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13. 子供時代との決別

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結局、アンドレはこの髪飾りを見ても何も思い出さなかったらしい。

 初めて二人でお祭りに行って、その時にアンドレが買ってくれたおもちゃの、琥珀を模した髪飾り。

 宝石箱の中にそっと入れる。これを返さなくても返してもアンドレにはわからない、ステファニーはそう思った。

 ステファニーは簡素な小箱にブローチや髪飾り、ハンカチ、ウサギの小物などをじっと眺めては入れていく。
 高価ではないが女子の好きそうなもの。毎年聖誕祭に贈られてきたチョコレートの箱も婚約していた年数分用意してあった。

「子供時代と決別しなきゃね」

ステファニー・ノアイユは幼い頃の感傷もその小箱に詰めて、アンドレの部屋に向かった。





 誰もいないアンドレのベッド脳に小箱とチョコレートを置く。誰もいないことはわかっていたのでステファニーは声を出して別れをつけだ。

「さよなら。私は子供なりに婚約者を好きになろうと努力してたんだけど。貴方には届きませんでしたね。マノンおばさまに聞いたわ。これ、全部侍従が選んだものだって。毎年同じチョコレートに名前の署名だけのカード。……貴方は鼻で笑う程度に最低な男ですわ」

ステファニーは本音を吐き出すと泣きそうな顔を引き締める。一瞬、ドアを思い切り閉めたい衝動に駆られたが、スゥッと息を吸いそっと扉を閉めた。



「おじさま、アンドレから贈られてた誕生日のプレゼントと聖誕祭のプレゼント返しました」

ジョフロアは頷く。

「よくやった。これでノアイユもペル=イルもあいつとの縁が切れた」

「侍従が選んだプレゼントと名前だけのカード。バカにしてますわね」

ステファニーの言葉にオディロンはにっこり笑う。

「僕はそれすらしなかったからね。男はその程度に馬鹿なのさ」

 ジョフロアがやり返す。

「同じにしないでいただきたい。私は奥方一筋だ」

ステファニーが加勢する。

「おじ様とリリー様は仲良しですわ」

ステファニーは伯母、母の姉をリリーと名前で呼ぶ。子供の頃に伯母自身にそう躾けられたのだ。

「で、この石の送り主にはステファニーは覚えがない、と」

青い石のついたペンダントをオディロンはプラプラさせている。ステファニーは頷く。

「そんな高価なものをアンドレ様に贈られた事はないし、毎年プレゼントを入れていた小箱にいつのまにか入ってたので」

「ふーむ。僕の魔法では過去認知は不得意なんだよな。闇魔法使いは今は?」

オディロンがジョフロアに訊ねる。

「隣国に潜ってる。多分魅了の石使う時に効果のある薬草の取引を追っかけてる」
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