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クランに関わる人間関係

40 狼人国の王女と男 5

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 「さてと、王女さん。調査結果だ出た」

デヴィッドとアキラ、レッド、クロがいる。シルバーは今日はどこかへふらりと出かけて行った。

「はい」

マーガレット王女は妙にこの拠点に馴染んでいた。ユリアーナやエヴァと仲良くやっているようだ。冒険者用のチュニックと革のスパッツなら自分で着替えられるようになっていた。

「騎士団長と女官長が出来上がってる」

「ああ、そう言う事ですか」

王女はさらりと言う。

「騎士団長は第一側妃様の息子で私達兄弟姉妹の一番上でもありますからね。私が居なければ自分が王になれると思ったのでしょう。第一側妃様自身は男爵家の娘なので私が消えたとしても王位は望めません。私が現在は王位継承権第一位ですが次に叔父様、王弟殿下がいます、今、母上のお腹にいる子が銀の狼なら私かこの子が継ぐことになりますし……、騎士団長が王位に着くには何人殺さないといけないか……」

王女は最後の言葉を飲み込んだが、『おバカさんだわ』に類する言葉だったようだ。

「私たちは国内の貴族ですら序列が決まっていますし平民も貴族にならい己たちの間に序列を作ってます。理由は強さの表明です。王家は絶対的に強くなければなりません。その王家が絶対的に信奉するのが銀の狼、狼の最高神なのです」

王女の言葉が続く。

「だから狼に成れる、まずこれが王位継承権を持つ資格なのですが……騎士団長は変身できないので何故己が王位継承権がないのか知りません。変身が起こった時点で狼神様からのお言葉があるので、自分の序列の位置がわかるのです。変身できなければ狼神様のお声は聞けませんし、理解できません。狼が吠えてるだけに聞こえますからね」

王女は笑う。アキラが訊ねる。

「なんで俺達にそう言う話をするんだ?」

「……貴方も私と似たような存在でしょう?何に変わるのかは知りませんが」

アキラは頭を掻いた。

「ま、似てるっちゃ似てるか。デヴィッドどう思う?」

「うん、まぁ、ヒトならざるものではあるか」

王女はくすくす笑った。

「ここはそういう存在を受け入れてくれるのですね。だから私も居心地がいい」

「今更、狼に変身する人間に驚かないか。虎人がいるしな」

「……虎人の王族がいらっしゃるのですか」

「あんたんところにも面倒かけたね」

「うちの国の罪人がすみません。迷惑をかけました」

「ま、それはそれとして。王女さん、どうする?」

「そうですね。とりあえずこちらの王族の外交を仕切ってる方にお会いしたいと思ってます」





 王女はこのままこの国の学園に入学し、狼国内、狼国王宮内が落ち着くまで3年間過ごすのだが、これにアキラとデヴィッドは巻き込まれ今更ながら制服を着て高校生をする羽目に陥るのはまた別のお話である。

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