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クランに関わる人間関係

37 狼人国の王女と男 2

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 「王女様、お名前は?」

「マーガレットと申します」

銀髪の少女を見てグレイは驚愕していた。自国の王女が座っていたからだ。グレイは膝をついて下を見ている。

「悪いが、ここで君の国の序列とかしらん。……話をしにくいからグレイはちゃんと座ってくれ」

「しかし」

グレイが煮え切らないのでレッドは少しいらっとした顔になった。

「良いです。気にせず座ってください」

王女がグレイに声をかける。

「はい」

そういうと王女から離れた場所に座ろうとしたのでレッドはグレイの首根っこを捕まえて話しやすい席に座らされる。



 マーガレット王女は風呂で綺麗になったがグレイの方はルトガーが部屋に入って来た途端クリアをかけまくって綺麗にしたらしい。あげくに

「この家は生活魔法は男がかけてるのか」

と言ったので誰よりも早くエドガーが反応して拳骨を落とした。

「他人にかけてもらって第一声がそれか。ありがとうだろ。そもそも生活魔法は魔力ない人間でも使えるように生活魔法杖があるだろうが」

「なんだ、その生活魔法杖って」

「え?」

「貴族家庭にはないものだ。少なくとも俺は見たことがない」

グレイは尊大に答える。ここには貴族がいないので序列的に自分が一番、だと思ったらしい。

「普段どうしてるんだ?」

ヴァイキーに訊かれてグレイはこたえる。

「それは生活魔法専用のメイドがかける」

「狼国ってヘンだ」

エドガーにそう言われグレイはむっとする。ルトガーが静かに言う。

「あのね、自分の生活の根幹を他人に握られて安逸としてられる神経は見事なものだと思うよ」

ルトガーの皮肉はグレイには今一つ効果はなかったが不愉快な事を言われた、と悟ったようだ。

「じゃ、袋からは出してやるけど逃げられないように魔法封じと位置捕捉の腕輪な」

ヴァイキーは逃げてもだめだ、というはったりを込めたがシルバーがもっと怖い事を言った。

「大丈夫。僕から離れたら頭痛がして動けないようになる術をかけてあるから。一定時間離れると頭痛で死ぬかもね?」

その部屋のソファでだらっと横になったままシルバーは言った。

「げ、えぐい」

魔剣トラヴィスが思わず声を漏らす。

「君も試してみる?」

シルバーはにんまりと口を三日月のような形にして笑う。



 そんな経緯でグレイも清潔になっていた。

「なんでグレイはマーガレット王女の逃走劇に巻き込まれたわけ?」

「……」

王女は容赦なく話す。自分を捕まえていた悪党どもとカードをして有り金を巻き上げられたこと。餌だといってマーガレット王女のはいっていたオリの扉を開けてグレイを投げ込もうとした時に思いっきり体当たりしてオリの扉を壊して、グレイを咥えて走った事。最終的にグレイを乗せて走りながら色んな街で屋台を襲って食べ物を手に入れていた事などを話した。

「じゃ、なんで北でとどまってたの?あそこ屋台とかもないだろ?」
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