竜の探索者 最大手のクラン、所属条件はクラン主のお眼鏡に叶うかどうかのみ。人種も身分も関係ない。僕らはみんな冒険者

クランに関わる人間関係

11 エヴァ ２

　今日、ヴァイキーが一人なのはカイとヨアヒムのたくらみだった。

「行ったな」

ヨアヒムの手にはトラヴィスがある。余計な所で口を挟ませないためだ。
　カイとヨアヒム、宗介、レッドはアキラの部屋だ。オールとブラッドはデヴィッドの依頼で出かけている。ドワーフ庄の一つで揉め事というか事件というかが起こっているらしい。

　「エヴァ、ちゃんといえるかな」

アキラは心配そうだがデリケートな出来事なのでアキラとレッドもヴァイキー達の声を拾わないようにしている。今は自室で寝ているシルバーがちゃんと遮音結界をその部屋に張ってくれたのだ。ヴァイキーもメンバー達のたくらみは知っていたが、エヴァがけじめをつけないと先に進めないのは認識していた。

「お前、……心配か？」

アキラの言葉にカイが訊ねる。

「そら、ね。数々のトラブルを撒き散らしながら、我々の迷惑何のそのでヴァイキーに縋りついてたのから卒業してくれるんだぞ？ちゃんとけじめつけられるか心配だろ？」

カイが邪気もなく聞いてくる。

「エヴァの事嫌いなのか？」

アキラは首を傾げる。

「嫌い、という感情ではないけど……好きともいえないって感じ」

アキラはやたら正確に己の心情を口にする。

「あー、仕事仲間っていうべきかな？」

アキラに言われてカイもレッドも納得した。雑談を繰り広げていると宗介が立ち上がった。

「そろそろおっちゃんが助け船に入るわ。暫くしたら台所に来ても大丈夫やと思うで。なんか作っとくしな」

そう言って宗介は身軽に階下に降りて行った。ほどなくベーコンの焼けるいい匂いがしてきた。

「ベーコン焼き始めたな？」

レッドが口にしてみなぞろぞろと食堂に降りて行った。
　食堂に行くとユリアーナがエヴァと話していたしヴァイキーは大人しく蒸留酒を飲んでいた。

「わりぃ、返すわ」

レッドがトラヴィスをヴァイキーに返した。魔剣トラヴィスはレッドに念話できつく、『この場で口を開くな。訊きたい事があったら二人きりになってから訊け』と言い含められている。

　「なんやみんなして」

「ベーコンの匂いが……」

アキラが皆を代表して言う。

「酒のつまみやで？アスパラとベーコン炒めてるん」

「わーい。好き」

ユリアーナがさっと主張する。

「わかったから。アキラちゃん、ストーブの上で適当にバゲット炙ったってんか」

「うん」

アキラはパン切包丁とまな板を持ってくる。そしてバゲットを適当にスライスしては料理用ストーブの上に置く。暫くするとカイが焼けてきたバゲットに乳酪をするすると塗っていく。

「ついでに生ハムとサラミもだすか。あと草と」

カイはそう言いながらパンに合いそうなものを用意していく。

「いやん、太る」

ユリアーナは食べる気満々であった。