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赤毛の男

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 「あー、うん」

ディオン様が部下の一人に指示を出した。

「行くのは俺になるかな」

ディオン様は兄様に告げる。

「心当たりがあってね。うちの親戚の赤毛が昔、人に頼まれて女を垂らし込んだことがあると」

深く息を吐きながらディオン様は続ける。

「それも複数人の高位貴族の奥方を、と。ドヌーヴ家の奥方は落ちなかったと笑ってたな。あれは『バルバストル家の奥方は落ちた』って意味を含んでいたのかもしれん。その男は今はうちの南にある別荘というか……一族の療養所があってな、そこにいるはず」

ディオン様はふっと息を吐いた。

「療養所って言ってるが、……一族の問題児をそこに入れて軟禁してるって所だな」

どの一族にも問題児はいるものです。……うちでは伯父様がある意味一番問題なのかも。あの人もっと自信もって堂々としてたらいいのに。母様の兄だけあってルックスも上々だしね。周りにいる男性の中ではかなり私の好みかな。アルフォンス様とはまた違うけども。神経質そうな中年男性ってちょっと好きなんだ。
 父様はいつもにこにこ笑顔が仮面、な人だけども、笑顔のまま怒るから相手はわからない事がおおいらしい。私たち子供は父親に怒られた記憶がない。私は子供の頃から頭の中にいるのは32歳バツイチOLだし、兄様が癇癪起こしたのはベルトラン兄様の件くらいだし。
 二人とも悪さする暇より本や積み木、長じてはパズル類が好きな子供でしたからうるさくすることもほとんどなく。今は一族に問題児というほどの……いたな、エリーゼだ。ま、大公様の元で幸せになったらいいよ。それだけ。
 うちはバルバストルの田舎の屋敷に蟄居の為の家があるのとドヌーヴ家には半地下の貴人牢みたいな部屋がある。豪華だけど外に出られない部屋。父様曰く私の魔力量ならこの部屋から出られるだろうね、だって。

 「多分、そいつで確定だと思う。……するとサマンとそいつのかかわりがあったか、から調べないと」

ディオン様はそう言いながらため息をついた。

「我が母上も調べないとな」

昏い目になる。エリク様や騎士団長はこういう目をすることが想像できない。このほの昏い目は不思議に美しいと感じた。



 兄様と二人、子供用の応接室で座っている。

「なかなか収まりませんね」

私の言葉に兄様が頷いた。

「国を盗ろうとしてたんだから色々広がってるのは仕方ない」

眉間をもみながら兄様は溜息をついた。その手にふわりと蝶が止まりそのまま手紙になる。あの魔道具だ。

「ベルトランからだ」

手紙を読みながら兄様が言う。

「サラは1週間ほどあちらで過ごすらしい。一番チビがぐずっちゃってしょうがないんだっと。陛下から妾妃が居なくなったから母様を公妾にしたいって父様と伯父上に言って来てるらしい。……あの陛下おっさん、こりねぇな。正妃様が出張ってるって」

「あー、……ふぅ」

私は言葉が出なかった。まだ後始末が全部終わってないのに。能天気だなぁ、あの陛下おっさん

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