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海の姫の章

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 会議の様子を念話で中継されていたゴールディ、レッド、アキラは

「あのおっさん、あんなに顔に出ていいのか?」

「むかつく野郎だな」

「なに、あの人」

とエドに対してブーイングが出る。

「……あの瑠璃姫、怖えぇ」

と言いながらレッドがにやっと笑う。

「ちょっと声かかったらふらつきそうだけどな」

「不倫はだめよ」

ゴールディが釘をさす。念話で繋がっている三人のあれやこれやを聞きながらシルバーは表面には出さず笑っている。




 「結構日はいつがいいですか?モンド神の力とディアーヌ様の力が満ちるなら金曜日の満月の日だ良いでしょうけど」

瑠璃姫は可愛らしく小首を傾げる。どれだけ麗しく愛らしくてもこの女性は怖い人だとシルバーやアキラ達は認識した。

「そうだな。金曜日で出来得る限り満月に近い日、がいいな」

クロの言葉にゴールディがさっと計算してシルバーに伝える。

「2月後の第3金曜日が満月の一日前ですね」

シルバーの言葉にクロは頷く。

「それでどうだ?」

「満月じゃなくてもよろしいの?」

瑠璃姫が不思議そうだ。

「いいんです。もうすぐ満月という力が満ちた状態、それを望みます」

シルバーの答えに瑠璃姫は納得したようだった。




 「ではこの辺りで」

瑠璃姫はそう言って会議を終わった。

「夕食を食べていかれませんか?」

瑠璃姫に誘われてクロはにっこりと笑った。

「いや、……エドの愚痴を聞いてやってくれ」

そう言われエドはクロを視線で殺しそうな眼をして見ている。

 東の国の商会の会館を離れ、クロとシルバーは王都の拠点に戻った。

「エドという方、なんであそこまで憎々し気なんですかね」

「そうさな。女王が儂に興味を持った時の王配だったのだよ。なので女王にたっぷり未練も情もあるのだろうさ。で、あいつのあれは儂が憎いだけだよ。陸が憎いわけではない。昔はいい飲み友達だったんだがな」

クロはふっと自嘲気味に笑う。

 「今更、だな。……さて、ジャスティスとその仲間にも話を通しておこう。ジャスティスたちは海に戻る事を希望しているしな」

「そういえば海の竜は海に戻らないと本体がヤバイんじゃ?」

「あの3竜は定期的に海の水を空間移動させて利用している。『海の中』に入らなければ呪いは発動しないらしい。女王のなけなしの理性がそういう風に呪いを作ったようだ。女王も……落ち着くのは無理だろうな」

クロは少し遠い目をしている。シルバー達も知らないかかわりが海とクロにはあるのだろう。

「ま、いい区切りだ。女王も疲れているだろうしな。狂気が彼女を支配していようと彼らにとっては母親だしな」

クロは何ともいえない表情で自室に引っ込みシルバーは所在なげに王都のクランハウスのリビングに座っていた。


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