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海の姫の章

02

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 「本気?」

シルバーが疑問を呈する。

「ああ。ちょっと抜けてて見た目良くて幼い部分があって。男の嫌な部分はないと来ると、ね」

アイリスはふぅと溜息を吐く。

「本気になって泣く子がいるし男の取り合いしそうでね」

アイリスは苦笑いした。

「今はランディは?」

アイリスが聞くのでシルバーが答える。

「新入り、私とレッドの古なじみなんですけど、新入りの子と関係を模索してる最中、って感じですかね」

シルバーはランディの状況をそう説明した。アキラも黙って頷く。

「おや、嫁取りかい?」

「どーかなー、今は距離を測ってる感じ。お相手、病み上がりだからね」

「そうなのか」

アキラの言葉にアイリスはうーん、と考えている。

「お見舞いとかしてるのかい?」

「散歩につきあったりしてましたね」

シルバーは思い出してにっこりしている。きゅーとアキラのお腹が大きな音を立てた。

「あ、そうか。もうおやつの時間だね。ちょっと待って。すぐに用意させる」

「いや、いい。アイテムボックスの中の物食べるから。借りる離れも厨房ついてるんだろ?」

アキラが立ち上がる。アイリスが先に立って離れに二人を案内する。

「うちはあんたたちんところみたいに大きな風呂はないからね」

と言いながら案内されたのはシンプルな小さめな家だった。ベッドルームが二つと小さなキッチンとダイニングの着いた家であった。

「客が来た時に泊り客相手に使う部屋だ」

「ありがたい。明日にはデヴィッドも来るって言ってた」

「知ってる。ギルドから連絡の時に聞いてる。じゃ、明日の昼前に。それまで好きに過ごしておくれ」

「ありがとう、アイリス。また明日」



 「美人が多いところですね」

「アマゾネスだからねぇ。みんな強いよ。人としては」

「竜と比べちゃだめですよ」

シルバーは編んでいた髪をほどいた。

「明日もアキラ、編んでくださいね」

「はいはい。夕飯のリクエストは?」

「シチューが欲しいですね」

「ウサギでいいな?鍋一杯にあるからね」

「牛と行きたいところですが、ま、しかたありません」

「牛のシチューは家が出来上がったら作るよ。カレーも作るから」

「カレー!あのとろみのあるスパイシーなやつですね。米にもパンにもあるやつ」

シルバーは嬉しそうだった。

「そう。ここで作るとアマゾネスの子達の食欲刺激しそうだな。家に匂いついてもいけないし」

アキラが笑う。シルバーも笑い返す。

「ま、仕事の話もありますし。それなりにしないといけませんね」

「そうだよなぁ。俺が女の端末持ってたらよかったけど」

アキラはテーブルに総菜パンを沢山並べる。

「まだアキラは複数端末持つには早いですよ。私も一度に複数の端末動かすと精度が下がりますからね」

アキラはアイテムボックスを探りながらシルバーに聞く。

「シナモンロールも食べる?」

「紅茶と合いそうですね」

「パンだし紅茶かな。コーヒーは?」

「気分じゃないです」

シルバーは相変わらずマイペースである。アキラはたっぷり水が入ったヤカンをコンロにかけてお茶の用意をはじめた。





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