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海の姫の章

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 「おかえり」

あのあと、ゴールディが本体を黒龍の元に送り、キャンプまではオールが動けないのでルトガーが皆を魔法のじゅうたんの上に乗せて戻った。じゅうたんはふよふよした動きにも関わらず意外な速度で空中を飛ぶ。
 短距離なのでルトガーやオールならじゅうたんを飛ばすのに魔力の補助はいらなかった。
キャンプに着くと

「えらい大きい音してたで。ぐわぁぁぁゎ、バリバリバリって。最後にぴしゃんがたんどたん、って」

宗介が皆を迎えてそう言った。

「あとどたん、って言った時にあの『小虫』とか言ってた女の声で高笑いが響いてた」

マルクが付け足す。アキラ達がいた海岸にも響いていたのだが、モドキが倒れた瞬間だったのであの海岸にいたメンバーは全く気がついてなかった。

 「アキラ、MPポーション持ってるよね?」

オールに訊かれてアイテムボックスからMPっポーションを出したアキラはそのままオールにポーションを渡す。ふわりとハーブの香りがし一瞬にして消えたと想ったらオールがMPポーションを飲み干していた。

「さて、と。さっさと食べてクロの所へ行こうか」

オールにそういわれなんとなくまだ興奮の残るアキラ達もおとなしくエネルギーを体に入れ始めた。

「おかわり!」

レッドがいうと宗介が笑って大盛りのカレーをよそって渡す。それ以外の人員は自分で好きにお代わりするなりしている。宗介とブラッドは東の国の照会長からのわいろ、イカの一夜干しや干物を持ち込んだ七輪で炙って食べている。


 「おやすみー」

天幕の中でアキラ達は早々に眠った。オールの呪文だった。オールも自分に睡眠の呪文と覚醒の呪文を唱えるとあっという間に寝息を立てている。エドガーはその間、ニーアが入れたハーブティを飲んでいる。

「オールが起きるまでは俺は寝ないから」

「俺も付き合う」

エドガーがそう言い濃い目の珈琲を自分で入れる。ルトガーは使った食器を桶に入れ洗浄クリーンの魔法をかけた後水魔法で桶の中の食器を洗い流す。それが終わったと思ったらブラッドが食器を別の桶に綺麗に立てかける。ルトガーはそこに乾燥ドライの魔法をかける。宗介がその食器をマジックボックスに入れて片付けた。

「さっきのうるさいのとはえらい違いやな」

宗介の言葉通り、空気が不気味に静かだった。しかし雰囲気は剣呑であった。



 一斉に寝ているアキラ達は何故か黒龍と繋がっていた。

『そのままでいい』

各人に黒龍は本体の損傷箇所と長年使ってきて傷んでいる部分の修復を告げた。黒龍はこの世界の神とほぼ同義なのでアキラ達が直截触れる機会はあまりない。アキラ自体は黒龍と会ったのは異世界日本に飛んだ時と今回の二回だけだ。普段はクロが間に入るのだ。だが今は海の女王相手の精神戦の最中なのだ。海の女王は黒龍と戦闘能力自体はあまり変わらない。そもそもは海を司る王なのだから。
 

『まだ本体を出さなくていいと思う。クロを支えてやってくれ』

そういうと黒龍との会見は終わりそのままアキラ達は眠りの中に引き込まれていった。アキラは一段潜った感じで眠る。


 短時間の睡眠でオールが起こすより先にアキラは目を覚ます。8時間眠った後よりももっと疲れが取れ精神が絶好調だった。

「すっげぇ、すっきりした」

アキラはそっと天幕を出て宗介達にそう告げる。ユリアーナは元気そうなアキラの顔を見て少し安心したようだった。

「第二ラウンドやな」

宗介にそう言われてアキラは親指をたてて答える。

「絶好調」

「そか。無理せんとな」

アキラは宗介の言葉に笑顔で頷いた。

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