竜の探索者 最大手のクラン、所属条件はクラン主のお眼鏡に叶うかどうかのみ。人種も身分も関係ない。僕らはみんな冒険者

クランに関わる人間関係

08 エドガーとジスラン

　「赤ん坊生まれったって？」

ジスランがエリカに頼まれていた食料品を運び込みながら訊ねる。

「そうだよ。今寝てるからしずかにね」

エリカに言われジスランはこくり、と頷いた。ジスランは結局離婚し、今は新しい関係へと足を踏み出そうとしているところだった。孤児院出身で今はジュースの屋台の店番をしているハルカという子だった。ハルカは東の国の血筋の顔立ちだったが、気が付いたら冒険者ギルド前の屋台の横に座り込んでいた子供だった。

「ま、次はあんたの番だよ」

「うーん。ハルカがどういうかなぁ。……ユリアーナとかブランカはどうするんだろう」

エリカがふっと笑う。

「あの二人はあんたやエドガーよりもたくましいよ。あんたが気にしなくても大丈夫」

ジスランは神妙な顔になる。

「ラルフさんの具合は？」

「良くなったり、わるくなったり。衰弱していく病気だからね……」

エリカは仕方ない、と呟く。

「あ、ジスラン来てたんだ」

エドガーが屈託なく話しかけてきた。

「赤んぼみてく？ってか、見て」

エドガーは満面の笑みでジスランを双子の部屋に連れて行った。

「今はリリーは寝室で寝てる」

「そっか。出産終わった所だもんな」

「……あんなに苦しそうだとは思わなかったよ。母親の事は許せないけど、あんなに辛いのに産んでくれたのか、と思うとちょっと思うところあるな」

「そうか」

ジスランはそうとしか言えなかった。カタリナが何故ジスランをエドガーにけしかけたかジスランにはわからないけれど、ルトガー達に向けていた優しい笑顔の印象がジスランの記憶の中のカタリナだった。




　「かわいいだろう」

エドガーの眼が無くなっている。

「うわぁ……、ラルフさんそっくりじゃん」

ジスランは思わず口にした。それくらい双子はラルフ似だった。

「だから俺に似てるの」

エドガーにそう言われて、ジスランは『ああ』と納得した。始めてエドガーがラルフ似だと認識したのだ。

「リリーは親戚にも双子が多いんだって。近いうちにリリーの親戚の人、父親と母方の祖母が我が家にくるって。……なぁ、拠点の家も紹介した方がいいのかなぁ」

エドガーが不安そうだ。拠点にあるエドガーの家はまだ小さな家で台所と居間、そして寝室という程度の家だった。

「新婚だったらそんなもんだろう」

ジスランが自分の前の結婚を思い出して言う。

「それに拠点と行き来をああいう魔道具でしてるってバレる方がめんどうだろ？」

「うん、……マルクの馬車を使うつもりだった」

「偽装するなら街の拠点使ったら？あっちに案内して『落ち着いたらこっちに引っ越してくる予定です』とかさ」

「それだ！」

エドガーが喜んだがラルフが丁度双子を見に来たところだった。

「見栄はいかんよ。まぁ、街の拠点はエドガーとルトガーの名義になってるけどもな」

「兄と共同名義の家とかだめですかね」

ジスランの言葉にラルフは首を横に振る。

「親族の対応は私が何とかするよ。ただな、エドガー、ジスランも。自分を実力以上に見せようとしないほうがいい。親は案外そう言うところも見てるよ」

ラルフの言葉にエドガーもジスランもばつが悪そうな顔をしている。