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再びアキラの章
24 交渉のテーブルに着くには
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この国の近衛の一番下っ端らしき男がそっと寄ってきて頼む。
「その、珈琲を売ってもらえないだろうか。……カップも一緒に」
くれ、と言わないだけ上等か、そんなことを思いながらアキラは適性な価格で相手方分の珈琲を売った。ちらりと見ているとその近衛は暖かい珈琲を嬉しそうに飲んでいる。ヴィーは苦いだのなんだのと言っている。
「氷砂糖でいいか?口に含んで飲め」
フランシスがヴィーの口に白い欠片を入れる。狼国の風習で紅茶を氷砂糖の欠片を口に含みながら飲むのだ。ただし、市民の風習だ。フランシスはかなり庶民に通じてる、とアキラは思ったが、そういやマーガレット女王も良く知ってたなと思い返した。
「ではボンさん、お話良いでしょうか」
二つのパーティの間にボンとフラウンつが立つ。はっとしてフランシスが立ち上がり話に向かう。
「我々の方が偉いのだからこっちに越させればよい」
ヴィーが口を出す。ボンはさすがに高位貴族令息であった。
「交渉のテーブルにすら載る気がないと思っていいのかな?」
フランシスは顔が真っ赤だった。
「これは対等の交渉ではないと理解できてますか?其方がこちらにお願いをする、そうい
うことなのですが……」
ボンの心の中の『それ渡ってる?わかってないよね?無能なのかな?』という声はなんとなく王子達も察した。
「……うちのメンバーが済まない」
「それで済むと思いますか?私達は侮辱されたままですか?貴方が頭を下げればいいというものではありません。あの女性が本当に理解して頭を下げるまで私たちは交渉のテーブルに着きません」
ボンは北の侯爵そっくりの表情でフランシスに告げる。
「この階層のフォローはする、と言ったのでします。その間にあの女性が本当に理解して謝らなければ以降は我々は関わらない、という事で。次がラストチャンスですよ」
フランシスはぐうの音も無かった。
「よくやった」
小さな声でアキラがボンを褒める。ヴィーという王女に首輪を着けねばこのダンジョンで行動するのは危険だ、ということにアキラ達は気が付いていた。
「冒険者クラブだけならなんとでもなるし鍛えながら動いてもらうけど。あの子は他人が嫌になる事を選んで言うしする。加虐性が強いタイプだな」
アキラはふっと肩の力を抜く。鋭くなった聴覚は王子達のパーティの声を拾う。
「なんであんなことを言った」
フランシスが怒りを抑えてヴィーを詰問している。
「私たちの方が偉いのだから」
「彼らは我々の臣民ではない、あのボンという子供、どうみても貴族の子供だ。他国の貴族と事を構えるのは得策ではないだろう?……俺達が探しているのがこの国の印璽だとバレてもいいのか?」
「だから私たちだけでいけばいいじゃない。フランシスとルディはD級だけど他のみんなはC級でしょ?だったらこんなところでぐずぐずしてないでとっとと先へあいつらより先に行きましょう。あんな貧乏人達に大きな顔されたくない」
フランシスはきつい声を出す。
「俺とルディと近衛だけで進んでお前たちはおいていくって手もある」
さらにフランシスは言い募る。
「あっちのパーティに全部ぶちまけて手助けを願う方が効率が良いし安全だ。守秘契約を結べばここでのことは漏れないし俺達には美味しい事だけなんだが。それにはヴィーの真摯な謝罪と理解が必要だ」
ヴィーは顔中体中で嫌だと伝えている。
「その、珈琲を売ってもらえないだろうか。……カップも一緒に」
くれ、と言わないだけ上等か、そんなことを思いながらアキラは適性な価格で相手方分の珈琲を売った。ちらりと見ているとその近衛は暖かい珈琲を嬉しそうに飲んでいる。ヴィーは苦いだのなんだのと言っている。
「氷砂糖でいいか?口に含んで飲め」
フランシスがヴィーの口に白い欠片を入れる。狼国の風習で紅茶を氷砂糖の欠片を口に含みながら飲むのだ。ただし、市民の風習だ。フランシスはかなり庶民に通じてる、とアキラは思ったが、そういやマーガレット女王も良く知ってたなと思い返した。
「ではボンさん、お話良いでしょうか」
二つのパーティの間にボンとフラウンつが立つ。はっとしてフランシスが立ち上がり話に向かう。
「我々の方が偉いのだからこっちに越させればよい」
ヴィーが口を出す。ボンはさすがに高位貴族令息であった。
「交渉のテーブルにすら載る気がないと思っていいのかな?」
フランシスは顔が真っ赤だった。
「これは対等の交渉ではないと理解できてますか?其方がこちらにお願いをする、そうい
うことなのですが……」
ボンの心の中の『それ渡ってる?わかってないよね?無能なのかな?』という声はなんとなく王子達も察した。
「……うちのメンバーが済まない」
「それで済むと思いますか?私達は侮辱されたままですか?貴方が頭を下げればいいというものではありません。あの女性が本当に理解して頭を下げるまで私たちは交渉のテーブルに着きません」
ボンは北の侯爵そっくりの表情でフランシスに告げる。
「この階層のフォローはする、と言ったのでします。その間にあの女性が本当に理解して謝らなければ以降は我々は関わらない、という事で。次がラストチャンスですよ」
フランシスはぐうの音も無かった。
「よくやった」
小さな声でアキラがボンを褒める。ヴィーという王女に首輪を着けねばこのダンジョンで行動するのは危険だ、ということにアキラ達は気が付いていた。
「冒険者クラブだけならなんとでもなるし鍛えながら動いてもらうけど。あの子は他人が嫌になる事を選んで言うしする。加虐性が強いタイプだな」
アキラはふっと肩の力を抜く。鋭くなった聴覚は王子達のパーティの声を拾う。
「なんであんなことを言った」
フランシスが怒りを抑えてヴィーを詰問している。
「私たちの方が偉いのだから」
「彼らは我々の臣民ではない、あのボンという子供、どうみても貴族の子供だ。他国の貴族と事を構えるのは得策ではないだろう?……俺達が探しているのがこの国の印璽だとバレてもいいのか?」
「だから私たちだけでいけばいいじゃない。フランシスとルディはD級だけど他のみんなはC級でしょ?だったらこんなところでぐずぐずしてないでとっとと先へあいつらより先に行きましょう。あんな貧乏人達に大きな顔されたくない」
フランシスはきつい声を出す。
「俺とルディと近衛だけで進んでお前たちはおいていくって手もある」
さらにフランシスは言い募る。
「あっちのパーティに全部ぶちまけて手助けを願う方が効率が良いし安全だ。守秘契約を結べばここでのことは漏れないし俺達には美味しい事だけなんだが。それにはヴィーの真摯な謝罪と理解が必要だ」
ヴィーは顔中体中で嫌だと伝えている。
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