令嬢キャスリーンの困惑 【完結】

あくの

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 「父上は宰相にコンプレックスあるからなぁ」

アボットの家には過去に何人もの、王家の妾(側妃にはせず通ってたりする女性)の子が婿や嫁として入っていて王族と結婚すると銀髪翠目が出るのだとか。(殿下曰く、領地はそこそこ豊かで、貴族社会の中では目立ちもせず、王都からも遠からず近からずで王族から見れば都合が良いのだ、とか)

「父上が王妃の目を盗んで母上を恋人にしたのもその辺りが絡んでるらしい」

と殿下。そもそもあの三貴婦人は学院時代から仲が良くて、情報がつーつーだとか。表向きは側妃様と王妃様の仲は今ひとつということになってるらしいけど。それも陛下に対する牽制だとか。
 側妃様が陛下の子を産んだのもコンプレックスで煮えてるのを王妃様が側妃様に相談して王宮に側妃様が通ってた時期にまとめた話のようで…。大人ってよくわからない…。

「王妃様と母上が仲悪くて自分を取り合ってると思うのも陛下のプライドを満足させるみたいで」

呆れた男…。と、口はつぐまないとね。災いのもとだもの。

「はぁ?ガキか?」

エイドリアン…、陛下相手でも遠慮しないのね。

「まごうことなき、ね。実務面は宰相とキャスの父上頼りだし。女あしらいはそこそこ上手いらしいけど」

「あしらわれるのが、の間違いだろ」

「王妃様が妻で側妃が母上で。あの二人に囲まれてニヘニヘしてられるのはかなり心臓は強いよな」

殿下の言葉にエイドリアンも頷く。

「うちの親父相手に母さんを公妾にって言えるんだもんな。あの人愛妻家で有名なのに」

エレインと私は頭を抱えている。

「あー、下手したらキャス、お前も愛妾に狙われてるかもな。今、王家の色の女性ってキャスだけだから」

反射的に

「やだよ。父親みたいな年齢のおっさんとか」

言っちゃった…。

「仮にも陛下でも?」

エイドリアンの声が震えている。こいつ、笑ってやがる。

「私は市井の平凡な司書としてでも生きるのが希望なので」

「はっ」

殿下が鼻で笑う。

「無理だよ。その髪と目の色の組み合わせ、王家の血筋以外に出た記録ないんだよ」

「髪、染めたら良いし」

「染まらないよ」

殿下が、キッパリと言う。

「俺がどれだけこの髪色隠すために頑張ったか…。我々の血が薬品を受け付けないのはしってる、かな?」

私は黙って話を聞く。

「王家の血が入ってるものは子供の時から聞いてるはずだが…。エイドリアンも知ってるな?」

エイドリアンが頷く。エレインも頷いている。

「本当に公爵様あのおっさん、家の事してなかったの丸バレじゃないか」

後でわかったのですが、父親自身がその事を覚えてなかった、と言う顛末でした。侯爵様は

『やっぱりな』

と呆れかつ笑い、私は叔母さまから公爵家の話を聞く事になったのです。

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