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再びアキラの章
15 ダンジョン第一階層 初心者向け 1
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角ウサギの亜種で角が宝石でできている宝石ウサギがこのフロアのメインのモンスターだった。倒すとドロップは小粒の宝石で拾う人も少ない。それを狙って第一層には貧民街の子供が出入りしていた。ここでノルマの量の石を拾う事で日々の食事と宿を手に入れている。ボンに対してフランツが諭している。
「施すのは簡単です。ただ、あの子達はこれを『仕事』として請け負っているのです。我々が一日だけ良い事をした、と気分を良くする為に施すのはあの方達を馬鹿にしているという風な受け取り方をされる可能性だってあります」
フランツはそこでちょっと息を継いだ。
「その上で我々はこの国の国民ではないので手を出さない方がいいというのは私個人の考えです。恒久的に面倒を見られませんから」
「う……ん」
「昼ごはんの時に振舞ってあげるくらいはいいんじゃないかな」
アキラが用意をしながら外で石をせっせと拾っている少年少女達を見る。ボンの顔が明るくなった。
「じゃ、用意するか」
デヴィッドが床に敷布を敷く。皆で靴を脱いでそこに座りマジックバッグから食料をだした。子供たちが石を拾ってセーフゾーンに入ってくる。今は子供たちとアキラ達の二組だけがセーフゾーンにいた。
「リーダーは誰だ?」
デヴィッドが声をかける。
「俺です」
「昼食は食べたのか?」
「……いえ」
「少し余分に持ってきてるパンとかあるんだけど食べないか?」
少年は逡巡していたが幼い子のきらきらした期待にあふれた目を見て歯を食いしばって頭を下げた。
「お願いします」
「じゃぁこれを」
人数分のパンを渡す。
「それとギルドの前の屋台で頼まれたんだ」
と串焼きを一袋、それにこの国では水よりもポピュラーな果実の果実水がたっぷり入った水差しを渡した。木で作ったコップも人数分デヴィッドが渡す。
「あの……」
「カップは好きにしていいよ。屋台で果実水買うときにカップ持っていたら安くなるんだろ?そういう時に使えばいい」
「ありがとうございます」
少年は頭を下げる。スラム街の子供とは言えそこそこちゃんとした子だなとアキラ達は思った。
暫く待っていたが王子達はたどり着かないのでこの階のボス部屋に近いセーフエリアまで移動することにし、セーフエリア前の道の角ウサギを一掃してから奥に向かう。ボス部屋の当たりは角ウサギより少し強いくらいのスライムや草ウサギがいる。そこでお茶の時間あたりまで待っていたが近衛すら来ていない。レッドが聴力を上げるとやおら立ち上がった。
「ち、あいつら子供らに絡んでやがる。ちょっと行ってくる」
他のメンバーが返事する暇もなくレッドがひとつ前のセーフエリアまで走った。
「なにしてるんじゃー」
レッドの本気の一喝に五月蠅かったヴィー王女が黙った。レッドは子供たちの前に立った。
「何をしている。そこの37番目、妹に道理を教えてないのか?それともこの国の王族は常識を教えてないのか?このダンジョンの慣習を知らんのか?」
「妾が倒したウサギのドロップを盗るからだ」
「子供たちが拾ってるのは他の冒険者が倒したものだろう?この部屋の前のものなら特に」
ヴィーの顔が赤くなり歪む。
「……この女のお付きが二人いるだろう。そこのメイドとそこの執事か。主の常識はどうなっている。なんの躾けもされてない猿と同じだぞ、今のこの娘」
レッドの一喝からやっと近衛や王子達が再起動しはじめた。
「施すのは簡単です。ただ、あの子達はこれを『仕事』として請け負っているのです。我々が一日だけ良い事をした、と気分を良くする為に施すのはあの方達を馬鹿にしているという風な受け取り方をされる可能性だってあります」
フランツはそこでちょっと息を継いだ。
「その上で我々はこの国の国民ではないので手を出さない方がいいというのは私個人の考えです。恒久的に面倒を見られませんから」
「う……ん」
「昼ごはんの時に振舞ってあげるくらいはいいんじゃないかな」
アキラが用意をしながら外で石をせっせと拾っている少年少女達を見る。ボンの顔が明るくなった。
「じゃ、用意するか」
デヴィッドが床に敷布を敷く。皆で靴を脱いでそこに座りマジックバッグから食料をだした。子供たちが石を拾ってセーフゾーンに入ってくる。今は子供たちとアキラ達の二組だけがセーフゾーンにいた。
「リーダーは誰だ?」
デヴィッドが声をかける。
「俺です」
「昼食は食べたのか?」
「……いえ」
「少し余分に持ってきてるパンとかあるんだけど食べないか?」
少年は逡巡していたが幼い子のきらきらした期待にあふれた目を見て歯を食いしばって頭を下げた。
「お願いします」
「じゃぁこれを」
人数分のパンを渡す。
「それとギルドの前の屋台で頼まれたんだ」
と串焼きを一袋、それにこの国では水よりもポピュラーな果実の果実水がたっぷり入った水差しを渡した。木で作ったコップも人数分デヴィッドが渡す。
「あの……」
「カップは好きにしていいよ。屋台で果実水買うときにカップ持っていたら安くなるんだろ?そういう時に使えばいい」
「ありがとうございます」
少年は頭を下げる。スラム街の子供とは言えそこそこちゃんとした子だなとアキラ達は思った。
暫く待っていたが王子達はたどり着かないのでこの階のボス部屋に近いセーフエリアまで移動することにし、セーフエリア前の道の角ウサギを一掃してから奥に向かう。ボス部屋の当たりは角ウサギより少し強いくらいのスライムや草ウサギがいる。そこでお茶の時間あたりまで待っていたが近衛すら来ていない。レッドが聴力を上げるとやおら立ち上がった。
「ち、あいつら子供らに絡んでやがる。ちょっと行ってくる」
他のメンバーが返事する暇もなくレッドがひとつ前のセーフエリアまで走った。
「なにしてるんじゃー」
レッドの本気の一喝に五月蠅かったヴィー王女が黙った。レッドは子供たちの前に立った。
「何をしている。そこの37番目、妹に道理を教えてないのか?それともこの国の王族は常識を教えてないのか?このダンジョンの慣習を知らんのか?」
「妾が倒したウサギのドロップを盗るからだ」
「子供たちが拾ってるのは他の冒険者が倒したものだろう?この部屋の前のものなら特に」
ヴィーの顔が赤くなり歪む。
「……この女のお付きが二人いるだろう。そこのメイドとそこの執事か。主の常識はどうなっている。なんの躾けもされてない猿と同じだぞ、今のこの娘」
レッドの一喝からやっと近衛や王子達が再起動しはじめた。
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