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クランに関わる人間関係

32 リザの顛末

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 「アマゾネスへリザを研修にだしたい?」

久しぶりにミヒャエルと会ったアキラは相談を持ち掛けられた。

暴れん坊リザが相変わらずでなぁ」

「年齢的にもな、突っ張りたい年頃だもんな」

「アキラもあんまり変わんないんじゃないの?」

「やー。確実に2つくらいは上だし、俺は反抗期は終わってるから。あのくらいの年齢だとまだ女性としての体は整いきってないから精神的にも不安だろうしね」

「そんなもんかねぇ」

ミヒャエルは首を傾げている。

「ヨアヒムの受け売りだけど、少女が魅力的なのはその不安定な揺らぎがあるから、だとよ」

「それはヨアヒムの趣味じゃん?あの人、不安定で未成熟なものが好きだから」

さすが付き合いが深かっただけミヒャエルはヨアヒムの事がわかっている。

「ま、リザの件は引き受ける、というかアマゾネスに訊いてみる。返事はミヒャエルんところに直接行くようにする」

ミヒャエルが渋い顔をする。

「ん?どうした?」

「俺、あの人たちちょっと苦手なんだよ」

「ああ、……いい種馬候補と思われてるな?うちのルトガーは敷地には入らないらしい。あいつも狙われてる。エドガーは……ギルドで何度か楽しんだみたいだ」

ミヒャエルが驚いている。

「アキラんとこの……狩人だろ?」

「そう。リザが一番とことんやられた奴だな」

前回の試合の日、エドガーはリザでたっぷり遊んだようでリザが隠れる木を選んで落ち着いた所で何度も水鉄砲を当てては死角に入りこむを繰り返したらしい。

「正直あれは痛快だったが……リザがこたえてなかったのがなぁ」

アキラは笑った。

「あの神経の太さは良い冒険者になると思うよ。それとそろそろミッヂ、徐々に仕事させたら?」

「……リザを修行だせたら考える」

「最初はミヒャエルかウリと一緒の狩場監視任務か護衛任務だろうね」

「そうだな。監視しつつ徐々に手綱を緩める、と」

ミヒャエルは頭がいたそうであった。





 「なんで私が」

「役立たずの甘ったれの耳長だからだよ」

狼人のレディという隊長はとにかくリザに厳しかった。同じエルフ族のラウラは『耳長』とだけ呼ばれている。レディと仲良しの副隊長のコルネや蛇人のスージー、ヒト族のサリーは皆名前の呼び捨てだ。ラウラは偶に耳長ラウラと呼ばれている。そうリザはとことんレディに嫌われているようなあつかいだった。

「一人前の仕事が出来るようになってから文句を言う事。他人の半分以下の仕事しかできない内はあつかいは変わらんよ」

確かにリザは半分しか仕事が出来ていない。今の仕事は坑道に増えているネズミの始末だった。狩ったネズミの尻尾を持ち帰り数をチェックされるのだ。

「さて役立たずの甘やかされた甘ったれの耳長さん、ここにきて3日だがまだ人並みの仕事はできないのかね?私とコルネはあんたの半分の時間で倍以上のネズミを狩っている。この差がなにか考えて今日一日仕事をしてご覧」

レディはそう言うとリザをじっと見た後に仕事の開始を告げた。
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