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ランディの帰省(vs.虎人国編)
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オールは改まった服に着替える。長い髪は首の後ろで一つにまとめる。象徴的な話ではあるが髪には魔力が籠ると言われているのでオールの髪は長い。ルトガーもオールにならって髪を伸ばしている。
「こちらはせいぜい話を長引かせますから呪物の方、頼みますね」
オールはそう言いながらルトガーに布を渡す。
「これは聖別された布なので呪物を包んだらいいです。マリナが作った物ですから効果は保証します」
「いつの間に」
ランディが驚く。
「マリナには何枚か特注で発注しておいたので。冬の初めくらいに出来たと聞いたから取りに行きました」
オールはしれっという。たまに、本当に偶に働く先見の能力で自分がマリナから聖別された布を受け取ってるシーンが見えたのだ、と。
「オール、都合いいな?」
レッドが言うとオールはにっこり笑う。
「それが先見って事です。……大抵は夕飯がなにかとかね。そんなのが多いんですけどね」
オールはルトガーに注意する。
「皆に認識阻害がかかるような位置でね」
と言いながらオールはルトガーにペンダントを渡す。ルトガーも素直にそれを首にかける。
「言ってくれれば俺がかけたのに」
レッドが言うと
「この屋敷、竜人も多くいますから貴男の魔力だと影響が大きすぎます」
「それもそうか」
オールの言うことにレッドも納得する。
「目立たないに越した事はないですしね」
オールはそう言うと夕食の席に向かった。食事の前に当主夫婦と歓談を、という事だった。ランディ達が呪物探索に出る前にノックの音がする。ルトガーはそっと窓際まで行き認識阻害の影響が出ないように距離を取った。
入って来たのは爺やだった。
「旦那様からお手紙です。内密に、との事です」
最後の言葉は小声だったが身体強化をかけているルトガーにも元より聴覚の良いレッドにも聞こえている。
「わかった、ちょっと屋敷内を案内してくるので軽食を用意しておいてほしい」
「わかりました。お任せを」
ランディが爺やに向ける目も爺やがランディに向ける目も優しい。お互いの思いやりがよくわかる視線だった。
「じゃ行こうか」
爺やが出て行ってしばらくしてからランディ達は屋敷内を歩き回った。問題の位置に来た時ルトガーの腕は鳥肌がびっしり浮かんでいる。
「ここ、この扉の奥に……なんか……あります」
ルトガーは震えないように声を落として呟く。もちろん通りすがる使用人が気が付かないように、という事もある。ランディは執事から鍵束を預かっていた。
「なんで素直に鍵束もらえたんだろう」
レッドが訊ねると
「……なんか気が付いてるかも。この2階ってこのオヤジの執務室以外はあんまり使わないんだよ。奥が夫婦の寝室らしいけど」
「……多分そっちも何かある感じする。後で扉の前に行きたい」
ルトガーが言い出す。ルトガーは一直線に暖炉の奥に布を巻いた手を突っ込んだ。そこには灰にまみれた竜の足の前半分が隠れていた。
「……これは火口ふきんにいるグリーンドラゴン亜種のファイアドラゴンだ」
レッドが聖布ごとルトガーから受け取って観察する。
「かなりの恨みを感じるな」
レッドは意外な程優しい手つきでファイアドラゴンの遺物を聖布で包み込んだ。
「こちらはせいぜい話を長引かせますから呪物の方、頼みますね」
オールはそう言いながらルトガーに布を渡す。
「これは聖別された布なので呪物を包んだらいいです。マリナが作った物ですから効果は保証します」
「いつの間に」
ランディが驚く。
「マリナには何枚か特注で発注しておいたので。冬の初めくらいに出来たと聞いたから取りに行きました」
オールはしれっという。たまに、本当に偶に働く先見の能力で自分がマリナから聖別された布を受け取ってるシーンが見えたのだ、と。
「オール、都合いいな?」
レッドが言うとオールはにっこり笑う。
「それが先見って事です。……大抵は夕飯がなにかとかね。そんなのが多いんですけどね」
オールはルトガーに注意する。
「皆に認識阻害がかかるような位置でね」
と言いながらオールはルトガーにペンダントを渡す。ルトガーも素直にそれを首にかける。
「言ってくれれば俺がかけたのに」
レッドが言うと
「この屋敷、竜人も多くいますから貴男の魔力だと影響が大きすぎます」
「それもそうか」
オールの言うことにレッドも納得する。
「目立たないに越した事はないですしね」
オールはそう言うと夕食の席に向かった。食事の前に当主夫婦と歓談を、という事だった。ランディ達が呪物探索に出る前にノックの音がする。ルトガーはそっと窓際まで行き認識阻害の影響が出ないように距離を取った。
入って来たのは爺やだった。
「旦那様からお手紙です。内密に、との事です」
最後の言葉は小声だったが身体強化をかけているルトガーにも元より聴覚の良いレッドにも聞こえている。
「わかった、ちょっと屋敷内を案内してくるので軽食を用意しておいてほしい」
「わかりました。お任せを」
ランディが爺やに向ける目も爺やがランディに向ける目も優しい。お互いの思いやりがよくわかる視線だった。
「じゃ行こうか」
爺やが出て行ってしばらくしてからランディ達は屋敷内を歩き回った。問題の位置に来た時ルトガーの腕は鳥肌がびっしり浮かんでいる。
「ここ、この扉の奥に……なんか……あります」
ルトガーは震えないように声を落として呟く。もちろん通りすがる使用人が気が付かないように、という事もある。ランディは執事から鍵束を預かっていた。
「なんで素直に鍵束もらえたんだろう」
レッドが訊ねると
「……なんか気が付いてるかも。この2階ってこのオヤジの執務室以外はあんまり使わないんだよ。奥が夫婦の寝室らしいけど」
「……多分そっちも何かある感じする。後で扉の前に行きたい」
ルトガーが言い出す。ルトガーは一直線に暖炉の奥に布を巻いた手を突っ込んだ。そこには灰にまみれた竜の足の前半分が隠れていた。
「……これは火口ふきんにいるグリーンドラゴン亜種のファイアドラゴンだ」
レッドが聖布ごとルトガーから受け取って観察する。
「かなりの恨みを感じるな」
レッドは意外な程優しい手つきでファイアドラゴンの遺物を聖布で包み込んだ。
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