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ランディの帰省(vs.虎人国編)

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 「男一人の家だからな。なんもないぞ」

イジーはそう言いながら魔導コンロに魔力を通して火をつけお湯を若し始めた。

「いや、野宿よりは眠れる。簡易寝台も持ってきてるしな」

「アイテムボックス持ちはいいね、身軽で」

イジーはそう言いながらコーヒー豆をひき始めた。

「タバコは止めたんだが、……これはやめれん」

といいながらひきたての豆で珈琲を入れてくれる。

「こっちだと噛みタバコばっかでな。おれはあれは会わんからな」

維持はそう言いながら手際よく珈琲をいれている。最近東の国の商会が売り出したペーパーフィルターでコーヒーはいれられる。

「これだと手軽でな」

イジーはそう言いながら珈琲を皆に振舞う。

「少年は……苦くないか?苦いなら砂糖もあるぞ」

「ルトガーです。……そうですね、砂糖頂けると嬉しいです」

そう言いながらマジックバッグからミルクを出した。

「これを使っても?」

「マジックバッグか。牛乳をいれてるのか」

「ええ、野宿の時の朝食にとか結構使うので」

ルトガーとイジーは軽い話をしている。カイはいち早く珈琲を飲み干すと台所にチェックを始めた。

「一人やもめの台所だぞ。ろくなもんねぇよ」

イジーが声をかける。

「いいよ。材料は持ってきてるし器具もある。広さとコンロをチェックしただけだ」

「そうか」

カイはイジーに告げる。

「じゃ、俺は適当につまみとか夕飯とか作っとく。台所借りる」




 夕飯にはミルクのシチューと小麦粉と重曹で器用にパンを作っていた。厚手の振らパン、スキレットのなかで焼かれた出来立てのパンをイジーは喜んだ。

「自分で焼けりゃいいんだがな」

「近い家に頼んで配達してもらうといいよ。ちゃんと対価払ってな」

カイの提案にイジーは頷いた。

「一考の予知があるな。問題は皆対価を受け取ってくれんのだよな」

「そういう時は村長に頼むといい。『村』の収入にしてしまえば受け取ってくれるぞ」

カイは自分の育った地域を思い出してそうアドバイスをする。

 夕食後、レッドとカイとイジーは酒を飲み、オールとルトガーはミルクを飲んでいる。

「教会に供物が置かれた日、だれか来てたのか?」

「村長の所に客が来ていた。そいつが犯人だとは思うのだがその客が旅の途中で、村長の長女の夫の従姉妹の配偶者の従弟の息子とかいう若い男で、どこかに届け物をするのだが宿を借りたいと言って村長は離れを貸したと言っていた。十分な対価と土産を村長は貰ったらしい。ま、砂だらけの朝にはその若い男は旅立っていたってわけ。村長にはそいつ『早朝に出るので、一夜の寝床をお借りしたい』って口上だったらしいけどな」

イジーはそんな橋を間につまみを食べながらぼつぼつと語った。
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