竜の探索者 最大手のクラン、所属条件はクラン主のお眼鏡に叶うかどうかのみ。人種も身分も関係ない。僕らはみんな冒険者

クランに関わる人間関係

30 万聖節の夜にて 4

　夕方までもう１ゲームをし、拠点に戻る。今日は拠点に万聖節の夜のメンバーも拠点に泊まる。万聖節たちはオールが転移で拠点に連れて行った。

「この風呂すげぇな。広いし、綺麗だし」

「サウナは着けてないけどな」

「これだけ水使えるのもすごいな」

「水の魔石で水を生成してるんだ」

「へぇ」


　女子達もきゃいきゃいと風呂に入る。エリーは

「うちにも作りたいなあ、これ」

という。顔見知りのエヴァが拠点を作るときにアキラがこだわって作ったんだと教える。他の拠点にもあるよ、とも。

「工事したところ、あとでアキラに教えてもらおう。万聖節の夜うちで資金が苦しいっていうならクエストこなすまでだわ」

リザはさっさと体を洗って風呂から出る。脱衣所にはハーフエルフらしき女性がいて冷たいレモネードを手渡してくれた。

「貴女、ここの下働きなの？」

「夫がここで働いてますので私もお手伝いを」

ニーアはそれだけ言ってその場を離れた。エルフ女性のハーフエルフに対する差別意識は痛い程経験していたからだ。
　ユリアーナやエリーも湯からあがってきた。リザが話しかける。

「竜の探索者あんたたちの所って儲かってるのね。ハーフエルフの下働き夫婦雇ってるなんて」

ユリアーナには何のことか分からなかった。

「何？」

「ほら金髪のハーフエルフがレモネード持ってきてたから」

「は？」

ユリアーナはハーフエルフがエルフから下に見られている事を知らなかった。少なくとも竜の探索者に関わるエルフ族は相手の種族で自分より下だと見るメンバーはいなかった。エヴァの場合は自分より年下は皆下、というか最上位がヴァイキーでヨアヒムは次点、あとは自分より下、という態度を取っていた。

「エルフはハーフエルフを下に見てるんだ？それともリザ個人がハーフエルフを下に見てるの？」

ユリアーナは一見穏やかに見える態度でリザに聞く。リザ以外はその不穏な空気を感じ取る。そこにエヴァが入る。

「リザちゃん、……人を下に見る態度は表にすぐ出るよ。それは他人が不愉快になるの」

実体験で語るエヴァの言葉にエリーが溜息をつく。

「ねえ、ここは貴女のテリトリーじゃないの。外に出る時の最低限の礼儀すら躾けられずに家からでたの？」

「そんな……」

そこで万聖節のもう一人の女の子ミッシーが言う。

「この子の実家多分、純血派何だと思う」

「純血派？」

エヴァ、ユリアーナ、エリーの声が揃う。

「エルフの一派。ハイエルフ、エルフ、その他のヒト族、っていうヒエラルキーの元に生きてるエルフの人たち。そう言う人はあんまり冒険者にならないのだけど……」

「なにが悪いの？」

エリーはそう言ったリザを見る。

「現状と合わない、非合理的、非効率的な考え方だと思う」

エリーはきっぱりと言う。

「世界中行ける私たちが色んな所で活動していくのに向いてない。貴女も内勤だけになりたい？それこそ外にもだせないやつだって目で見られるの。ミッヂみたいに」

リザが固まる。副官のウリの下で書類仕事をしているミッヂを揶揄う筆頭もリザだった。『病人でもないのに内勤だけ？』と揶揄っていたのだ。もちろん、ミッヂが暴言が多くて外に出せないと決めた時に副官預かりになったことはリザも知っている事だった。

「ミッヂ？」

ユリアーナが首を傾げる。