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クランに関わる人間関係

07 エドガー

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 「孫が抱けるとはなぁ」

ラルフは自宅にいるエドガーと話している。ラルフの病状を知ってから4年目の事だった。

「リリーは女の子が生まれるといいって言ってる。俺は……どっちでもいいな。赤ん坊が1つになるまではここでお世話になります」

エドガーは頭を下げる。

「向こうでは女手も足りないだろうしな」

「リリーは親とか親戚もいないっていうし」

ラルフはリリーの事を調べた結果をエドガーには黙っていた。本来なら準男爵の貴族の娘なのだが義理の母親と折り合いが悪く、18で家から独立し錬金術師ギルドの売店で働き始めた事や転勤でこちらに来た事などは既に本人たちで話しているであろうと判断したのだ。
 見た目は地味でおとなしそうな女性ではあるがエドガーよりも3つ年上で生涯結婚する気もなかったというリリーはラルフから見ても堅実で好ましい女性であった。

「母親には頼りたくなかったし。親父、本当にありがとう」

「エリカもいるからな」

「ベルタも手伝ってくれるって言ってる」

「今、週に2回来てくれてるよ」

「そっか」

ベルタは食が細くなりだしたラルフに少しでも口を変えて、という事でエリカがベルタに頼んできてもらっている。エリカ曰く『同じものでも作る人間が変わると食べられたりするからね』と。

「今日からこっちに住むけど、毎日拠点に出勤はするので、オールがゲートの設置をしてくれるって。庭より屋上の方がいいのかな?」

ラルフも考えている。

「出入りが頻繁で無ければ私の書斎がいいかもしれんな。私かレドモンドが詰めてるから人もあんまり来ないし。悪さが出来ないように見張れるし」

「それもいいかも」

「じゃあ、そうしよう」




 ほどなくオールが庭に転移してきた。

「こんにちは。で、設置場所決めた?」

「ん」

エドガーは頷く。

「じゃ、案内して?」

「親父、書斎に入るよ」

「今はレドモンドがいるからノックはしろよ?」

ラルフは息子の後姿を眼を細めてみている。



 門は問題なく設置され拠点とラルフの家を問題なく行き来できた。

「ラルフさんもレドモンドさんも偶にはこっちに来てくださいよ。田舎の空気はいいですよ」

オールがそう言いながら黄色い石の指輪を渡す。

「これは、ここに押し付けると拠点へ、こっちに押し付けるとエドモンドが住みついてる街の拠点に繋がります。夜にエドモンドと連絡取りたい時に使えると思って」

ラルフが気楽に故郷に戻れるようにという竜の探索者クランからの贈り物であった。その後、ラルフはユリアーナが拠点で畑作をしているのもありちょくちょく拠点へ行きマルクの馬車で海に行くことが増えた。海を眺めて一日を過ごすラルフの世話をマルクはラルフに気を遣わせないように配慮していた。




 初夏にリリーは双子を産む。男の子の双子だった。

「名前はラルフとネオ。……父さんと父さんのお兄さんの名前を貰いたいんだ」

「小さい手だ」

ラルフはエドガーの言葉に頷きながら赤ん坊の掌を恐々つついている。
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