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ランディの帰省(vs.虎人国編)

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 翌朝デヴィッドがリリスを受け取りに来た。

「フェイス、調子はどうだ?」

デヴィッドに声をかけられてフェイスは少し緊張している。

「はい、楽しく……やってます」

デヴィッドはゆっくりと頷いた。アキラ達が知っているデヴィッドの本体、少年の姿をフェイスは知らないと少し前にアキラはデヴィッドから聞いていた。

「フェイス。大伯父様が寂しがってたぞ。戻れる時があれば戻ってこいと」

そう言いながら新しいサークレットを渡す。繊細な細工が額の刺青を隠す。それ以上にフェイスが驚いたのはそれは癒しの魔法が施されている物だったからだ。

「そのサークレットで額の刺青が消えるころに一度大伯父様に会いに行くといい。それは一族の総意だ」

フェイスはそのサークレットを胸に抱いて何度も頷いていた。



 アキラもデヴィッドと一緒に出立する。アキラはアイリスに小さな声で伝える。

「また来ていい?」

「タイミングが合えば」

「無理にでも合わせる」

アイリスは少し苦笑してアキラの額に口づけた。

「こんなおばさんに執着しないの」

「アイリスは俺が知ってる中でも一番の女だよ」

アイリスは苦笑したまま自分が口づけたアキラの額を指で弾いた。

「生意気なこと言わないの。あんたが知ってる女は私だけなんだから比較する相手もいないでしょうに。アキラの事は嫌いじゃないから気が向いたら、ね」

アイリスは艶やかに笑った。



 「アイリスに?」

「女を教えてもらっただけ。……女の体とその反応と。俺が女端末を作る事があったら参考にしたいと思った」

デヴィッドはアキラの頭をぽんぽんと軽く叩く。

「イイ女に教えてもらったな」

アキラはにやりと笑う。

「うん」

あきらは頷きふっと溜息をつく。

「じゃ、跳ぶぞ?」

デヴィッドの言葉にアキラは頷き同意を示した。



 跳んだ先は深い森の中だった。

「ここはエルフの王都の中?」

「いや。直截つながっているが……一応、外。ただし人はまず入れない。が、アキラには言ってていいか。オールとブラッドが暮らしていた森のもっと奥だ。一応オールは門番の役もしてたんだ、あそこで。今も月に一度結界を強化してここと外界を区切ってる」

「エルフの世界も色々あるんだね」

アキラの言葉にデヴィッドは深く息を吐きながら同意した。

「面倒ではあるな。俺は外を知ってるから余計にな」


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