性行為が必須となる。聖女が快楽を感じれば感じるほど、癒しの力も大きくなるのだと文献には記されていた。

確かに実際本人を確認するまで、サイラスとて半信半疑だった。その為陛下の相手をさせる前に、まず自分がと名乗り出たのだ。

結果、彼女の力は本物だった。性器を挿入せずともあれだけの回復力だ。彼女がいれば陛下の体を蝕む魔障も緩和するに違いない。


「早く、陛下に抱いて頂きましょう」

それしか、この国がこれからも繁栄していく道はないのだから。

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