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海の姫の章

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 「なんだ。しけた面だな」

レッドはシルバーを見て言う。

「先に進まないなぁって」

「そら、自分以外の『他人』が関わってる上に他の国まで関わってるからだろ」

現状話し合いの様子はシルバーがアキラ達に念話で中継していた。なので皆大体の事情は
理解している。

「海の方はこっちが譲ってきたから今度も譲れ、てなもんだわな」

レッドがふん、と鼻を鳴らした。

「女王の変調が治れば、と様子をみたクロを甘く見た海の長老の負けだろう。パブリックエネミーで追い出した3体を返せば長老たちもひっくりかえせるしな」

「そのためには女王の呪いをなんとかしないと」

「そこだよな。しかし海の女王、なんでもかんでも呪うなぁ。同じなら長老たち呪えばいいのに」

「確かに」

茫洋としてはいるが美貌のシルバーが真剣に考え始めた。

「どした」

「なにか、なにか出てきそうで」

シルバーは呪い、呪いとぶつぶつ言い出した。

 


 アキラはそろそろ帰ってくるヨアヒムとカイを迎えにコアのダンジョンの入り口まで着ている。
 入り口には小さくはあるが冒険者ギルドの休憩所と鑑定所が出来ていた。入り口から少しあるけは乗合馬車が常駐している場所もできていた。

『アキラ~』

「コア』

コアの元気そうな声が響く。

『ごめんねぇ。最近忙しくて。オベロン、ってアキラが呼んでた子、僕と融合したよ。あの子と一緒になったことで僕の管理者としての知識とスキルが戻ってきたよ。だからアキラはあんまり僕の事考えなくて大丈夫。あとカイとかいう元アキラの仲間に手伝ってもらった。彼のもってるダンジョンの知識も手に入れた。もうそろそろ彼はそっちに行くよ。……本当に今まで手伝ってくれてありがとう、アキラが遊びに来るのは大歓迎だから!』

コアは忙し気に通信を切ってしまった。それと同時に見慣れたヨアヒムの金茶色の短髪とカイの少し広い額が見えた。

「おーい」

「アキラ、暇か!」

三人はとりあえず休憩所に入る。休憩所は簡易ではあるが魔石で水をお湯に変え風呂桶一杯にしていある洗い場があった。アキラはにっこり笑ってカイとヨアヒムに石鹸とタオルを手渡す。

「洗い場で本人と下着と服洗ってこい。服は洗い終わったらドライの魔法で乾かしてやるから」

アキラは強制力の強い笑顔でいう。二人は顔を見合わせたがアキラがそういうという事は匂いがきついんだな、とも悟る。カイとヨアヒムは潤沢に魔法が使えるほど魔力はなくクリアの魔法杖のみでこの2週間すごしていたので多少の自覚を持っていた。二人ともアキラに与えられた石鹸でまず着ていたものを洗う。洗い終わったタイミングでアキラは衣類を受け取り二人は頭の先から足の先までごしごしと石鹸で洗った。

「洗っても帰宅の道で汚れると思うんだけどなぁ」

カイはそう言いながら腰にタオルを巻いた姿で出てきた。他の冒険者ばぶらぶらさせたままの男性もかなり多い。

「ほらよ。クールドライ」

アキラが部屋全体に体を少し冷やして乾かす魔法をかける。他の冒険者も恩恵にあずかり喜んでいる。板一枚隔てた女子の方にも波及したらしい、いろんな声が

「ありがとう」

と伝えてきた。

「ま、サラサラの肌に清潔な乾いた服ってのは悪くないな」

エールを飲みながら買いはいう。ヨアヒムは自作の疲労回復ドリンク、レモネードを良く冷やしたものを飲み干して、周りの冒険者に売りつけている。ヨアヒムが小金を稼ぎ終わって荷物を用意する。と言っても腰のマジックバッグに入れるだけで終わった。

「さて帰ろうか」

アキラとカイ、ヨアヒムは仲良く休憩所を立ち去った。
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