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ランディの帰省(vs.虎人国編)

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 「これを」

何かと思えばレモンのはちみつ漬けだった。

「レモンを噛んでください。少し楽になりますから」

ほんのりハーブの匂いがするそれをカイも素直に従う。じゅわっとレモンの香りが口の中に広がる。カイは

「あ」

というとマジックバッグからヨアヒム特製の炭酸水で割ったレモネードを出す。

「お」

と行ってランディもそれを受け取る。二人が瓶入りの飲み物を飲みだしたので老爺は眼を白黒させている。

「疲労回復剤だよ」

ランディは老爺と作男に瓶を渡す。二人ともおそるおそる口をつけると眼を丸くして残りをごくごくと飲み干した。

「よく似たものはそのレモンのはちみつ漬けがあれば出来るよ」

とカイが教える。
 少し休んでランディとカイが回復したので老爺が家まで連れて行ってくれるという事になった。

「坊ちゃん、通用門使いたいから帰省の旅に私の所に最初に来るんですよ」

老爺が愚痴とも自慢とも取れるようなことをいう。多少嬉しそうなので自慢なのだろう。

「正門に並ぶの面倒だし」

「うちの紋章で通れば良いではないですか」

「指輪出した時の衛兵たちが面倒くさい。陳情されても街の事はわかってないから困るんだよ」

ランディは眉間に皺を寄せる。



 屋敷に着くと客室に案内される。3階建ての立派なお屋敷だった。モンド国の拠点は3階建てではあるがもっと武骨な石と木を合わせたような建物であった。王都の拠点にかなり近いが王都の拠点ほど大きくはなかったがランディの父親の家はもっと瀟洒な女性好みの城だった。内装も花やレースがあしらわれ冒険者達にはなにか少々お尻の座りが悪くなる『少女趣味』っぽさが見受けられる。白に金の猫足の家具であったり白いレースのカーテンであったり。オールとルトガーは落ち着いている。

 客室にほど近い応接室でも同じことだった。レッドがルトガーに聞く。

「ルトガー、落ち着いてるのな。こう、なんかむずむずしねぇ?」

ルトガーは自嘲するように笑う。

「ああ、俺の母親少女趣味でね。家もそうだし……。顔に傷がつくまではフリルたっぷりの服着せられてたよ。俺ですらそうだがラユリアーナとブランカは凄いもんだった。うちの実家の家計では衣装代が一番多かったと思う。もちろんご本人も飾り立ててたからな。あんな田舎の街なのに月に一枚、王都の最新モードの服をわざわざ仕立ててたよ。ユリアーナは通学に使えるようなシンプルなワンピースが好きだったけど実家にいる間は母親のコントロールの服着てたな」

話していくうちに段々ルトガーの顔が昏くなっていって。

「ルトガーも妹たちもエドガーもみんな独立したし」

「ブランカは母にお金入れてるみたいだな。ユリアーナは父にも母にも同じように会いに行ってる。俺とエドガーは」

ルトガーは苦笑する。声をかけたカイも苦笑している。自分も身に覚えがあるのだ。

「男はなぁ……。気が回らないから」

オールはそんな会話を面白そうに聞いている。
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