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海の姫の章
32
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「あら、エドガーじゃん」
アキラの危惧は当たっていた。エアリーがギルドの食堂の入口に陣取っていたのだ。
「飲みに来たの?」
エドガーがのんびりと答える。
「エドガーを誘いに来たの」
「今日はだめ」
エドガーはそっとエアリーの耳元で囁く。
「二日分のお代を稼ぎに行くんだ。今度は二日続けて君に会いに行く」
エアリーは幸せそうに笑う。
「んふふ。男に求められるのは好きよ。でも、今日、エドガーとしたいなぁ」
男の下半身を直接刺激するような声でエアリーは誘ってくる。
「すごく……そそってるけど、やっぱ金稼ぎに行くよ。そうだな、3日後に会いに行く。今度はもう少し頑張るよ。お土産期待してて」
「もう。勝手な人。私は今やりたいのにぃ」
ここは娼館か、という声でエアリーがエドガーに甘える。
「ごめんよ、エアリーに借りを作ったら会いにくくなるから」
エドガーはノリノリで心残りたっぷりな様子を見せつつギルドのカウンターに向かった。上級ポーションの納入クエストがあったのでそれを選んで受け付けてもらう。
「本当に冒険者なんだね」
依頼を受けるエドガーの横を食堂でちょっかいかけてきた男と腕を組んだエアリーが通っていった。エドガーはあれに本気になったらろくなことなさそうだな、と思った。
チャーリーは憤懣やるかたないという風情で周りを見回している。現地にいけばアキラにもわかる雑な魔法の痕があった。
「なんですか、これは。雑過ぎます。妖精眼がなくたってわかるでしょう」
「うん……魔力のゆがみを感じる」
オールはぶつぶつ言いながら特殊な植物の汁を使ってまずはチャーリーの背中に、そしてアキラの背中に。自分はマントを広げてそのマントの背中に魔法陣を書いた。都合3つの魔法陣だ。そしてその目の前の空間にまた違う植物を使ったインクで魔法陣を描く。
「よし、行ける。この魔法陣があるところから一歩だけ中に入って左に二歩動いて」
とチャーリーに指示を出す。アキラには一歩だけ左にという。そしてオールが入って来た。
「出来るだけ近くに寄って、動きながら遮音の膜張るのはなかなか面倒でね」
三人の目の前は洞窟だった。そして結構険しい山がそびえたっている。
「これごまかすなら洞窟の入り口だけ偽装すればいいのに」
アキラが呆れた顔になる。
「それが間に合わない程度に焦ったんでしょう」
オールが取りなす。が、チャーリーがばっさり。
「なんにせよ仕事が雑な奴だ」
静かに三人は気配のする方へと動く。その室の手前で皆足を止める。アキラは目のまえの映像をシルバーに送った。ら、濃紺の竜が目を開ける。その刹那オールはそこから冒険者ギルドの屋上に転移した。
「よし、追跡の魔力は来てない」
今回の転移は異空間を使った転移で禁止されている方法であった。
「異空間に入ったから追跡の魔力が追いかけてこれなかったんだ」
「……聞かなかったことにします」
チャーリーは憮然とした表情ではあった。オールとアキラは執務室に行くとゴールディがクロの仕事をしてた。
「クロは?」
「全端末休止させてる。王都のクランハウスで寝てるよ」
『多分、末姫の本体っぽい竜みつけたんだけど』
クロ以外の四人で念話を共有する。
『ええ、あれは末姫です。アキラを通して私を感知したかもしれません』
『あの一瞬で?!』
アキラの驚きにレッドの同意の波動が流れた。
アキラの危惧は当たっていた。エアリーがギルドの食堂の入口に陣取っていたのだ。
「飲みに来たの?」
エドガーがのんびりと答える。
「エドガーを誘いに来たの」
「今日はだめ」
エドガーはそっとエアリーの耳元で囁く。
「二日分のお代を稼ぎに行くんだ。今度は二日続けて君に会いに行く」
エアリーは幸せそうに笑う。
「んふふ。男に求められるのは好きよ。でも、今日、エドガーとしたいなぁ」
男の下半身を直接刺激するような声でエアリーは誘ってくる。
「すごく……そそってるけど、やっぱ金稼ぎに行くよ。そうだな、3日後に会いに行く。今度はもう少し頑張るよ。お土産期待してて」
「もう。勝手な人。私は今やりたいのにぃ」
ここは娼館か、という声でエアリーがエドガーに甘える。
「ごめんよ、エアリーに借りを作ったら会いにくくなるから」
エドガーはノリノリで心残りたっぷりな様子を見せつつギルドのカウンターに向かった。上級ポーションの納入クエストがあったのでそれを選んで受け付けてもらう。
「本当に冒険者なんだね」
依頼を受けるエドガーの横を食堂でちょっかいかけてきた男と腕を組んだエアリーが通っていった。エドガーはあれに本気になったらろくなことなさそうだな、と思った。
チャーリーは憤懣やるかたないという風情で周りを見回している。現地にいけばアキラにもわかる雑な魔法の痕があった。
「なんですか、これは。雑過ぎます。妖精眼がなくたってわかるでしょう」
「うん……魔力のゆがみを感じる」
オールはぶつぶつ言いながら特殊な植物の汁を使ってまずはチャーリーの背中に、そしてアキラの背中に。自分はマントを広げてそのマントの背中に魔法陣を書いた。都合3つの魔法陣だ。そしてその目の前の空間にまた違う植物を使ったインクで魔法陣を描く。
「よし、行ける。この魔法陣があるところから一歩だけ中に入って左に二歩動いて」
とチャーリーに指示を出す。アキラには一歩だけ左にという。そしてオールが入って来た。
「出来るだけ近くに寄って、動きながら遮音の膜張るのはなかなか面倒でね」
三人の目の前は洞窟だった。そして結構険しい山がそびえたっている。
「これごまかすなら洞窟の入り口だけ偽装すればいいのに」
アキラが呆れた顔になる。
「それが間に合わない程度に焦ったんでしょう」
オールが取りなす。が、チャーリーがばっさり。
「なんにせよ仕事が雑な奴だ」
静かに三人は気配のする方へと動く。その室の手前で皆足を止める。アキラは目のまえの映像をシルバーに送った。ら、濃紺の竜が目を開ける。その刹那オールはそこから冒険者ギルドの屋上に転移した。
「よし、追跡の魔力は来てない」
今回の転移は異空間を使った転移で禁止されている方法であった。
「異空間に入ったから追跡の魔力が追いかけてこれなかったんだ」
「……聞かなかったことにします」
チャーリーは憮然とした表情ではあった。オールとアキラは執務室に行くとゴールディがクロの仕事をしてた。
「クロは?」
「全端末休止させてる。王都のクランハウスで寝てるよ」
『多分、末姫の本体っぽい竜みつけたんだけど』
クロ以外の四人で念話を共有する。
『ええ、あれは末姫です。アキラを通して私を感知したかもしれません』
『あの一瞬で?!』
アキラの驚きにレッドの同意の波動が流れた。
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