ダーとわたしのありそうな話

ChimTam

文字の大きさ
上 下
3 / 7

case,03【沙桜の場合】

しおりを挟む
case,03【沙桜の場合】



「ぁッ……もぉ…いつきたの?」

「さっき…ねぇ?浮かせて?」

「寝てたのに…」

「…シたいでしょ?」

「………ばか」



この男はダーの弟…

正確には弟分ってやつ



「ねぇ?まだ兄貴に連絡してないの?」

「その話はしないで…」

「……俺じゃだめ??」

「うさぎに付き合ってる体力はないよ」

「大切にする…」

「…やめて?」

「……本気なんだけど」

「だから、やめて…わかってるよ、ダーが他に恋人がいるのも」

「でも…すき?」

「………なんでかな?」



この男とのセックスの相性だけなら本当に最高…


ダーは私とはセックスはしない


あの日から…



あれは夏の熱い陽射しがアスファルトに反射して、タイヤも焦がしそうな日だった



『沙桜…ケツ貸して?』

『おしり?』

『お前のケツ良さそだから』

『……本気なの?』

『俺が沙桜にセックスしたいって言ったことある?』

『………ない』

『したいって言うだけ、いいだろ…』



よくない!

なんて言えなかった



『そんなんしたいなら私以外としてよ』

『わかった』



“わかった”っていうひと言で

ダーと私の関係に大きなヒビが入った



その日からダーとは会っていない



「サオ?」

「……もぉ…きっと終わった関係なんだよね…」

「話してみなよ?ケジメはつけとかないと…」

「…フラれたらなぐさめてくれる?」

「サオ…それはできない」

「なぐさめてよ?」

「俺はサオを落とさなきゃいけないのに友達ごっこしてる暇ないよ、ふふ」

「……そっか…」



4日後、私はダーと久しぶりに会う約束をした


待ち合わせの時間は夜8時…
ダーの仕事が終わる時間

会社の前でダーを待ってると…



「ごめん…遅くなった…お腹減ったでしょ?」

「…遅いよ」



なんにも変わらないいつも通りのダー…



「……沙桜??どうしたの?」

「ダー…私はダーのなんなの?」

「沙桜??」

「ごめん…やっぱり帰る」



ダーは私の腕を掴んだ

その瞬間、背中があったかくなった…



「…ごめん……沙桜の気持ちも言いたいことも、全部わかってる」

「じゃぁ…どうして?」

「どうしても沙桜とセックスしたいって言えなかった」

「…ダー??」

「あ、やっぱ…俺ん家行こ?」



タクシーに乗り込み、窓を開けた

都会の喧騒から離れた住宅街



私の手を繋ぐ手は少し汗ばんでて

いつものダーじゃなかった…



久しぶりに入る家に心拍数が上がった

私の知ってる頃のダーの部屋とは一変していた


お酒が…ない?

バーカウンターを造るくらいお酒が大好きだったのに



「……沙桜…ごめんね…」



そう言うとダーは服を脱ぎ始めた

背中からお腹に斜めに貼ってある大きいガーゼ…



「沙桜…見てほしい…セックスできなかった理由」



ガーゼを剥がすと痛々しい傷痕が見えた



「ダー??」

「俺、手術したんだ…転移してたから傷痕が大きくなった」

「……どうして?どうして話してくれなかったの?」



私の頬を親指でなぞった



「泣き顔を見たくなかった…沙桜の笑顔が大好きだから」

「ダー??」

「でも、こうやって連絡来ると嬉しくて逢いたくて……ほんとダメだな」

「ずっと、誰かいるんだと思ってた…」

「知ってる…リキから聞いてる」

「………ごめんなさい」

「俺がリキに頼んだの!沙桜を」

「どうして??」



ちからなくソファにもたれかかって俯いた



「沙桜を閉じ込めたかった…」



えっ?



「リキは沙桜が好きだから、嫌がることはしないってわかってたし…それに俺の部下だから手の届くところにいてくれる」

「……どうして…セックスなんかよりダーと一緒にいたかったよ」

「沙桜を俺が抱きたい…昔みたいに一日中繋がってたい…でも!できないんだ…俺の心臓はもうセックスには耐えられない」

「……ダー?」

「俺の心臓…いつ止まるかわからないんだ…」

「……え……なに言って…る…の?」



視界がボヤけてよく見えない…



「沙桜…最期のセックスをしよう…」



目の前が真っ白になった…



「サオ?サオ??……先生!目が覚めました!」



リキ?

先生?


あれは、やっぱり夢だったんだ……


そうだよね…

セックスなんてするわけないんだもん



でも素敵な夢だったな…



「佐山です…ココがわかりますか?」

「……え…っと……」

「お名前をフルネームでお願いします」

「真宮 沙桜です」

「ココがどこかわかりますか」

「…病院?」

「はい。どこまで覚えてますか?」



覚えて…?



「え…っと…彼氏と待ち合わせをしてて…21日の8時…それから…」



あれは…夢?



「彼の家に行って………ぇっ……まって?!ダーは??」

「サオ…兄貴は亡くなった…」

「リキ……言っていいことと悪いことがあるよ」

「兄貴は俺にサオを頼むって言った…」

「…どうして??だってあれは夢なんじゃ…」

「夢じゃないんだよ……兄貴は最後にサオを抱いた」

「…やだ!やだよ!!」



私は都合のいい夢だと思っていた…



あれからどのくらいの月日が経ったのだろう?
一生分の涙を流したのかもしれない


もう一滴もでない…



「サオ…ご飯食べないと…」

「食べたくない……ぅッ」



なに?気持ち悪い…


ご飯たべてないから??



「サオ!病院いこ!!」

「えっ……どういうこと??」

「ほら!!いくよ!!」



強引すぎる男だな…



薄々気付いてはいたけど…さ

心の準備とか…させてよ…



「ねぇ?サオ…結婚しよ?」

「リキの子じゃないよ?」

「兄貴は最後にサオの心を連れてった…俺は最後の男になるよ」

「ふふ…かっこいいじゃん…ありがとう」

「兄貴に似てる子だったら美形だなぁ…楽しみ!」




~~~END♡
しおりを挟む

処理中です...