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海の姫の章

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 クロとシルバーが戻ってきた。クロはチャーミングに問うた。

「女王が倒れたらどうするつもりだ?」

チャーミングは答える。

「私としては長兄と長姉の二人で統治してもらいたいと思ってます」

「未だ決まらないのか」

クロの言葉にチャーミングは頷いた。

「儀式の時に異議が無ければ。……多分、姉が反対派は落していくでしょうけど」

シルバーがくすっと笑う。

「あの時、あの方が嫁候補なら私も喜んだでしょう」

「美しくて強いしな」

クロも同意する。

「なにより大人ですから、姉上は」

とチャーミングも同意する。

「我々は種族的には固定のパートナーはいない事が多いんです。もしくは短期のパートナー契約をするとか。ただ姉上も兄上も番の相手がいたので長兄長姉は四人で仲がいいのです。二人の番が従兄妹である事も大きいのですが。この4人で国をまとめるなら我々としては大歓迎なんですけどね。……長老たちの意見はどうか判りかねますが」

チャーミングはふっと溜息をついた。あまり国政の事は話題にしたくないようだった。

「ま、ころあいかの」

クロはそう言って末姫の方を見た。

「あれらはどうするつもりか?」

「……奥の院に封じます。奥の院に封じたら……あそこに何があるのかはわかりませんが封じられた女は神の嫁になると言われてます。そろそろ今年も生贄をささげて静まってもらう予定なので」

「ちょっと、なんで私が」

「それが手っ取り早いからだよ」

兄の王子の冷たい目に末姫はぐうの音も出なくなった。




 「多分半月後に」

「いや、余裕を見て一月とっておくといいと思います」

捕縛袋に入れた末姫をチャーミングは軽々抱えた。

「本体確保の時間がいらないので半月でいけるかなって思ったんだけど」

「君の見積もりは甘いし、他の人がかかわってるのだから調整できる時間の余裕を作っときなさい。で、貴方達の姉姫さんたちと話し合って時期が決まったら連絡を」

シルバーに諭されてチャーミングは少しばつが悪そうである。

「細かい打合せはまだまだだけど、どっかの浜にモドキを上げて、モドキは4竜のブレスで丸焼きにする、と。で、末姫の本体の確保を女王に伝えて、本体を持ってきて女王の討伐、と。こっちはこっち側の長男長姉達も巻き込むと」

チャーミングが確認する。

「連絡は我々東の国の商会が受け持ちましょう」

商会長が約束する。

「頼む。ありがとう、礼をいう」

クロがその場で頭を下げ、アキラ達もそれに倣った。暫く考えていたゴールディが発言した。

「申し訳ないけど、一月じゃ私のブレスは戻らないかも。せめて後3か月、時間取れますか?」

大きな目で見られてチャーミングは心臓がどきん、と大きな音を立ててるような気持ちがした。

「美しいヒト、貴方の要望ならお聞きしますよ。ところで、夫を一人いりませんか?」

レッドがぱかっとチャーミングの後ろ頭を叩いた。

「いきなり何するんですか」

チャーミングは抗議の声を上げる。クロはそれをあしらった。

「やかましいわ。……求婚は冗談にしてもやりすぎじゃ。王子よ、吉報をまっておる」

それから毎週、ゴールディの元にチャーミングからの贈り物が届くことになった。




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