鏡の前、雨の踊り場

まなぴょん。

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第四編

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 階段を駆け上がって、踊り場を過ぎた辺りから、雨の勢いが増したように思えた。
 教室に繋がる長い廊下を一人で歩きながら、窓の外から聞こえる雨の音に、うっかり耳を塞ぎたい気持ちになる。

 外は暗い雲に覆われて、窓の外から見えるのは、深い青色に染まった世界。

 雨が強くなった。
 その証拠に、廊下の窓に付着している水の粒の量が、さっきよりも多くなっている。

 自分が下校する頃には、きっと雨は弱くなっているだろう。
 朝食を食べながら流し見していたテレビでは、「午後にはすっかり晴れて、太陽が顔を覗かせるでしょう」と気象予報士の綺麗なお姉さんが笑顔をみせていたが、その言葉を鵜呑みにしてしまった自分が少し情けない。
 今にして思えば、朝から空を覆う雲たちは、どう考えたって昼までに全て消えてなくなるほどの量でないことは明白だった。

 はあ、と歩きながらため息をついたとき、先ほど通ってきた階段の踊り場の方から、ガサッという鈍い音がしたような気がした。

 何かが落ちてぶつかった音。
 でも、ただ落ちただけではなくて、何か複数の布のようなものが壁にぶつかったような音にも聞こえた。
 たとえば、そう、レインコートやビニール傘に使われているような、硬いけど、多少の伸縮性があるような、そんな何か。

 その音の正体が気になって、一瞬足を止めると、今度はドンという重々しい音が階段から響いてきた。
 しかもその音は、2回連続で鳴った。

 ガサッ、ドン、ドン。
 この三つの音に、わたしはどうしても法則性が見いだせなかった。
 誰かが階段から足を滑らせて、踊り場に落ちてしまった?
 あるいは落ちたのは人ではなくて、雨具とかカバンとか、誰かの物?

 小さいけれど、確かに階段から響いてきた音がどうしても気になって、わたしは一旦、階段まで戻ってみることにした。

 教室に向かう足を止めて、回れ右。
 わたしは、ゆっくりと、そして静かに階段の方を覗き込んでみる。

 自分の足音をなるべく消して、存在や気配も消して、踊り場の方にそっと目を向ける。

 一瞬、廊下の電球の光が、わたしの腕時計を照らし、わたしの目にきらりとオレンジ色の光が反射した。

 それでふと腕時計に目を落とすと、時刻は14時36分。

 校内放送が流れた時間。
 わたしが先生に呼び出された時間。
 わたしが職員室から離れた時間。

 ちょうど14時36分。

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