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赤毛の令嬢

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 「え?」

赤毛の令嬢は戸惑っている。

「私がそれだけエイドリアンと一緒にいるのだからこんなことをしたらエイドリアンの耳に入れる事考えられませんか?」

お昼休みにご飯食べないとエイドリアン達に捕まって放課後にお茶と称して詰め込まれるから早く終わらせたいのだけど…。

「は?」

「この事、エイドリアンに全部報告します。場合によれば殿下にも」

赤毛の令嬢は眉と目を吊り上げた。

「告げ口なんで卑怯ですわ」

…呼び出して罵倒も充分悪しき行いだろうに。女神様に嫌がられるゾ。と、顔に出たかな、これ。

「卑怯だわ!卑怯だわ!卑怯だわ!」

そんなに連呼しなくても…。令嬢は自分で自分を激昂させた挙句、何度も私を平手で打ちます。そして、それでも足りなかったのか足と拳が出てきました…。ずいぶん暴力に慣れた人だな、この人。

「キャスリーン様っ」

驚いた事に割って入ったのはもう一つの公爵家のご令嬢でした。そう、王妃様の仮のご実家です。アボット家の遠縁の家だそうですが、アボット家はこちらとはあまり関わり合いを持ってなかったとか。
領地的にはミドルトンの領地とは王都を挟んだ反対側にある、ウエスト公爵家の令嬢でマリーベル・ウエスト嬢だ。アボット家は領地的な問題と何代か前の当主がその当時の勢力争いで、我が家についてから遠縁のウエスト家とは疎遠になった、と王妃教育初等の貴族史の授業でやったとこだ。

マリーベル様は手に持っていた扇子で赤毛の令嬢の頬を打ちつける。

「いやぁ、ひどぉい」

令嬢は泣き崩れるがどっちが酷いんだろうか…。

「びっくりしましたね?」

マリーベル様は金の髪を揺らし、えっ、え?えええー?なにこれ、軽々と抱き上げられてるんですけど?!

「マリーベル様?!」

「大人しくなさい。あちこち青痣になりかけてめます」

殿下が走り寄ってきて。マリーベル様はテキパキと

「殿下、お昼を食べてる小部屋を開けてください。キャスリーン様を治療します。ほら、さっさっと動く!」

「あ、はい」



 マリーベル様に抱き上げられたまま最上階の小部屋に連れてこられた。その間に女子生徒の『きゃあー』という黄色い声をどれだけ聞いたか。なんだか、殿下やエイドリアンよりも女子生徒の熱い黄色い声を聞いた気がする…。いや、気のせいじゃない。聞いたんだよ。
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