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海の姫の章

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 その次の邂逅は王都の冒険者ギルドだった。ソロで難易度の高いモンスターの退治を受けた後の事だった。

「あ!アキラだ!」

屈託なくミヒャエルはアキラに声をかけてくる。アキラが片手をあげるとミヒャエルは寄ってくる。

「なぁ何の依頼うけた?」

「モンスター討伐」

「そっけないな、アキラ」

「……人懐っこい方じゃなくてな」

アキラはぶっきらぼうに応える。ヨアヒム達との関係を考えると間に入るのも違うし仲良くなり過ぎないようにしようと思っているアキラの愛想は良くない。だがミヒャエルはぐいぐい来るタイプでアキラは無下には出来なかった。

「知ってる。竜の探索者のリーダーは人づきあいが悪いって話だよな。たいていはヨアヒムが対応してるって」

「そうだよ。俺はガキだからおっさんらの付き合いは出来ないしな。酒のまねぇもん」

「そんな若いときから冒険者やってて飲めないって珍しいな」

ミヒャエルはギルドの食堂の奥の席にアキラを連れてくる。

「アキラ、は本名だったんだな。ヨアヒムの所属するクランの名簿みたら十代は結構いたけどアキラ、はリーダーの名前だったからな」

「アキラ、なにしてんの?」

エルフの少年の姿で、デヴィッドがアキラの所に歩いてくる。

「デヴィッド、なんで?」

「アキラが虐められてるのかと思った」

デヴィッドがより少年らしい声を出す。

「デヴィッド?……ギルド長と似てるけど?」

「ん?伯父さんの事?俺、オールの婚外子なんだ。俺は伯父さんにあやかって名付けられたんだ」

アキラはそういう設定か、と思いながら咽るのを必死で我慢した。

「そうなのか」

ミヒャエルの言葉にデヴィッドは頷いた。

「あ、この話、外でしないでね?約束してくれる」

アキラは笑いをこらえるのに机に突っ伏した。アキラの肩が震えている。

「アキラ、どうした?苦しいのか?」

ミヒャエルが心底心配そうに声をかけてきてアキラはもっと顔が上げられなくなった。



 「ミヒャエル、本気でアキラの事気に入ってるみたいだぞ」

拠点でヨアヒムにデヴィッドは告げる。

「……対処した方がいいのかなぁ」

「っていうかクランハウス使うときは気を付けてな。『お前今家どこなんだよ』って言っててアキラにクランハウスに連れて行けってうるさかった」

「知られたら入り浸られるぞ。ミヒャエル、自分たちのクランハウス持ってないしな。クランルームって感じだよ、万聖節。いまあいつらのクランほとんど王都出身者でだしな」

「……クランハウスの所持を持ちかけてるんだが」

「そういう金は無いと思う。あそこは基本は所属先のない冒険者集めてるだけだから」

「それはそれでありがたいんだがな」

ヨアヒムとデヴィッドはだらだらと話している。間には酒と肴が置いてある。

「あんたがこっちって珍しいな」

「……この少年の姿で酒飲んでる所をミヒャエルに見られたくないしな」

「は?なんでミヒャエル?」

デヴィッドはヨアヒムに『オールの隠し子』の下りを話す。

「はははは。アキラ復活に時間かかったろ」

「ああ、ツボに入ったみたいで」

「アキラ、めったに大笑いとかしないけど一度そうなると立ち直りに時間がかかるんだよ」

ヨアヒムはにやにやと笑いながら酒を少し口に含んだ。
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