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海の姫の章

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 「で。シルバー、海とはすぐに連絡取れるの?」

アキラの声でシルバーは顔を上げる。

「どうでしょう。今まではあの子を仲介にしてましたから」

アキラはにやりと笑う。

「じゃ、人の手を借りよう。商人だから金や財宝の話しになるけど」

「少しならあるぞ。ブラックベアの革とかな」

「最悪、俺がヨアヒムに借金するし。あいつ、金と貴石類だけはたんまり持ってるし」

それまで黙っていたオールが

「俺も出せるよ。ダンジョン産の王冠とかこぶし大の一対のルビーとサファイアとか」

と言い出す。

 「じゃ、ちょっと街の方へ戻ってくる。東の国の商会のジョージと話しつけて帰ってくるから。……レッド、頑張れ」

アキラの言葉にレッドは情けない顔で応える。

「俺もお姫様迎えに行ってくる」

レッドは情けない顔のまま立ち上がった。



 「あ、宗介来てたんだ」

「もうすぐマルクが迎えに来る。それ待ってんの」

宗介とジョージは奥の座敷で座ってのんびりと酒を飲んでいる。

「ジョージにお願いがある。海の王子に連絡付けてほしい。……金は払うし海の王子の探し物が手に入ると思う」

「……探し物ですか。緊急ですよね?」

アキラが頷くとジョージは表に行って店を閉めてきた。

「すぐ戻ります」

ジョージはそういうと店の門を使って東の国へと向かった。



 小一時間してげんなりした顔のジョージが帰ってきた。魔力をほぼ全部使い切ったからだ。

「疲れます……」

そうつぶやくジョージにアキラはとろりとした薄い桃色の液体が入った小瓶を渡す。

「MPポーション、甘くて美味しいよ」

アキラの言葉につられてジョージはそれを一気に飲んだ。桃の香りが口中に広がる。

「……これ本当にポーションなんですか?」

「ヨアヒムが作った。うちのクラン用。市販したらちょっとお菓子代わりに飲む人が出そうなんで外には出してない」

「残念だ」

ジョージは満更冗談でも無い口調だった。

「そんな旨いん?」

宗介の問いにアキラがずばりと答える。

「俺らにはおなじみのあの赤い缶の、桃のイラストが印刷してるやつ」

「ああ、あれか。疲れてる時にカロリーは欲しいけどチョコほど濃厚なのはいらんなって時に飲んでたわ。頭使う仕事の時に珈琲飲みすぎた時とか」

宗介は納得できたようだった。


 「明日、明後日は商会長と副会長は王都の店にいるそうです。そこに来るなら話を聞く、と」

ジョージの出す条件にアキラは頷いた。

「行くよ」

「ではこの割符を。店の店長か副店長に見せてください」

「ありがとう。……ジョージはなにか欲しいものある?」

「そうですね。先ほどのポーションを何個か頂ければ。緊急時に店と向こうを何往復とか出来るので。あのポーションがあれば」

アキラは黙ってMPポーションを1ダースと『疲労回復ポーションレモネード』を1ダース渡す。

「こっちは疲労回復ポーション、ってヨアヒムは言ってる」

「それで北の蒸留酒割ると旨いで」

宗介はのんびりとそういった。
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