竜の探索者 最大手のクラン、所属条件はクラン主のお眼鏡に叶うかどうかのみ。人種も身分も関係ない。僕らはみんな冒険者

クランに関わる人間関係

27 万聖節の夜にて

　「ミヒャエル、結婚したんだって？おめでとう」

「なんだ、それ？俺知らんぞ」

クラン万聖節の夜のリーダー、ミヒャエルがアキラの言葉に驚いている。

「冒険者ギルドのおねーちゃんに聞いたけど？」

いま、万聖節のクランハウスのミヒャエルの私室にアキラとミヒャエルはいる。

「……あいつ、くそっ」

ミヒャエルはこめかみを押えて呟く。金髪に緑が勝った青の眼の可愛らしい顔が歪んでいる。はぁ、と溜息をついてミヒャエルが最近あった事を話し始めた。

「うちは王都近郊の初心者狩場の見回りを受け持ってて」

「うん」

「ちょっと前に……良くある話なんだけど初心者パーティ、それもギルドで即席で組んだパーティで男ばっかりで女が１人のパーティで良く起きるんだ。その１人を良いようにするの。この辺の娼館街に落ちてくる女の子の２割くらいがこういうパーティで弄ばれた子達なんだけど……」

ミヒャエルがふうと息を吐く。

「で、そういう現場を押えて助けたんだよな、女の子。エリーって名乗ってた。……その子が俺の嫁になるって言いふらしてるってさ」

「いくつの子？」

「14。どうも実家での結婚を嫌がって逃げてきた子みたいで」

「デヴィッドも頭抱えてたわ。自分たちの故郷で冒険者の経験なしで王都デビューの子、増えたって」

ミヒャエルとアキラはたらいにたっぷりの氷を魔法で出している。その真ん中には木桶があり白い液体、ミルクに砂糖を溶かしたもの、がいれられている。氷にはたっぷり塩が振られている。

「こうやって冷やすだろ」

暫くして半分凍ったようになったミルクを混ぜるようにアキラはミヒャエルに言う。

「さっき出した氷に塩振ったのはなんでだ？」

「より冷えるように。ただの氷より温度が下がるんだ。塩で溶ける温度のほうが普通に溶ける温度よりも低い、んだったはず」

「へぇ」

ミヒャエルは感心している。

「なぁ、竜の探索者はどういう訓練してるんだ、新人」

「初級も中級も上級も一緒。決まった期間、砂の上で軽く走って、次に速歩の訓練。んで今は山で戦争ごっこ」

「……戦争ごっこ？」

「単純に自分以外のメンバーに色水の入った水鉄砲の水を当てる、ってゲームと紅白に分かれて相手方を捕まえるゲームをしてる」

「訓練なんだろ？」

「訓練だよ。実際山の中でやるとこれが効くんだな。意外と山の中を走り回る事ないだろ？ただな、狩人が１人勝ちしかねないんだよな。あいつら狙撃の訓練してるから」

「水鉄砲だと弓みたく飛距離ないじゃん」

ミヒャエルが当然の事を言う。

「そう。だから一人勝ち『しかねない』なんだよ。一度実地でやってみる？」

「それいいな。うちも狩人いるしな」



　「よし、出来た」

二人でミルクシャーベットを味見する。

「これならおばちゃんも喜ぶ」

「そこから顔覗かしてる子は？」

「ああ、入っておいで」

背の高いエルフの女性だった。

「さっき言ってたうちの狩人です。リザって言う」

「リザです。よろしくお願いします」

アキラも普通に挨拶する。

「アキラです。よろしく」

「あ！リーダーの思い人って男の子だったんだ」

ミヒャエルはリザの言葉に驚いている。

「なんでそうなるんだ」

「だってアキラさんが来るって今日機嫌よかったから。好きな人かと思ってた」