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金と銀の玉の章

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 「じゃ、レッドはゴールディ抱えてね。こっからは平地だから半日も走れば着くから」

「レッドありがとう」

ゴールディは今は20代半ば位の容姿になっている。体型的にはニーアが一番近い感じだ。ニーアよりも肉感的ではある。

「おう。とりあえずは栄養を遠慮なく取れる環境、ってことだな?アキラ」

「そう。あとはクロと面会できるしね、あそこだと」

「結局ギルド本部と門つなげっぱなしだもんな」

「それ利用して色んなとこ行ってる人が何を言う」

レッドにアキラが突っ込むとレッドは笑っている。

「ま、近いうち狩りにいって肉とかとってくる」

「俺もちょっとコアに会いに行こう。今はあのダンジョン中級者までしか入れないけどさ、最奥をどうするかとかちょっと打ち合わせる」

ゴールディが口を開く。

「アキラはあのダンジョンの面倒も見る気?」

「うん、繋がっちゃったからね」

と気楽にアキラは答える。今、コアのダンジョンは初級者から中級者に開放している。それを決めたのだギルドでギルドから上級者パーティが派遣され一度今で来ている階層を踏破させてレベルを決めた。<<王国の盾>>というヒューマンのみで構成させた王都所属のS級クランの中のA級パーティが調査したそうだ。モンスターの血を塗った杭と聖女の杭を組み合わせた結界を張った道は危険もないので毎日街とダンジョンを繋ぐ定期便も出てるらしい。そして初級者やいちおう冒険者の登録をしている人間などもダンジョンの2階で肉や卵を採取しギルドに売る事で生活が潤ってきているらしい。

 比較的食料の出やすい低層で初級者は食料を手にしながら腰を据えてレベルを上げる。そしてギルドは肉以外の食料を初級者の集まる2層目の入口で売っている。また2層目の入口のフロアは凹型になっているので左右で女性と男性に別れて眠るパーティが多くなっていた。初心者なのでその場で組むこともあったし親しい人間になる前の関係のパーティも多かったのだ。

  ダンジョン絡みでギルドの宿舎もかなりにぎわっているようだ。庭の端から見える宿舎 はかなり人がいるように見える。ギルドの職員たちも派遣されてきている。拠点の入口 はクランの関係者以外にはわかりにくくするようにオールによって偽装の魔法がかけられている。関係のない人間にはなんとなくギルド関係の建物だろうという認識になって いる、と。理由はわかっている。こちらの敷地から石窯を使っている職人にチャーリー が声をかけたからだ。これはデヴィッドの作戦でもあった。職員や冒険者はギルド本部 のえらいさんがいるような場所に入り込もうとすることは少ないからだ。こういう辺境 に好んでくる職員の中には街でトラブルを抱えているものも多いからだ。ある程度以上 の本部のギルド職員は警察権を持っている人間も含まれているのでトラブル持ちには剣呑な存在でもあった。


 「ここがクラン竜の探索者の拠点だよ。まだここと街の二つしかないけどさ」

とアキラが言う。あらかじめ皆にはアキラが同族を連れてくる、と言ってあった。あからさまにランディは挙動不審で玄関の前でうろうろしている。

「ただいま、ランディ」

「お、おかえりなさい」

ランディの目はゴールディに釘付けだった。

「お察しの通り、金の竜の端末でゴールディっていう」

「あ、あなたね。貴方の髪のおかげで少し楽になりました。ありがとう」

ゴールディの言葉にランディはどぎまぎしている。後にアキラが聞いたところによると『司祭でもない自分が金の竜様からお言葉を頂くなんて……、ってなってた』とランディは教えてくれた。

 居間に入るとヨアヒムとエドガーはせっせと飲みやすい味のポーションを作り、宗介とマルクとニーアは台所で料理を作り、その他のメンバーは石窯でせっせとパンやピッツアを焼いている。

「食料が尽きてるって事だったからアイテムボックス用に沢山作っておこかって思ってな」

宗介はにかりと笑っている。

「それと、そこの金髪の子が病み上がりなんやろ。前の時のレッドやシルバーの感じやと沢山食べてどんどん寝て。そうやって過ごすのが一番速そうやしな」

宗介の言葉に皆頷いた。

「いらっしゃい。ゆっくりすごしてね。ここには大きなお風呂もあるし、気持ちよく過ごせると思います」

ニーアがにっこりと笑いながらゴールディに声をかけた。



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